GIGAスクール構想で配備された教育環境を今後、どう活用していくのかが問われる1年が始まっている。中央教育審議会委員や教育情報化関連の座長を務める堀田龍也教授(東北大学大学院情報科学研究科)は「GIGAスクール構想は、学校だけに起こった特別なことではない。社会的な流れの中で始まった必然。これから日本全体を変革していくための最初の一歩であり、短期・中期の両面で活用を考える必要がある」と話す。今理解すべきこと、今後を見据えた準備について聞いた。
現在の学習指導要領の学力観は、これまでと明らかに異なっています。その背景には、深刻な人口減やGDPの低下、世界との関係構築など日本社会の厳しい状況があり、予測不能な問題にも対応できる力を育む必要があること、そのためにどのような教育環境が求められるかを討議したものです。
ほぼ半世紀ほど日本を支えてきた終身雇用制は終わりつつあり、今や「転職」即ちキャリアチェンジにより自分の人生を切り拓くことが当たり前になりました。民間企業から教員への転職や、教員から別の職業への転職も、今では少なくありません。
この点を実感しないままでいると、GIGA環境の急激な整備の意図が理解できず、疑念や不信が生じやすくなるのではないでしょうか。
今後変革していく社会の中で生き抜く力を子供に育むのは大人としての責任です。これまでのやり方を微修正した程度では間に合わないことも多く、かつ人手も人材もスキルも不足しています。それをICTソリューションや産学連携等により補い合理的に進めていく必要があります。
そんな時代では、学んだ結果としての学力だけではなく、学ぶ意欲と学ぶスキルが求められます。学び続ける意思、自分の学びを自ら組み立てる力、あふれる情報をうのみにしない力、議論や対話を通してより良い納得解を構築できる力です。
そこで、学校での授業も「教員の話を聞いて終わる」授業から、「学び取ることの喜びを獲得できる授業」としていかなければなりません。
そのために必要な学びの環境として、端末やネットワークが配備されました。
これまで通りの授業であれば、ICTがなくてもできますが、ICTやネットワークをノートや筆記用具と同じレベルで使う授業が求められています。