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教育ICT

2021年度教育の情報化推進フォーラム~学校情報化認定「優良校」対象に情報活用能力に関する調査 「情報活用能力を育む授業づくりガイドブック」を作成

2022年4月4日

2021年度教育の情報化推進フォーラム「GIGAスクールで築く学びのみらい」が3月11・12日、オンラインで開催された。主催は一社・日本教育情報化振興会(JAPET&CEC)。当日は「ICT夢コンテスト」の表彰式と本コンテスト受賞者の事例報告、研究者や教育委員会による討議や提案、JAPET&CECによる調査結果等が報告された。

上記5つの学習プロセスを各教科に盛り込むことで情報活用能力を育む。本ガイドブックでは授業事例を掲載した

上記5つの学習プロセスを各教科に盛り込むことで情報活用能力を育む。本ガイドブックでは授業事例を掲載した

情報活用能力育成のための調査研究事業

JAPET&CECでは「情報活用能力育成調査研究委員会」(中川一史委員長・放送大学教授)を立ち上げて5テーマで情報活用能力育成のための調査研究事業に取り組んでいる。

 

本パネル討議では「情報活用能力全国調査」「情報活用能力ベーシックの開発」「授業実践と教員研修」について報告した。

中川教授は本研究委員会の主旨について説明。

GIGA端末配備直後は「使うことで精いっぱい」だった学校も今後は、どんな力を育んでいくのかについての議論が始まる。「情報活用能力とはそもそも何か」「端末活用とどう関わるのか」「情報活用能力体系表が複雑で理解が難しい」などの声が届いている。そこで本研究会では情報活用能力育成のための調査研究事業に取り組んでいると話した。

学校情報化認定「優良校」で情報活用能力育成に関する取組を調査

稲垣忠教授(東北学院大学)が報告。

JAETの学校情報化認定「優良校」を対象に20221月、「情報活用能力」育成に関する調査を実施。「優良校」を都道府県別に平準化して選出した243校に依頼し、小学校71校、中学校42校、義務教育学校2校が回答(回収率473%)2019年度に行った類似調査とも比較し、GIGA端末やネットワーク等の配備後の課題を分析した。

それによると「情報活用能力」に関する認知度は大きく高まっている。「情報活用能力」が学習指導要領の総則に記載されていること、学習の基盤として位置付けられていること、プログラミング教育や情報モラル教育なども含まれることに対する理解が進んでいる。

一方で、教員研修において、情報活用能力育成に関する「プログラミング研修」等の実施率が低い

同様に、情報活用能力を育むカリキュラム・マネジメントについて各校の年間計画への位置づけはなされているものの、評価・改善の仕組みづくり、情報活用能力育成に関する副教材の活用や指導案等での取り扱い、図書館との連携が課題であることがわかった。

稲垣教授は「優良校であっても、PDCAサイクルのうち『C』と『A』に課題がある。また、中学校においてプログラミング教育は技術科教員に任せる傾向にあるが、小学校だけではなく中学校や高等学校でも教科横断的な視点で情報活用能力育成を視野に入れたカリキュラム・マネジメントが必要。そのための研修や評価の仕組みつくりが今後、重要になる」と話した。

11の授業事例を掲載 中学校向けにβ版も

佐藤幸江客員教授(放送大学)が「情報活用能力を育む授業づくりガイドブック」のポイントを報告。

本事業では、学習プロセスに情報活用能力を位置づけた指導指標「小学校における情報活用能力ベーシック」を作成・公表しており、5つの学習プロセスと13の構成要素を示している。

2021年度は「情報活用能力を育む授業づくりガイドブック」としてリニューアル。「情報活用能力ベーシック」を教科別・低中高学年別にまとめ、11の授業事例を掲載。指導上の留意点や端末の使いどころも示した。小学校の授業事例は英語を除く全教科を掲載。

中学校向けには、社会及び理科における情報活用能力ベーシックをβ版として作成。

佐藤氏は「情報活用能力の育成は『総合的な学習の時間』で取り組めば良いのではないか、と考えている教員も多いようだ。そこで『情報活用能力を育む授業づくりガイドブック』では各教科の取組を示した。国語科の『情報』の重要性も増している。学習指導要領では特に『情報収集』『整理・分析』『まとめ・表現』の部分で「情報」の記述が増えており、ここに重点を置けば情報活用能力育成につながることがわかる。中学校β版では理科と数学の取組を示した。学校研究に活かしてほしい」と話した。

