7月2日、北米教育eスポーツ連盟日本本部(NASEF JAPAN/ナセフジャパン・松原昭博会長)は、未来を創る「STEAM教育×eスポーツの可能性」をテーマに第3回eスポーツ国際教育サミットをオンライン及びドルトン東京学園(東京都)を会場として開催した。当日の様子はアーカイブ動画で視聴できる(https://nasef.jp/sympo2207/)。
NASEF JAPANの松原会長は基調講演で「米国本部ではeスポーツとSTEAM教育をかけ合わせた新たな次世代教育を推進している。日本国内でもSTEAM教育的観点を取り入れながらeスポーツ教育を入り口としてIoT・AI人材の育成を促進したい。eスポーツはSTEAMの学びが結実したものであり、多方面の成長に役立つ」と話した。
NASEF JAPANの加盟校は現在328校。世界コンテスト参加の支援、eスポーツ大会前後のトレーニング&教育プログラム、高校生のアイデアコンテスト等を行っている。
近日中にeスポーツ部活動運営マニュアルも公表予定。eスポーツ部の運営や機材設定、生徒指導方針等を網羅する予定だ。
さらに8月にはNPO法人として活動を広げる予定。NPO法人化することで人材育成、研究開発、コミュニティ作りを強化する考えだ。
高橋義雄准教授はNASEF JAPANとの共同調査「日本の高等学校におけるeスポーツ活動の実態と課題」について報告。
NASEF JAPAN加盟校を対象に、回答を得た103校の結果を分析。グループインタビューも行った。
調査によるとeスポーツ関連の部活動は週3回、1~2時間程度実施。大会には9割弱が参加している。企業連携している部活動は約3割。顧問教員のeスポーツ経験は約4割。部活動や同好会としてeスポーツを導入する高等学校が全国で増加している。
クロス集計によると「土曜日も部活動を行っている/部活動指導方針がある/10万円以上の部費がある」学校の大会実績レベルが高かった。
高橋氏は「公式大会の参加が意識向上のきっかけになっている。eスポーツ活動の教育効果を検証していきたい」と話した。
本年開催された第2回 eスポーツ・クリエイティブ・チャレンジ「高校生が創り出す『eスポーツ×SDGs』のカタチ」の最優秀賞受賞校である水戸啓明高等学校がプレゼンテーションを行った。
本チャレンジは北米で開催されている高校生のキャリア選択や思考力、技能を向上させる「Beyond the Game Challenge」をローカライズした日本独自のコンテスト。SDGsの17ゴールからテーマを選択し、eスポーツを活用してその目的を達成させるアイデアを募集するもので、5つの項目(着眼点、分析力、解決力、独創性、実現性)で評価された。参加対象校はNASEF JAPANメンバーシップ校。
水戸啓明高等学校では給食の食べ残しをきっかけに給食センターを訪問し、食品ロスについて調査。食品ロスの解消がSDGsにつながると考えた。「農業体験により作り手の大変さを体験したことが作品作りのきっかけになった。茨城県全体に食品ロスについて伝えていきたい」と報告。
NASEF Farmcraft(TM)2022は、世界中の高校生がゲーム空間Minecraftの中で最高の農地を作ることを目指し、環境変化を始めとした様々なトラブル(資金、水、土壌、害虫問題、雑草対策ほか)の解決法を2~4名がチームになって考え、スコアを競い合うものだ。チームメンバーは8~18歳。動画アプリで配信される課題を5回終了するとスコアが出る。
今年度の大会では日本の高校として初めて4校7チームが参加。また、初出場の立修館高等専修学校(経営情報科1年・2名)(学校法人下関学院、山口県)が入賞した。日本の農業の理想や身近な問題から世界の問題を発見・発信したことが評価された。
英語と情報を担当している。本校では英語を使ってデジタルスキルを学んでいる。本校では本年6月、STEAM教育を実践するクリエイティブな学習空間として、STEAM校舎が完成した。eスポーツによりどんな力を身に付けることができるのか。ゲーム会社とも連携していきたい。今後、eスポーツ部も作りたいと考えている。
eスポーツは、ゲームとは異なる。複数人のコミュニケーション、コラボレーション、チームワークが結果を左右する。海外では、メディアラボと呼ばれる最先端テクノロジーを体験できる場が学校に設置されている。社会で活用されている環境を使った学びが重要ではないかと考えており、ハイエンドPC等を設置した、STEAM Labの学校設置を推奨するため、2022年4月から全国18校(※)で実証研究を開始している。eスポーツで使用するものと同等のものを設置することでデジタル関連活動の活性化にもつながる。
※久喜市立砂原小学校、久喜市立久喜中学校、鎌倉市立手広中学校、兵庫教育大学附属小学校、兵庫教育大学附属中学校、北海道教育大学附属函館中学校、千里国際中等部・高等部、学校法人樟蔭学園 樟蔭中学校・樟蔭高等学校、茨城県立竜ヶ崎第一高等学校・附属中学校、愛知県立愛知総合工科高等学校、神奈川県立横須賀工業高等学校、神奈川県立横須賀高等学校、国立大学法人 兵庫教育大学
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2022年8月1日号掲載