学校法人角川ドワンゴ学園、N高等学校・S高等学校(以下、N高/S高)は3月24日、リアルとオンラインで2021年度卒業式を開催した。卒業生は約6000人。リアル会場であるTOKYO DOME CITY HALLには卒業生、保護者、教職員700人以上が参加。卒業生は、リアル会場、バーチャル(以下、VR)会場、Zoom会場などを選んで参加した。本卒業式の様子はYou Tubeやニコニコ生放送で視聴できる。N高/S高はネットを利用した広域通信制高校。
リアル会場に参加する卒業生の代表者にはN高・奥平博一校長より対面で、VR会場で参加する卒業生の代表者にはS高・吉村総一郎校長がVR空間で卒業証書を授与。このVR空間は建築家の隈研吾氏が設計したものだ。
卒業式の模様は「ニコニコ生放送」「YouTube」「Twitterライブ」でリアルタイムに配信。会場風景にバーチャル映像を合成し、リモート応援システム「リモートチアラー」(=Remote Cheerer powered by SoundUD)(ヤマハ)により在校生からお祝いの声が流れた。
山中伸一理事長は「卒業後、N高/S高はどんな学校かと聞かれることもあるだろう。最大の特色は学ぶ内容を自分で決めること。部活も学校祭も遠足もすべてオンラインで行うなど最先端の技術を活かした貴重な学びや経験は今後の人生で大きな力になる」とあいさつした。
来賓として、多彩なジャンルの専門家がオンラインであいさつ。
ノーベル化学賞受賞者である野依良治・JST研究開発戦略センター長は「新しいことに気付くこと、自分自身で問題をつくることこそが重要。あえて未知の課題に臨むことで新たな道が開ける。次に重要なのは、多くの人と絆をつくること。多様性豊かなチームでの掛け算が困難を乗り越える力になる。N高/S高のつながりを大切にして新しい価値をつくってほしい」と話した。
このほか国際政治学者・三浦瑠麗氏、教育系バーチャルYouTuberみみたろう氏、ゲームクリエイター・ヨコオタロウ氏、スクウェア・エニックス取締役・齊藤陽介氏、東京2020オリンピックメダリスト・阿部詩氏、自由民主党副総裁・麻生太郎氏がメッセージを送った。
卒業生代表の中村彩さんは「高校1年7月にN高に転校し、最初は何をしてよいのか見つけられなかった。2年から起業部に入って地元・香川県活性化のための会社を起業した。自分のように、居場所を見つけられない人にも居心地の良い場所を提供したい。N高では個性が尊重される。大きな夢を語っても、それを笑う人はいない」と伝えた。
在学中、特に顕著な活躍があった生徒を表彰。今年は14人が表彰された。十人十色の分野で才能を自ら伸ばし、成果を上げた高校生のコメントは聞き応えがある。
東京2020パラリンピックの閉会式に出演した音楽家の原口沙輔(さすけ)さん(写真)は、N高の応援歌の作詞作曲者でもある。
「この3年間、驚くほど忙しい時期もあったが、安心して両立できたのはN高のおかげ。ここを勧めてくれた両親とこれまで出会った人すべてに感謝している」とコメント。
Slackチャンピオンであり、Slackを利用して学内サイト「ナレッジベース」を構築して学園の運営を支えた横内勇気さんは「自主性という最も難しいスキルをN高で伸ばすことができた。大学でも活かしたい」とコメント。
高校生eスポーツ大会リーグ・オブ・レジェンド部門で2連覇した濱岸翼さんは「この学校で培った感情と経験を進学先で活かしたい」、パワーリフティング選手権57キロ級で優勝した小幡歩美さんは「実績を残せたのはN高の手厚いサポートと自由な校風、皆の応援のおかげ」、プログラミングスキルで社会貢献した藤原向日葵さんは「この3年間は、企業や行政で働きながら過ごした。今後も様々な人のために貢献したい」とコメントした。
このほかプログラミングスキルで社会貢献した生徒、地域活性化に取り組んだ生徒、米国チーム所属のアイスホッケー選手、プロダンサー、プロサーファー、プロテニスプレイヤーとして活躍する生徒が表彰された。
前回の卒業式ではフィギュアスケート選手紀平梨花さんも表彰されている。
オンライン卒業式は一般も視聴できるチャンネルを設定。高校生の活躍ぶりと堂々としたコメントに多くの人が刺激を受けたようだ。
「この高校すごい」「なぜこんなすごい人ばかりいるの」「サスケくんの卒業を見たいと思って視聴したけど、この卒業式を見れてよかった」「学費が気になる」「レポートは難しいのか」「N高とS高はどう違うの」と在校生や卒業生に質問。やりとりが生まれていた。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2022年4月4日号掲載