クラウド活用により、校務関連の紙印刷が減っている。しかし掲示物や教材、配布物等の印刷は、ゼロにはならない。泉南市(小学校10校・中学校4校・幼稚園2園)では、これまでの印刷環境の「当たり前」を見直し、エプソン販売のアカデミックプランと高速インクジェット複合機「LX―10050MF」「PX―M7080FX」を利用することで業務負担を大幅に軽減できたという。泉南市教育委員会に導入の経緯を、砂川小学校に業務削減効果の例を聞いた。役職は2022年3月時点。
これまで学校・園のプリンター、コピー機、孔版印刷機は5~10年ごとに更新していましたが、印刷物や印刷機が増えるにつれて各校に様々な機種が入るようになり、インクやドラム、ヘッド、孔版印刷機のマスターやインクなど、消耗品の種類も多くなっていきました。種類が増えると事務処理や管理負担が増え、各校の細かい要望に対応する教育委員会事務局の業務も増えていきます。
そこで、ICT環境刷新のタイミングで知った「アカデミックプラン」の導入を検討することとなりました。
校長会や事務職員会への説明会では当初、インクジェット・プリンターにネガティブなイメージも多く「孔版印刷機より遅いのではないか」「配置台数が減ると渋滞が起きるのではないか」などさまざまな意見が挙がりました。そこで、まずは実機を使用してみたいという声により、試験運用を実施することとなりました。
2021年3月に高速インクジェット複合機「LX―10050MF」を砂川小学校と泉南中学校で2週間の試験運用をしたところ、両校の教職員も、テスト利用した他校の教職員も「教員用端末から直接大量枚数の印刷ができる」「印刷がとても速い」「滲みもなく、カラー画質も想像以上にきれい」と大好評でした。
アカデミックプランには月額契約金額にインク代も含まれており消耗品管理が不要な点、メンテナンスに追加修繕費がかからない点も評価され、多くの賛同を得て導入が決まりました。契約は、ふるさと納税の基金を活用して教育委員会事務局で一括して行いました。
実際の配備では各校に冗長性を持たせることを考えて2台ずつとし、うち1台は1分間に100枚印刷できる「LX―10050MF」を選定。入札を経て2021年6月から運用を開始しており、主に職員室で活躍しています。
学校園ごとの印刷枚数は、過去の印刷実績を基に児童・生徒数を考慮して配分しています。さらにエプソンから通知される毎月の使用枚数実績をスプレッドシートにまとめてクラウド上で管理し、各学校園で共有して全体で調整を図っています。
アカデミックプランの導入で、事務担当職員の消耗品管理が用紙購入のみとなりました。これまで必要であった印刷関連の消耗品の在庫・発注管理や請求処理がなくなり、これを受ける教育委員会事務局側の承認処理や予算調整に伴う業務も削減され、全体で大幅な業務負担軽減が実現しています。
コスト的には、これまでと同等の予算でカラー印刷が自由に使えるようになり、教育委員会事務局の資料もカラーが目に見えて増えています。
印刷に手間のかかる孔版印刷機の使用頻度が減ったため、次回の機器更新時には、大量印刷が多い学校には「LX―10050MF」を追加することも検討予定です。
「泉南市教育大綱」及び「泉南市教育振興基本計画」に基づき「令和3年度泉南市教育重点施策(SEPP2021)」の下、積極的に学習・授業改善を進めています。
2020年11月から全校の教育環境を刷新し、学びの環境が一新しました。全小中学校全教室に無線LAN、65インチ大型提示装置、児童・生徒の情報端末(iPad)が配備。家庭への持ち帰り学習を円滑に行うため、児童生徒用端末はLTE方式とし、毎月5GBの通信量を契約しています。Googleアカウントも配備しました。教職員の校務用端末はWindowsOSです。
これまでほとんどの教室はテレビと一斉放送設備のみ、PCはPC室のみだったので、大きな変化ですが、21年4月から本格稼働が始まり、若手やベテラン教員が力を合わせて試行錯誤と学び合いを重ねています。
学習者用デジタル教科書やGoogle Workspace、授業支援ソフト、大型提示装置、児童生徒用端末などさまざまなICTツールを利用しながら、オンライン学習やプログラミング学習などの授業改善と働き方改革を積極的に進めているところです。
アカデミックプランにより自由にカラー印刷が使えるようになり、教員も驚いているようです。2台の複合機は、音楽発表会のイラストポスターのカラーコピー、教員が作成した教材や理科の観察記録、教科のレポート、学校・学級・保健・給食だより、校内掲示物などを印刷しています。入学説明会資料の冊子作成も、以前は多人数で丁合作業や製本をしていましたが、今は両面印刷やソート機能のおかげで1人でも作業ができます。カラー印刷の利用頻度は格段に増え、子供たちに配布するプリントはカラーが普通になってきています。これまでは印刷物の見づらさが児童の学習意欲を削ぐこともありましたが、今はカラー印刷により視覚情報が増え、児童の興味向上や意欲喚起に繋がっています。スキャナーも、テストや児童の作品の記録保存、重要書類のバックアップ用として、多くの教員が利用しています。
これまでは原本を持って印刷室に行き、マスターを作って刷り増しをするのが当たり前でしたが、今回導入してみて、さらに良いものがあることに改めて気付きました。
授業改善(算数TT)を担当しています。
昨年度から働き方改革の1つとして単元テストにデジタル採点ソフトを導入しており、テスト用紙の表裏をスキャンして教員用端末に取込み、解答の自動採点を行っています。
デジタル採点ソフトで採点自体は速くなったのですが、以前のプリンターの場合、採点後のテストの印刷に時間がかかる上、途中でインク切れや用紙切れも頻繁で、1クラス35人分の印刷に1時間以上かかることもありました。
高速インクジェット複合機の導入後は、ADF(オートドキュメントフィーダー)による両面スキャンと高速両面印刷により、作業にかかる時間は5~6分程度と今までの10分の1になりました。
業務に時間の余裕を生み出すICT活用を、今後は全ての教員が行えるように広めたいと考えています。
以前は学校毎の予算でさまざまなプリンターのインク・ドラム・ヘッド、孔版印刷機のマスター・インクなどの消耗品・修繕費を管理していました。
まず、消耗品の在庫を切らさないように2週間から1か月に1回は点検し、早めに発注をする必要があります。経費処理のため伺い書を提出、承認・購入・会計報告の手続きなどが必要です。レーザープリンターの場合は一定枚数以上出力すると機械が止まったり部品交換が必要になります。部品も高額でした。
アカデミックプラン導入後は、インクの発注業務や在庫管理が不要になりました。
インクが大容量で交換頻度が少なくなった上、インクが減るとエプソンから自動的に送られてきます。インク補充も簡単で手も汚れません。
以前は軽い不具合であっても、訪問だけで技術者派遣料などが必要でした。
アカデミックプランでは契約にメンテナンスも含まれているので、不具合があればすぐに呼んで相談ができます。
以前より手軽に印刷ができるので、事務職員や手の空いている他の教員が空き時間に印刷代行できる業務分担の仕組みも設けました。
印刷したいデータを共有フォルダに入れて、それを印刷してもらうだけなので、依頼する側も受ける側もそれほど大きな負担は感じずに、担任教員の放課後の印刷作業が減るなど学校全体での働き方改革に繋がっています。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2022年7月4日号掲載