文部科学省は8月26日、GIGAスクール構想の下での校務の情報化の在り方に関する専門家会議(第6回)(堀田龍也座長・東北大学大学院)を開催。論点整理(中間まとめ)(案)を検討した。本会議では「学校の働き方改革」「校務系システムと他システムのデータ連携」について検討。汎用クラウドツールの校務活用を推奨しつつ既存の校務支援システムの機能を整理・発展。「校務DX」を目指す。
統合型校務支援システムは校務の効率化に大きく寄与してきた。現状、セキュリティの観点から、自前のサーバに設置して閉域網で稼働しており、校務用端末は固定設置であることが多い。また、教育情報セキュリティポリシーガイドラインが2021年5月に改訂され、ネットワーク分離を必要としないアクセス制御による対策が推奨されたことで、よりわかりにくくなっている。これらを整理してGIGAスクール時代の教育DXや働き方改革の流れに合わせた仕組みとする考えだ。
具体的には、校務支援システムのフルクラウド化を進め、教員用端末の1台化を進めて学習にも校務にも活用。フルクラウド化を進めることで、従来のオンプレミス型導入による初期コスト増の課題を解決する。
これまで統合型校務支援システムの機能の1つとして配備されてきたグループウェア機能は、汎用的クラウドツールを積極的に活用することでさらにコスト減を目指す。
働き方改革や情報漏えい対策の観点からも、自宅や出張先でも校務処理を可能とし、USBメモリ等によるデータ持ち出しをしない仕組みとする。
都道府県内の市町村教育委員会ではそれぞれ異なる校務支援システムを導入していることが多い。そのため広域人事の際の負担が大きい面も解決を図る。具体的には、校務支援システム自体の共同調達の推進等。校務に関する帳票類は、その原本の電子化を前提としたデータの標準化も思い切って進める。
■データ連携を進める
学習系と校務系ネットワークが分離されている場合、円滑なデータのやり取り・活用が困難であることから、リアルタイムでのデータ連携を可能とする方法を模索。具体的にはゼロトラストの考えに基づき、アクセス制御による対策により教員の業務用端末の一台化を促す。
校務系・学習系システムに蓄積される様々なデータや、首長部局が有するデータ(福祉に関するデータなど)を相互に連携、様々な視点から分析・可視化できるようにし、学校経営等に寄与するようにする。
大規模災害が発生した際の業務の継続性確保のため、適切に考慮されたクラウド上で校務支援システムを始めとするICT基盤を構築。ゼロトラストにより安全を確保して回線を利用できるようにする。
校務系・学習系ネットワークの統合や、校務支援システムのクラウド化を達成した上で、種々のデータ連携を進め、指導や支援の充実に取り組むことを期待。学校数や学校規模、ネットワークの状況、財政事情なども踏まえた参照可能なモデルケースを検討する。
「校務DXガイドライン」(仮称)では通知表を含む帳票類等の標準化、汎用クラウドツールで実施可能な業務、教員や事務職員、ICT支援員、教育委員会等の役割分担を整理して策定。アジャイル方式でアップデートしていく。既存の校務支援システム事業者に対してはモデルチェンジの働きかけを行う。これらに伴い、機密性の度合いに応じた望ましいセキュリティ確保等「教育 情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」もアップデートしていく。実態調査も予定。過剰な制限やブロック等の実態を把握する。
委員からは「教育委員会からの文書が多く、記入方法もわかりにくく非効率的。マニュアルが数十ページに及ぶものもある。現場の意見や気付きが届きやすい仕組みになればアップデートしやすくなるのではないか」「テレワーク時間の把握が課題」「汎用的クラウドツールを活用しにくい自治体がある点が課題。体験するだけで多くのことがわかる」「国が作成している指導要録の参考様式から教員の押印枠を外すだけでデータ化しやすくなる」等の意見が出た。堀田座長は「国のかじ取りが設置者に届くまでに時間がかかることも織り込んで進める」と述べた。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2022年9月5日号掲載
