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教育ICT

都立園芸高校、IoTツールで課題解決学習 スマート農業けん引する人材育成へ

2022年8月4日

東京都立園芸高校(並川直人校長)は都からTOKYOデジタルリーディングハイスクール事業(先端技術推進校・センシング機器等を活用する学校)に指定されている。本事業は、センサー機器等の先端技術を活用した作物等の栽培や動物の飼育を行うことで、これからの農業を支える人材を育成する取組である。

 

同校では2020年より先端技術活用実証研究指定校の指定を2年間受けており、その成果を基に2022年より2年間、TOKYOデジタルリーディングハイスクール事業(先端技術推進校・センシング機器等を活用する学校)の指定を受けた。

園芸科・食品科では、センシング機器を用いて気象データ等をクラウド上で集積。栽培管理や収穫予想等に活用している。

また、新科目「農業と情報」において、センシング機器により得られたデータを栽培管理に利用。科目「課題研究」でも利用する。

動物科では飼育動物の生態をIoT機器で測定。動物福祉(アニマルウエルフェア)の改善を図る。科目「課題研究」でも利用する。

課題解決学習に学校全体で取り組む

活動量計で学校犬と家庭犬の活動量を計測し、仮説を検証した

高等学校で今年度より必修化されている探究的な活動が既に根付いているのが同校の特色だ。1年次に情報及びICT等の基本を学び、2年次に個人研究を通して個人の興味関心に沿った課題を見つけ、3年次に個人またはグループで探究活動に取り組んでいる。

教員の役割はコーディネーターとサポートが中心で多くの教員が関与している。一斉授業の割合は少なく、個別最適な学びを中心に取り組んでいる。

動物科3年「課題研究」でIoT機器を活用したグループは、「プラスサイクルを用いた学校犬と家庭犬の比較・改善」をテーマとした。プラスサイクルとは、犬猫の首に装着して、加速度センサーにより活動強度を数値化し、安静・睡眠等の各状態にいる時間を計測できる犬猫用活動量計で、日本動物高度医療センターが開発したもの。生徒はこの機器により「学校犬と家庭犬の睡眠時間の違い」を計測して活動量や睡眠を比較すると、夜の活動量が多い学校犬がいること、夜の睡眠時間は家庭犬の方が長いことがわかった。生徒は、学校犬の夜間の睡眠の質が良くないため、昼の睡眠時間が増加していると仮説をたて、睡眠の質を向上させる環境改善の工夫の取組について中間報告した。

指導の橋本夏奈主任教諭は、「生徒は昨年度、活動量計やビデオカメラにより、学校犬の夜の睡眠時間の短さと行動の多さに気付き、研究課題として設定した。活動量計により実際のデータを使って調査し、考察する研究になり、ベッドを改善することで夜の睡眠時間の増加に結び付いた」と語る。

園芸科では、各種圃場や温室に農業用気象センサーやカメラを設置。カメラの設置により予想外の動物が畑を荒らしていることがわかった。

今後はスマートグラスによる遠隔農業体験や農業用ドローンの体験も予定している。

指導の池上勇主任教諭は「農業=3Kというイメージを払拭したい。データは生徒に考える材料を提供するもの。データから仮設や課題を考えることができる」と語る。

屋外での活動が多い園芸科では、企業と協働し、実証研究として熱中症対策でリストバンド形式の身体データ測定器も装着。生徒は、アラートが鳴ると日陰や室内等で休むようにしている。

圃場に温度・湿度・地中の温度を計測できる農業専用温度センサーを設置

圃場に温度・湿度・地中の温度を計測できる農業専用温度センサーを設置

AI・データ活用で学びの質が変わる

並川校長は「STEAM教育は農業教育と親和性が高い。AIやビッグデータの活用は学びの質に変化をもたらす。その実現に向けて2019年に東京都教育庁にスマート・アグリ・ハイスクール構想をプレゼンしたことが、今日の支援を得るきっかけになった。課題解決学習に取り組むツールとしてIoT機器やセンシングは極めて有効。今後も積極的にセンシング機器を使った農業教育の方向性を検証し、都市型スマート農業をけん引できる課題発見・解決能力を育んでいきたい」と話した。

都立高校改革へ 東京都教育庁

都立高校改革を推進している東京都。ICT関連では、2022年度TOKYOデジタルリーディングハイスクール事業や情報科目の充実を図るためのモデル校を指定して進めている。

学習データ、AI・先端技術活用、情報科目の充実など

TOKYOデジタルリーディングハイスクール事業(TOKYO教育DX推進校)19

【全校】▼統合型校務支援システム、定期考査採点・分析システム、統合型学習支援サービス等のログデータを活用したエビデンスベースの指導に関する実践的な研究 ▼学習ログデータを活用し「主体的・対話的で深い学び」の実現と全ての子供たちの可能性を引き出す指導法について研究 ▼非認知情報に関するアンケート、校務データ、学習データを活用した分析への協力【AI教材を活用する学校】小台橋高等学校、八潮高等学校、八丈高等学校、小笠原高等学校、光丘高等学校、練馬工業高等学校、秋留台高等学校=AI教材を活用。学習ログによるエビデンスから義務教育段階でのつまずきや日常の授業での生徒個々の学習状況及び理解度を効率的・効果的に把握。個別最適化された学びを実現【デジタル教科書を活用する学校】浅草高等学校、三田高等学校、三宅高等学校、三鷹中等教育学校、日野高等学校、翔陽高等学校、南多摩中等教育学校=デジタル教科書の利活用に関する研究

TOKYOデジタルリーディングハイスクール事業(先端技術推進校・VR等を活用する学校)

小台橋高等学校・墨田工業高等学校=アバターを介したコミュニケーション活動や自動車工業、建築等の学習におけるシミュレーション活動等、VRゴーグルを活用した新たな指導方法や学習方法について研究。VR等先端技術を活用した授業実践を蓄積。

TOKYOデジタルリーディングハイスクール事業(先端技術推進校・センシング機器等を活用する学校)

園芸高等学校=先端技術(センシング機器)等を活用した個別最適な学びと協働的な学びを実現するとともに、データ等の蓄積・分析・指導等への活用における実証研究について実践的な研究を行う。

2022年度 情報科目の充実を図るための教員支援モデル校

【民間補助教材の活用】54

情報Ⅰに準拠した補助教材またはプログラミング教材を検証。その結果を全都立学校に普及。

【情報Ⅰ学習支援アプリの活用】20

Webデザイン、動画編集、画像編集等を行うアプリについて、情報の授業の中で使いやすさ等を検証し、その結果を全都立学校に普及。

【専門家の派遣】13

プログラミング、モデル化とシミュレーション及びデータ活用について、専門家を主担当としたティームティーチングによる授業を実施。その様子を動画にして全都立学校内で共有。教育効果について検証。

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2022年8月1日号掲載

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