久留米大学附設中学校・高等学校(福岡県・町田健校長)は、国内屈指の進学校だ。数学オリンピック等国際大会でのメダリストも多く輩出。テストの種類や回数も多いためデジタル採点システムを導入し、業務時間の削減を図ることとした。同校のICT推進ワーキンググループの大藪良一主任に、導入の経緯と導入後の成果を聞いた。
本校では中学・高校ともに年5回の「定期テスト」、各学期の始めに「課題テスト」を行っており、教科によっては小テストもあります。テストの種類と回数が大変多いことから、採点業務には多くの時間を費やしていました。
例えば高校は1学年約200人で、私が担当している英語では週2回の小テストを行っています。のべ400人の採点には、週約10時間が必要で、これを効率化するために採点システムを導入できないかと考えていました。
最初に検討したシステムは、効果と初期投資費用、ランニングコストが見合うとは思えませんでした。
「デジらく採点2普通紙対応版」(スキャネット(株))は、福岡で開催されたセミナー(編集部注・弊社教育委員会対象セミナー・2020年2月実施)の企業展示で知りました。説明を聞き、これは良いのでは、と直感し、セミナーに一緒に参加した教員と2人で専用シートを購入し、すぐに活用してみました。当初、専用シートの厚みに扱いにくさを感じたものの、採点システムとしての精度が高く、それまで週に約10時間かかっていた採点業務が6~7時間ですむようになりました。
次第に「デジらく採点2」を使う教員が周囲に増え始め、学校として本格的に導入した方が低コストで運用できる、ということになり、「デジらく採点2普通紙対応版」の導入が決まりました。個人でも専用シートの購入のみですぐに運用を試すことができた点が、迅速な導入につながりました。
デジタル採点システムを約2年間活用してきて感じることは、テストの採点時間を確実に減らすことができる、という点です。
今ではシステムなしでの採点業務は考えられません。
本校のテストは科目により240点満点や250点満点になることがあり、その点数を素点として80点に圧縮して計算、そこに平常点を足して合計点を記入する必要があります。
採点システムの導入により、素点の自動データ化が当たり前になり、圧縮点や合計点を簡単に計算できるようになりました。
採点の精度も確実に向上しました。
これまでは大量に採点するため集中力が途切れることもあり、採点ミスや計算ミスを完全に防ぐことはできませんでした。デジタル採点では合計点の計算ミスがありません。また、設問ごとに一気に採点しますので、採点ミスが生じにくく、かつ見直しも設問ごとにできます。
採点にブレが生じにくい点もメリットです。
長文の英作文では、付せん機能で部分点や減点などをメモ書きしておき、付せんがついた解答だけを並べてブレが生じていないかを確認しています。
本校では2022年、全生徒にiPadを配布し、オンライン学習支援のためにGoogleClassroomを導入しています。
「デジらく採点」はGoogleClassroomと連携しているので、デジタル採点した答案はすぐにGoogleClassroom上にアップしています。生徒はそれを見てオンライン上で質問をしてきますので、授業時間外でも対応できます。答案はPDF化されているため改ざんができません。
答案データの蓄積もできます。設問ごとに正解率を確認してどの問題ができていないのかを明らかにして授業でフォローし、小テストで重点的に出題する等の対策を迅速に行うことができます。
本校でもICTに苦手意識をもつ教員がおり、すべての教員がデジタル採点を使っているわけではありません。現在の目標は、使用する教員を8~9割に増やすこと。簡単で業務負担が減る点を継続してアピールし、本校の校務ICT化を進め、よりクリエイティブな指導の充実のための時間を確保できるようにし、詳細なデータ分析により、授業改善やきめ細かいフォローにつなげたいと考えています。また、近い将来、入試でもデジタル採点の仕組みを活用したいと考えています。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2022年9月5日号掲載