堀田 様々な人が様々なことをするとデータが蓄積していきます。高橋先生と山内先生が似ていますね。
高橋 クラウドシステムはありとあらゆる記録が残り、まずは振り返りに使い始めたという入口にいます。今後はさらに様々な活用が始まるはずです。
具体的に何に使えるのかわからない面は多いのですが、例えばGoogleマップにより様々な記録が取れるようになりました。しかしもともとの開発者はおそらく、そこまで考えて開発していないのではないでしょうか。
堀田 何かに使うという目的を定めなければデータを取得できないとするのか、データを蓄積してから活用を考えるのか。後者の考え方は納得されないことが多い、という面はあります。
学習ログの利用は可能性が広がる分野です。安全な範囲で可能な限り蓄積する、というのが施策の方向性ですが、まだ無理解が多いと感じます。データを見て、この問題が解けない子供が多かったのでやり方を考える等、データを見てから思いつくことも多いので、その理解が広がるようにしたいですね。
山内 大量のデータの蓄積は、ローカルデータではできないことが確実にできるようになり、長期的に伸びる研究分野ですが、現場の教員にとって、今すぐの利益が理解しにくいという面はあります。コントロールできる範囲でどう利活用できるのかについてのイメージを持つことが重要で、わかりやすい例として「ポートフォリオ」と書きました。
大学のゼミでは20年間ポートフォリオを蓄積しており、数年前からこれをデジタルに切り替えました。それにより自分の研究テーマに似たものを検索できるようになりました。
データの蓄積は、自身の評価に活用する面と、歴史として活用されるという両面があり、後者は、学習者にとって有益なリソースとなります。自分の学習が他の人の学びの役に立つことが理解できると、利活用が進むのではないでしょうか。それが見えると蓄積の意味が理解できるはずです。
堀田 私の研究室でも、蓄積・共有から始めています。何に使うのかは後進が決めるという面があります。
越塚 データ活用により「人間の限界を超えたい」という思いがあります。
1人の力には限界があり、10人以上に聞く、24時間働き続けるなどできないことがたくさんあります。それを打ち破るのが端末でありデータであると考えています。
1980年にコンピューターが生まれて20年後の2000年にインターネットが生まれました。Googleは1999年の創業です。さらにその20年後である今、IoTやデータ活用の時代が到来しています。
データ活用は世界的な課題です。防災、電子母子手帳、食品の安全管理、電力データによるフレイル(要介護)の自動検知など、あらゆる分野で試行錯誤が始まっています。教育分野でも役立つはずであると強く思っています。
データ駆動社会の本質は「科学の民主化」です。個人レベルでデータが安く使えるようになりました。しかし決して簡単にはなっていない。そこがポイントです。
今後、日本社会でも目指すべきは皆がデータにアクセスして自ら分析・判断できる「自律分散型社会」です。それが成り立つためには、皆が科学的な考え方=分析・解析・判断・自己決定して活動できるようになることが大前提です。訓練しなければ身に付きません。子供時代から自己決定して民主的に決めるためのスキルを育まなければならず、その第一歩がGIGAスクール環境です。
堀田 自律分散型社会は自己決定する力がなければ成立しない社会です。人のせいにする社会ではありません。データリテラシーの有無は今後一層重要です。