11の附属学校園(小学校3校、中学校3校、高等学校1校3校舎、特別支援学校1校、幼稚園1園)を設置している大阪教育大学は、附属学校統括機構を設け、ICT環境についても検討。児童生徒用端末としてChromebookを全学に配備し、ネットワーク環境もSINET利用やWi―Fi6対応の無線AP(アクセスポイント)配備などで強化。提示環境も更新した。さらにいくつかの学校において、各教室にマルチOS対応のワイヤレス画面転送装置の配備が進んでいる。配備の理由と教育効果について、同学附属池田小学校の荒川真一副校長に聞いた。
これまで授業用PCをケーブルで接続してテレビ等に提示していましたが、利便性を考えるとワイヤレス環境が理想であると考えていました。
本校は学習者用端末としてChromebookを活用しています。それ以前はiPadを80台ほど導入しており、教科により今も活用しています。また、教員はWindowsOSのノートPCを授業と校務で使っています。学習環境としてOSが混在している状態でであっても汎用性が高い製品を探していました。
ワイヤレス画面転送装置「TrinityVision®」がマルチOS対応であること、ネットワークの設定もできることを知り、全普通教室に導入しました。
マルチOS対応なので、ChromebookやiPad、スマートフォンなど様々な端末の活用が可能になりました。教員PCと提示画面をケーブル接続するという物理的な手間がなくなり、授業をスムーズに始めることができるようになり、現在は皆が教室に気軽にノートPCを持って授業を進めています。一度設定すれば、教室が変わっても同じ手順でつながるため、「つながらない」「調子が悪い」と情報担当教員が呼ばれる回数も激減しています。
ケーブル接続は確実につながる反面、抜き差しが多くなり、故障や接触不良等、不具合の可能性も大きくなります。ケーブルにつまずくという危険もあります。
また、若手教員はワイヤレス環境に慣れており、ケーブルの抜き差しや管理にストレスを感じていたようです。大型提示装置もスピーカー一体型のテレビを導入したため、ワイヤレス化と共に提示環境周りがさらにすっきりしました。
これからの授業は「児童生徒主体」であることが一層求められます。これまで、児童用端末は、授業支援ツール等により教員が選択して提示するものでしたが、本仕組みでは、児童が自分の画面を前に提示でき、書き込みながら説明することができます。
自分の考えを伝えるのに言葉だけでは伝えにくいと躊躇していた児童も、自分の画面を提示することで全体の前で話す機会を増やすことにつながっています。端末は既に児童のノートになっており、休み時間も学習に関係ある内容であれば自由に活用しています。学校でしかできない体験を大事にしながら今後も効果的な活用を進めていきたいと考えています。
6年生社会科では「縄文時代」「弥生時代」「古墳時代」それぞれの魅力について、児童は自分が選んだ時代とその理由をまとめたスライドを自席から大型提示装置に提示し、皆に説明していた。
調べたことをテキストでまとめている児童、スライドにしている児童など、各自で作成した資料は様々だ。「土偶は宇宙人に似ているので縄文時代に興味がある」「謎の多い邪馬台国に探究心を刺激されて調べたいと思った」等の発表を教員は思考ツール(Yチャート)にまとめていった。
4年生社会科では「ダムの働きについて調べよう」の単元で、「旭川の上流の1年間の雨量」「岡山市の1年間の雨量」のグラフを児童の端末に一斉送信。児童は2つのグラフを見て気付いたことを端末上のワークシートに書き込み、その画面を自ら大型提示装置に転送して説明した。
授業者の大貫翔貴教諭は「TrinityVision®はChromeブラウザを使うと教員、児童のどの端末でも同じ操作で提示できる。画面を4分割提示できる機能もあり、友達の発見と比較して全体で考えるときに便利」と話した。
専用アプリなしでiOS、MacOS、WindowsOS、AndroidOS、ChromeOSの画面提示ができるワイヤレス画面転送装置。画面転送の方法は複数あるが、大阪教育大学附属池田小学校で利用しているWindowsPCとChromebookでは、いずれのOSでもChromeブラウザ経由で画面転送をしている。接続可能距離は20メートルまであり、教室全体をカバーできる。4K出力に対応。本体保証は2年間。提供はマトリックスコミュニケーションズ。同社は関西教育ICT展(8月4・5日)に出展。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2022年7月4日号掲載