現在、2024年度の学習者用デジタル教科書の本格的な活用開始に向けて、留意すべき点やデジタル教科書の配信基盤と各種仕様の整理、無償給与の可能性も含めて討議しています。
中教審の特別部会に「教科書・教材・ソフトウェアの在り方ワーキンググループ」が設置されたのは画期的なことです。これまでは、デジタルに詳しい専門家中心の会議でした。それが国全体の討議項目となったのです。
これに伴い文部科学省「学習者用デジタル教科書普及促進事業」によりすべての公立小中学校に1~2教科の「学習者用デジタル教科書+教材」が配備されています。
中には、活用が進んでいない学校もあると聞いています。
今回の「学習者用デジタル教科書普及促進事業」は、無償ですべての学習者用デジタル教科書+教材の機能を活用できるという唯一のチャンスといえます。2024年度以降に配備されることになる学習者用デジタル教科書は、現在全校に配備されている学習者用デジタル教科書+教材とは異なり、デジタル教材と切り分けられて提供され、教材部分は有償となることも考えられるからです。いずれ、無償給与の対象は紙もしくはデジタル教科書の一方だけになる可能性もあります。
フル機能を無料で活用できる滅多にないチャンスであると考え、デジタル教材が有償になった場合や紙とデジタルの教科書の選択制になった場合にどう判断すべきか等を検証するつもりで活用体験を積んでもらいたいと考えています。
「学習者用デジタル教科書をどう使えばいいのかわからない」という声も届きます。
これまで、教科書は「教員が教えるためのもの」でした。「指導者用デジタル教科書」も同様でした。しかし「学習者用デジタル教科書」は、子供が自ら学ぶためのものです。
そこで、まずは子供に渡してみて、それによりどんな学びが可能になったのか等を皆で共有してはどうでしょうか。
あまり指示を出さずに子供に渡すことに罪悪感をもつ教員もいるかもしれませんが、渡した後の見取りや分析、それに基づく授業づくりこそが教員に求められているものです。
学習者用デジタル教科書の普及により、紙の教科書が不要になるわけではないので、その点は安心して下さい。