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教育ICT

教育の情報化に関する4団体会長が討議~日本教育情報化振興会 日本教育工学会 日本教育工学協会 日本視聴覚教育協会

2022年5月2日

New Education Expo実行委員会は4月23日、【4団体会長特別企画】教育の情報化の道程と今後の展望~授業におけるICT活用を中心に~を開催した。4団体とは、一社・日本教育情報化振興会(Japet&CEC 会長=山西潤一・上越教育大学監事)、一財・日本視聴覚教育協会(JAVEA 会長=大久保昇・(株)内田洋行代表取締役社長)、一社・日本教育工学会(JSET 会長=堀田龍也・東北大学大学院教授)、日本教育工学協会(JAET 会長=高橋純・東京学芸大学教授)。会長が各団体の立場から意見を述べ、討議した。司会は佐藤和紀・信州大学准教授。

左より日本教育情報化振興会・山西会長、日本教育工学会・堀田会長、日本教育工学協会・高橋会長、日本視聴覚教育協会・大久保会長

――各団体の役割について

日本教育情報化振興会(Japet&CEC)山西潤一会長

1982年「社団法人日本教育工学振興会」として設立。12年、一般社団法人に移行。14年、一社・コンピュータ教育推進センター(CEC)と合併。企業のバックアップを学校現場に提供し、学校現場の知恵を企業に提供して製品に反映することを通して、PCを「知の自転車」として乗りこなすための支援を提供したいと考えている。毎夏、「関西教育ICT展」を実施。ICT夢コンテストも毎年応募を募っており、年度末の「教育の情報化推進フォーラム」で表彰及び事例発表等を行っている。

 

一社・日本教育工学会(JSET)堀田龍也会長

人口減の中、会員数は設立以来、右肩上がりで増増加。現在3400人以上が所属。ITと教育に関わる研究成果が求められていると感じると共に会員サービスをさらに向上させる必要があると考えている。2021年3月、任意団体から一般社団法人化。

「工学」とは、人に役立つことを目的とした実学であり、開発・検証・改善・カスタマイズの手法が用いられている。この手法を教育に活かすことが教育工学である。

今、求められている「個別最適な学び」は「自分の学びを自ら最適にできる子供を育みたい」という議論から生まれた。最適化するのは教員でもAIでもなく本人であり、教員やAIは「支援する」役割にある。今、例えば学習者用デジタル教科書上でどこが最もクリックされているのか、どんな順番にクリックされているのか等の学習ログがビッグデータとして解析可能になることは、その子供の学びを最適化するために有用である、という流れで議論・研究が進んでいる。

 

日本教育工学協会(JAET)高橋純会長

1971年設立し、会員数は現在約2000名。各地の教育工学関連の研究会(団体会員37)、企業(賛助会員42)、100人以上の研究者や学校教員が参加。学校情報化診断システムを開発し、2014年度から学校情報化認定を行っている。現在、学校情報化優良校は1618校に、学校情報化先進地域は17地域となった。全国大会も毎年1回実施。本年は春日井市で行う。

 

一財・日本視聴覚教育協会(JAVEA)大久保昇会長

1928年、「全日本活映教育研究会」として創設。その後の改称・改組を経て1980年、財団法人日本視聴覚教育協会に改称。2012年に一般財団法人化。ICT教育首長協議会事務局として、今年の6月2日に「ICT教育首長サミット」をNewEducationExpo内で実施する。

――これからの学校教育で「子供1人ひとりを大事にする」ために教員はどう関われば良いか

山西 OECDラーニング・コンパス(学びの羅針盤)2030では、子供が教員の指導や指示をそのまま受け入れるのではなく、未知な環境であっても自力で歩みを進め、意味のある、かつ責任意識を伴う方法で、進むべき方向を子供自身が見出すことを強調しており、「ジレンマに対処する力」「責任ある行動」「新たな価値を創造する力」の育成も重視されている。GIGAスクールにより学びの場が拡張している今、学び方を教えることが最優先。協働的な学びは、ジレンマや耐性など、社会で必要なエージェンシーを育む場として設定することだ。

大久保 オンラインで多くのことができるようになったが、人は「集まる」ことで進化していく。そこで児童生徒がトランスフォームできる場として教室やPC室を「ワンダーランド化」「LABO化」していきたい。子供の数を20人程度とし、机を大きくするだけでワンダーランドに近づくはずだ。

高橋 児童生徒11台が実現し、それに伴い全教室の大型提示環境配備も100%配備に近づいている。これまでの学習指導観で使いこなすことは難しい。学び方や学習の手順を教えることで1人ひとりが最適な学びを実現できるようにすることが当面のゴール。

「情報収集」「分析」「発表」などの学習過程を「指導の手順」と考えている教員も多いようだが、これは子供自身の学習過程であり、1人ひとりがこの手順で学びを進めることができるようにすることを意味する。

堀田 これまで、全員一斉に理解させるために最適な方法について、実践が積み重ねられてきた。これに気付く必要がある。本来学習過程は1人ひとり異なり、役割が変わる。これからの教員は「誰がどんな考えを持っているのか」「この子とこの子を組み合わせると相互啓発が起こりそうである」等の判断だ。昔の学習観に囚われていると、これらの活動について「時間がない」「本来の学習ができない」と感じるだろう。かつての学び方に最適化されている学習の流れが変わるには、時間がかかる。理解できた教員、できる学校から始めていくしかない。

 

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2022年5月2日号掲載

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