情報活用能力を育む教員研修とは

「小学校における情報活用能力ベーシック」を基に、情報活用能力育成を目的にした教員研修について前田康裕主任指導主事(熊本市教育センター)が報告。

教員研修の課題としてハードやアプリの研修に終始しがち、カリ・マネに至っていない等を挙げ、好事例として熊本市内の3校を紹介した。

〇春日小学校 図工科で教員研修

図画工作「学校の良さを伝えるポスターを作ろう」に取り組んだ。

「課題設定」「情報収集」「整理・分析」「表現」「振り返り」の流れを意識。Web等で良いと思ったポスターを集めて、比較、討議。どこが良いと思ったのかをスライドにまとめて報告。学校の良さについても討議してポスターで何を伝えたいかを整理。実際に写真を撮影したり過去の写真を収集したりしてキャッチコピーやレイアウト、デザイン等を考え、ポスターを作成。作品を鑑賞し合い、振り返りでは評価シートに記入。この学習で何を学んだのかを整理、改善点を明らかにした。やってみるとわかるが、ポスターを見てなぜ「良い」と思ったのかを言語化していくことが重要だ。パフォーマンス評価もポイントとなる。内容、構成、見せ方等の評価基準を決めて4段階で評価した。

本研修後、教員は「ルーブリックを用いた学習評価の理解が深まった」「情報活用能力育成についての意識が向上した」と振り返った。

〇尾ノ上小学校 全教員が授業改善

年間数名の研究授業では全員の授業は変わらない。そこで自分の変えたい教科の授業を選択してチームで取り組んだ

まず、学校全体のカリ・マネとして各学年で「総合的な学習の時間」の内容を報告し合い、探究型の学習になるよう改善点を話し合った。また若手教員が講師となってアプリの使い方を学ぶ自主研修も始まり、ICTスキルが向上した。

夏休みの一日研修では教科グループに分かれて改善案を検討。教員自身の課題解決学習になた。研究授業を見ながらよかった点と改善点を同時に端末に記入。授業のポイントを一般化して、自分の授業改善にもつながっていた。

〇五福小学校 柱はSTEAM教育

STEAM教育を柱に様々な情報活用能力育成に取り組んでおり、校内研修も充実している。校長が総合的な学習の時間の改善を提案して「全学年つながりのある学び」を目指し、組織としてカリキュラム作りに取り組んだ。

単元構想シートを使って学年ごとに総合的な学習の時間の単元構想を検討。学年ごとに発表、共有し、総合的な学習の時間が見事に変わった。

特に協働的な学びや情報活用能力育成に関する意識が向上し、児童の情報活用能力も向上した。

3校の研修で感じたことは、時間の確保、学校全体の共通目標の設定、教職員の強みを生かすこと、対話と言語化の重要性だ。振り返りながら対話し合い学び合うこと、情報を収集した後は分析しないと課題は解決しないことを教員が体験すると子供の学びに還元される。

3校の問題意識はそれぞれだが、各校の問題を明確にすること、それに皆で向かっていくという姿勢が効果的な研修のポイントだ。「一人ひとりの授業改善につなげたい」「総合的な学習の時間を充実させたい」等の共通の目標設定があると教科連携も始まり、学びが積み上がる。

【パネル討議】
情報活用能力育成のポイントを提案 「デジタル作品制作」をきっかけに

情報活用能力育成のポイントについて討議した。

■前田 ポイントは3つある。まず教員も児童生徒も「情報活用能力」について理解すること。次に、これまで教員が小学校中学校時代に経験したことがない学びを「学習者」として体験すること。3つめが、学校全体の取組とすること。45分の流れを研究するのではなく、単元全体、学年全体、学校全体の取組とすることで学びが積み上がる。

カリキュラム・マネジメントを意識した研修は今後、一層重要になる。まずは皆で、子供に見せる動画制作等、何かを制作することから始めてみてはどうか。

■稲垣 単元設計の教員研修依頼が増えている。子供が探究する視点で設計することが重要だ。

GIGA環境になりデジタルの作品作りが増えている。その際に情報活用能力育成を意識してはどうか。学びのストーリーを意識すること、アウトプットを想定して情報収集すること、作品を味わう時間がポイントになる。

