高等学校を中心に活用が広がっているオールインワンのICT学習アプリ「ClassPad.net」が、探究的な学びや個別最適な学び・協働的な学びの充実に役立つ機能をバージョンアップした。新機能をどう新たな学びに活かすことができるのか。中川一史教授(放送大学)に聞いた。
1人1台端末という国の施策は、端末配備にとどまりません。学びの在り方、学校の意義、授業の在り方を見直すきっかけとなるものです。国で目指している「学習の個性化」の主語は「子供」です。本人が学びを調整する力が求められているのです。
そのためにはどうすれば良いのか。
誤解を恐れずにいえば、教員はもっと不親切になるべきではないか、と考えています。
これまで教員は良かれと思って手取り足取り教え、教材も怠りなく準備してきました。その結果、子供が待つ姿勢になり、考えることを止めてしまったという面があるのではないでしょうか。
今後は、子供自身が学びを拡張できるように、探究しやすい場と素材、機会を提供することが教員や設置者に求められます。
1人ひとりが自らの学びを切り拓き、自らの知識の世界を広げていく面白さを体験する場として提供されているものが、オールインワンのICT学習アプリ「ClassPad.net」です。
新しくなった検索システムでは、例えば「アインシュタイン」を調べると、物理事典、化学事典、世界史用語集等による説明を一度に参照できます。物理事典では物理学上の功績が、世界史事典では社会活動家としての一面が、百科事典では総合的な情報が掲載されていますので、1人の人物を多面的に調べることができ、学びが一気に広がります(高校6教科対応22コンテンツを搭載可能)。
これは、協働的な学びの質の向上にもつながります。
協働的な学びは、複数人集まれば自然に起こるわけではありません。疑問を持って調べ、考えている複数人が集まるからこそ、協働的な学びにより質が上がるのです。
ClassPad.netで特筆すべき点は、デジタルとアナログの融合です。手書きメモや資料の切り貼り、辞書・事典で調べたことの抜粋等、これまで紙のノートでまとめていたほぼすべてがデジタル上で実現でき、ノート交換や提出も可能になりました。さらに、板書の撮影画像や動画、音声もノート上に掲載できます。デジタルのメリットです。音声による記録が可能になったことで、書いてまとめることが苦手な子供であっても、学びを広げやすくなりました。
様々なまとめ方が可能になり、自宅で復習する子供が増えた学校があると聞いています。教員も、「音声を張り付けて〇回聞く、その発音を録音して提出する」という課題を出題しているそうです。
教員は生徒のデジタルノートを回収したり、生徒同士でノートを交換したりできます。生徒がどうまとめたのか、それを教員がどう見取るのか、これから実践研究していきたいと考えています。
数学ツール(※)がデジタルノート上で扱えることもClassPad.netの特徴です。探究的な学習では生データを収集してグラフ化する機会が増えます。統計グラフを気軽にどの教科でも扱える環境は自学を促し、使い慣れるにしたがって数値を使いこなす表現力が身に付いていきます(※多角形やグラフ描画が可能。関数ツールは中学校・高等学校で扱うすべての関数を網羅)。
自学を促すうえで音声教材は重要です。
辞書で単語を調べた際は、ネイティブ音声を聞くことができ、豊富な図表をクリックすると関連単語が学ぶこともできます。
CNN Worksheetでは、実際の放送音声を再生。音声レベルを変更して聞くことができます。様々なリンクで学びを広げることは、本来の学びの楽しさを味わうきっかけになります。
学びに向かう力は簡単に形成されるものではありません。助走の場として、学びを拡張する場が重要です。
ClassPad.netは3台まで端末を接続できます。この機能も生徒はうまく活用できるのではないでしょうか。家庭の端末や通学途中のスマートフォンからのアクセス等、学びを切れ目なくつなげることはもちろんですが、スマートフォンと端末に同時にアクセスして学びを進める生徒も出てきそうです。まずは学びが新たな学びにリンクし、新たな疑問を生み、思考の活性化を促す仕組みを子供に与え、どう使っていくのか、発展していくのかを見取ることから始めてはいかがでしょうか。
新たなリニューアルに伴い、期間限定でClassPad.netの基本機能(デジタルノート機能・数学ツール・授業支援機能)を無償で来年3月末まで活用できる。現在申込受付中。詳細はQRコードから。
カシオ計算機は8月末~9月にかけて「高校教諭のためのICT活用術セミナー」をオンラインで実施。本セミナーでは、学びに向かう力を育むための実践と「ClassPad.net」の活用事例を高等学校教諭が紹介する。各回16時~17時10分。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2022年8月1日号掲載