郡山市立桃見台小学校(福島県・橋本ゆかり校長)では、文部科学省事業で2021年9月より英語の学習者用デジタル教科書(東京書籍)を活用しており、端末も学習者用デジタル教科書も使用することが特別なことではなくなってきているという。6年1組の授業を取材した。授業者は渡部裕子教諭。
授業冒頭は5分間のチャレンジタイムだ。これは学習者用デジタル教科書を使った自学の時間。児童は端末にNEW HORIZON ElementaryやPicture Dictionaryの画面を表示。「Unit2の歌を覚える」「単語を練習する」等、各自の目標に則り、歌や単語を繰り返した。音声は各自のイヤホンで聴いている。
5分間を終えると2分間で振り返り。次回のチャレンジタイムの目標を決めていた。児童は振り返りシート(紙)に「Unit2のEnglish Songを覚えることができた。次はUnit3の歌を覚える」、「声に出したら単語をすぐに覚えられた。次はスポーツの単語を声に出して覚える」等と具体的に記入している。
「天気」「曜日」「月日」「時刻」を使った英語で教員とやりとりを行ったあとは、隣の人同士でスモールトーク。前時で学んだ表現「どこに行きたい?」等を使ったやりとりだ。「岡山県」と答えた児童は「マスカットが好き」と英語で補足。「沖縄」「USJ」という児童もいた。
本時の学習ポイント(~できる)の説明後、指導者用デジタル教科書Unit3のEnglish Songを前方の提示画面に映して全員一斉に歌った。「英語の字幕を出して」という児童もいる。歌い慣れている様子がわかる。その後、各自の学習者用デジタル教科書で3分間の練習タイム。練習後のEnglish Songは1回目よりも声が大きく、自信をもって歌っている。
その後の国当てクイズはグループで実施。児童は端末の左に教科書本文、右にPicture Dictionaryの画面を提示。積極的に出題し合っており、出題できない児童を助ける様子もあった。
授業の終わりには授業支援ツール(ロイロノート)を使って教員が振り返りアンケートを各自の端末に配信。「楽しく学習できたか」「個別練習の前後でみんなの歌が変わったか」「国当てクイズで問題を考えることができたか」等10項目とこの日の授業の感想(記述式)だ。児童はソフトウエアキーボードやフリック入力で記入した。
渡部教諭は学習者用デジタル教科書を使った授業冒頭のチャレンジタイムについて「毎時間の5分間の積み重ねで、児童のスキルアップを感じている。昨年9月のスタート時は何となく取り組んでいた児童が、徐々に目標を持ち始め、熱心に取り組み、次第に自信をもって発音するようになった。チャレンジタイムの振り返りは、当初『◎、〇、△、×』の4段階のみ。コメント欄を追加したことでその時間のうちに次の時間の5分間の目標を決めやすくなり、短い時間を有効に使えるようになった」と話す。
授業支援ツールを使った授業最後の振り返りも、当初は3問であったがこの日は10問+記述に挑戦。予想以上に授業に対する感想を記述しており「今後も継続したい」と話す。
振り返りの結果はすぐに集約でき、教員の授業改善にも役に立っている。この日は英語でのやりとりや国当てクイズが楽しいという声が多かった。英語も21人中15人が「とても好き」6人が「好き」と回答していた。
学習者用デジタル教科書の活用を前提にした活動が増えており、渡部教諭は「今では、端末は学びの必需品」と語る。家庭の端末でログインして学習する児童も多いという。下位の児童が英語嫌いにならないように配慮しているが、児童同士で助け合うシーンも多い。
「映像や音声を使って自分のペースで学習できる点が、学習者用デジタル教科書の最大のメリット。語彙力が増え、自信をもって発音や会話、プレゼンテーションができるようになり、英語を使ったやりとりを楽しむようになった。これから学習者用デジタル教科書を活用する学校は、数分間で良いので児童に自由に活用させることから始めると良いと思う。イヤホンやタッチペンも用意した方が良い」と話した。
ICTは授業で使う普通の道具になってきていると感じる。本校では学習端末(iPad)の配備後、教員の授業用端末もコロナ禍に配備された。児童のイヤホンやタッチペンは個人負担で準備。端末は、朝、充電保管庫から出して机の横に下げておく学年が多い。
学習者用デジタル教科書については、指導者用デジタル教科書とは異なる活用について教員が模索しているところ。英語は昨年度からの積み重ねにより児童主体の活用が始まっている。
夏休み中の端末の持ち帰りについては現在、実施前提でルールを検討中だ。故障時の対応や管理・活用の方法等、保護者と共有していく。
郡山市ではプログラミング教育を3~6年生で年間10時間、総合的な学習の時間で取り組んでおり、教育課程にも位置付けられている。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2022年7月4日号掲載