中学校では各教科で探究的な単元を設定することから始める方法がお勧めだ。それが授業改善の基点になる。

ある学校では教員がおすすめ図書の紹介動画を制作していた。廊下の展示スペースにQRコードを掲示し、端末でいつでも見れるようにしている。聞くと、子供にやらせようと考えているが、まず自分たちで試しにやってみたという。教員のトライは子供の活動に還元される。指導の際にアドバイスしやすく、実際の作品があれば子供もイメージを持ちやすい。

■佐藤 学習者目線のカリキュラム・マネジメントのためには「考える」場面の設定、「学習課題の設定」が自らできるように継続して振り返りを活かすこと、端末とノート・資料の組み合わせ方を考えることがポイント。校長先生のビジョンが明確だと学校全体の取組が進みやすい。作品作りは時間が必要で敬遠されがちだが、その時間を生み出す工夫も必要。

第13回教育用コンピュータ等に関するアンケート調査

教育委員会調査

教育委員会調査では全体平均と共に「政令市等」「市」「町・村」を比較。

■クラウド活用校務でも増

学習用データのクラウド活用が急速に広がった。政令指定都市では814%が、市では660%が学習用データをクラウドに保存している。

校務データを外部のデータセンターやクラウドサービスに保存している政令市は558%。校務データのクラウド活用も始まっている。

一方で町・村では校務データのクラウド活用率は208%と際立って低い。学習用データも385%と、政令市等や市と比較して少ない傾向。

■自治体規模により異なるネットワークの課題

ネットワーク整備の課題について、特に政令市等では「回線容量や料金等の調整」が他自治体と比較して際立って多く約7(698%)。政令市等では、SINET(学術情報ネットワーク)の利用意向も4割と多く、既にSINETを利用している政令市等を入れると5割に上る。

■教員の授業用端末

小学校において全教員の授業用端末が配備されているのは全体で4割程度(434%)。整備予定も小中学校ともに22%と少ない。

授業用端末は地方財政措置されていることからGIGAスクール構想の予算には入っていなかった。さらに地方財政措置も普通教室数が基準であったため、中学校では「授業をする教員全員」分の端末が配備されていないことが問題になっている。本調査後、文部科学省より補正予算及び2022年度当初予算で、授業用端末補助が決まったことから、授業用端末の配備は次年度以降、進むことが予想される。

■情報端末の持ち帰り ドリル活用がトップ

政令市等では約4(395%)が日常的に持ち帰りを行っており端末持ち帰りを考えていない層はゼロ。学校に任せている層は全体平均で14%。「休校等非常時に行う」「行っていないが非常時のために準備している」層が最も多い。非常時に準備をしている層が今後、日常的な持ち帰りに移行するかどうかに注目したい。

では情報端末は家庭でどのように活用されているのか。

小学校では、オンライン授業の参加、課題のやりとり、リアルタイムのやりとり等について、政令市等では9割以上が、市及び町・村では約8割が実施。また、ドリル等は政令市100%、市及び町・村でも9割近く実施(867%/892%)。端末上でドリルを行うことにイメージが持ちやすく取り組みやすいようだ。政令市では小中学校ともに7割弱(69%)が「学習に関するものであれば自由に活用できる」。今後は児童生徒が主体的に判断して自らの学習に活用することが求められている。そのためには「学習に関するものであれば自由に活用できる」というスタンスが必要になるだろう。

学校調査

小中学校教員に調査。全体平均と共に校種別に比較した。

■小中学校の4割でネットワークが不安定

「ネットワークが不安定で利用に支障が生じる」学校は約4割。「速度が遅い」は約5割。「校内でつながりにくい場所・時間がある」学校は約6割であった。

5割以上が端末を毎日活用

端末活用について「ほぼ毎日授業で活用している」「ほぼ毎時間活用している」のは全体で5割を超えている。ただし小学校で33%、中学校で68%が端末を利用できていない。

■端末の持ち帰り

小中学校ともに日常的に持ち帰っているのは2割程度。非常時や長期休暇等に今後持ち帰りをする予定なのは約35%。情報端末持ち帰りの際は、オンライン授業の参加、課題の提出、宿題やドリル学習等にそれぞれ7~8割程度取り組んでいる。2割以上の小中学校では家庭で協働学習が可能。

■プログラミング教育

プログラミング教育は各教科で取り組むことが求められている。現状、小学校では算数、理科、総合的な学習の時間が多い。中学校では技術・家庭科以外ではほとんど取り組まれていない。ただし小学校では国語や社会での取組が若干みられる(82%/63%)

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2022年4月4日号掲載

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