第6回EDIX(教育総合展)関西が6月14~16日にインテックス大阪で開催され、3日間で6000人以上の教育関係者が来場した。GIGAスクール活用3自治体パネル討議は、大分市教育委員会・福岡市教育委員会・神戸市教育委員会が登壇してGIGAスクール構想の成果と課題の乗り越え方について報告。モデレータの東原義訓氏(信州大学名誉教授)は「想像以上にうまくいっていると感じている。この時代の学校にいて良かったと思えるような時代としたい。新しい取組については丁寧に何度も伝えていくことが大切」と話した。
福岡市教育委員会(小学校144校・中学校70校。高等学校4校・特別支援学校8校)では約12万台の学習者用端末(Chromebook等)を2020年11月までに配備した。効果は3つあった。
まず、オンライン授業が定着した。土曜授業の一部にオンライン授業を導入するなどで定着を図っており、2月2日は、約4万2千人がオンラインで授業を受けた。
次に、学びの質が向上した。
21年7月と12月に小中学校で実施した活用アンケート(回答数約4500件)を比較すると、「意見交換を行い、考えをまとめる力がついた」「調べることをまとめ、表現する力がついた」と考えている児童生徒が増えている。
端末の持ち帰りは、12月時点で、中学校の70%が週4回以上、小学校4~6年生は66%が週2~3回以上行っている。モバイルルータは約6900世帯に貸し出しており通信費も公費で負担している。アンケート結果は、学校ごとのシートを作成して返却し、共有している。
教育活動も広がっている。
福岡いじめゼロサミット2021では、小学校5年~中学校3年がYouTubeLiveを使って教室から参加。いじめについて考えた。また、Googleフォームを使って約7万人一斉に意識調査を行った。
カメラや大型スクリーン、プロジェクター、スピーカー等を配備していつでもすぐにオンライン授業ができる部屋「ジョイントクラス」を配備。
児童生徒数が減少している離島において、グループ学習ができない、専門教員がいない等の課題を解決するために行っているもので、離れた学校の教室をGooglemeetでつないだ。21年度は北崎中学校(51名)、玄界中学校(2名)、小呂中学校(3名)で行った。
課題もいくつかあった。
整備当初はネットワーク環境の課題があった。多数の業者が関わっており原因が特定できないため、学校の全面協力のもと、全生徒が参加して接続テストを複数回実施。各ポイントに計測機器を設置して段階的にボトルネックを検証・課題を解消した。主な原因はルータの性能不足、インターネット回線の容量不足、不要なトラフィックの発生などであった。
そこで、高性能ルータに変更。インターネット回線は300人あたり1Gベストエフォート1回線に増強。児童生徒1000人規模の場合は4回線とした。ルータ設定もチューニング。負荷分散装置を設置した。
これらの措置により3回目のテストで一斉接続に成功。このときは学校中から歓声が上がった。
21年6月までに全校展開し、1000人規模の学校でも全員同時にYouTube視聴ができるようになった。
端末持ち帰りは積極的に行っているが、保護者からは夜間利用を制限してほしいという要望があった。Googleの管理コンソール機能だけでは解決できないことから、GoogleAppsScriptを組み合わせ、端末の夜間制限(23時~5時)を設定した。制限しすぎず、徐々に社会と同様の環境に近づけていきたいと考えている。
活用が遅れ気味の学校には、指導主事が学校長とコミュニケーションをとり解決を図っている。
神戸市教育委員会(小学校163校・中学校84校・義務教育学校1校)では学習者用端末(WindowsPC)を全小中学校に10万台以上配備し、クラウドはMicrosoft AzureとSKYMENUCloudを活用。持ち帰り活用を基本としている。
当初は「端末を開けましょう、閉めましょう」「このキーワードで検索しましょう」「このサイトを見ましょう」という授業が多く「数週間ぶりに一斉にログインして更新が始まり端末を活用できない」ということもあった。
1年を経、現在は、始業前や休み時間に各自でログインし、児童生徒の選択肢が増え、自分のタイミングで活用する授業や学校が増えつつあると感じている。教員も「子供を信じて委ねることを大事にしたい。本質を大切にして授業をしたい」「難しく考えすぎず、新しい手段が増えたと考えて挑戦したい」と考えている。ある中学校では生徒会の生徒が「自分たちでルールを決めたい」と作成していた。
GIGA通信の配信やMicrosoft Teams上で様々なチャンネルを設定して指導案や事例などの情報共有を進めている。中でも「お悩み相談ルーム」はいつも活発なやりとりがあり、教員の協働・共創につながっていると感じる。
大分市教育委員会(小学校54校・中学校28校・義務教育学校1校)では教育ビジョンの基本理念を「豊かな心とたくましく生きる力を育む」としている。ICT活用も同様であると考えている。
学校規模により5~10Gbpsのネットワークを配備してローカルブレイクアウト構成としている。
現状、小学校1・2年はWindowsPC、小学校3年生以上がiPadを活用している。Microsoft365もロイロノートスクールもGoogle Workspaceも使いたい。しかし児童生徒が複数アカウントを管理することは難しいと考え、MicrosoftアカウントにAppleやMEXCBT、アドビ等のIDを連携してシングルサインオンできるようにし、市内在籍期間は同一アカウントで運用している。
研修は希望者対象。ベテランの参加率が高く、授業ビジョンが広がったと好評だ。研修に参加できなかった教員に向けて、ICT活用支援サイトやICT活用レターで情報を共有している。
ICT支援員の果たす役割は大きく、学校ニーズを支援員から聞き取り、それに対応した内容のICT支援員向け研修会を月1回の定例会で実施するという流れで進めている。
校務支援システムに教育用端末情報を登録してアカウントを管理している。年度更新も、苦労はしたが自分たちで行うことができた。
方針を1月に周知。手順書を2月に通知し、中学校3年、小学校6年は卒業までに初期化を完了。始業式から学習者用端末を活用できるようにした。職員会議はWeb会議システム(Zoom)で開催する学校もあり、操作の習熟のため、ホストを持ち回りにしていた。
月に1度は校内でミニ研修を開催し、すぐに授業で実践。苦手な教員も自信を深めている。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2022年7月4日号掲載