求められる資質・能力の変化に伴い、全国学力・学習状況調査(以下、学力調査)の出題内容が変わっています。
中学校国語では、自分のスピーチ内容に対する友達からのアドバイスについて出題されていました。横書き表記でオンライン上の編集を想定した出題もありました。日常的な場面で国語的な力を発揮できるか否かも問われていました。中学校理科では、空の写真と観測データを関連付けた出題など、文脈の中でのデータ理解が問われており、中学校数学では、コマの回った時間について条件を変えてまとめた箱ひげ図の理解が出題されていました。
小学校算数では、多角形のプログラミングが大問として出題されました。さらに、児童生徒への質問調査では、教員と児童生徒のやりとりにICTが使われているのか、毎日端末を持ち帰っているか、学習目的で端末やスマートフォン等をどれくらい使っているのかも問われています。
本調査の分析結果は7~8月に公開予定です。学力調査の正答率と質問紙のクロス集計により、各校において本当の意味でICTを活用しているか否かの実態が明らかになります。
今回は1万人程度を対象にCBTでも実施されています。学力調査は2025年度からCBTで行われる方針です。授業改善や操作スキルの育成を急ぐ必要があります。
2021年の大学入学共通テストも大きく変わっています。
外国語では、SNS上の英語でのやりとりが問題文になっていました。英語テキストをスライドやポスターにまとめる出題もありました。現代社会では思考ツールによる分析や探究の過程で考える出題があり、数学や政治経済も日常的な文脈から出題されています。
「考える」出題が増えたことで「記述式は減ったが時間が不足した」という報道もありました。
日々、自ら調べて話し合いしながら考えを深めて納得解を見出す学習経験を経た子供とそうでない子供では、「考える」「関連付ける」スピードが変わります。これは受験間際に即席に身に付くものではありませんから、両者では試験という限られた時間の使い方が大きく異なることになるでしょう。
さらに、高等学校で「情報Ⅰ」が必履修となっています。現在の高校1年生が大学入試を迎える年、大学入学共通テストで「情報Ⅰ」の範囲が出題されることになりました。
「情報Ⅰ」は多くの大学で採用されることが予想されます。各大学とも「情報」の基本を身に付けた子供を求めているからです。
都道府県によっては「情報」担当の教員の確保やカリキュラム構築など、準備が遅れていると聞いています。専門性の高い教員を確保できず、適正な教員配置ができないということが起こらないよう、高等学校と教育委員会・学校設置者の姿勢が問われています。