GIGAスクール構想の下での校務の情報化の在り方に関する専門家会議が2020年12月に設置され、これまでに会議を2回行っている。本会議では、校務支援システムや校務系ネットワーク等、1人1台端末とクラウド活用と働き方改革を前提とした、新たな「校務の情報化」について検討。設置期間は2023年3月31日まで。12月の第1回会議では、全国公立学校教頭会と全国公立小中学校事務職員研究会が、校務の情報化の現状について報告。2月3日の第2回会議では、先進的な取組として愛知県春日井市、埼玉県鴻巣市、東京都港区が報告した。堀田龍也座長(東北大学大学院)は「クラウドツールでできる校務を広く共有すると共に、安全に配慮すべき校務は従来の校務支援システムで行う等、個人情報に配慮した指導と共に機微情報の区分けが今後必要になる」と話した。
蔵王町(宮城県)は、人口も少なく近年の少子化の影響もあり、学校設備費用は厳しく制限されてきました。各校の印刷環境は、モノクロの孔版印刷機・コピー機・ファクスで、プリンター導入については、学校毎に必要に応じて備品として予算計上・承認をして購入していました。しかし、故障した場合の修理は有償で高額で、すぐに対応できないこともありました。PC教室にはA4カラープリンターが配置されていましたが、インクが高コストで日常的に活用しにくい雰囲気がありました。
課題を解決できればと考えている中、エプソンのスマートチャージ・アカデミックプランを知り、プリンター導入の検討を開始。販売会社数社から説明を受けて各社の提案を比較し、まず宮小学校に試験的に導入し、同時進行で各校の印刷環境の調査などを経て、導入を決定しました。カラー印刷・印刷速度1分間80枚以上・A3サイズ・コスト削減などを条件に入札を実施。議会の予算承認を受け、2021年4月から市内全小中学校に、カラー複合機とカラープリンターをアカデミックプランで導入しました。
これまでは学校毎に事務職員が印刷関連費を管理し、機器リースやインク、マスター、用紙等消耗品の予算を計上していました。消耗品は年度途中で不足する場合もあり、秋頃に追加補正予算による調整も必要で、この時期は翌年度の予算編成作業なども重なるため、いつも大変な状況でした。アカデミックプランの導入により、年間の管理項目を印刷枚数管理のみに一元化することができ、町全体の全体コストも大幅に削減ができました。
これまで必要であった、予算計上のための調査や業者への見積要請、提出資料作りなどもなくなり、管理・事務工数が削減され、各校事務職員も教育委員会でも大幅な業務負担軽減になっています。
現在は、年度初めに前年度の使用状況をベースに各校毎の印刷割り当て枚数を算定。毎月の各校の印刷枚数を、各校事務職員と共同実施している定例会で全体調整し、町全体で予定数を超えないように印刷枚数管理を行っています。
職員室内でPCから直接オンラインで高速印刷ができるようになり、印刷作業がとてもスマートになりました。
それまではモノクロの孔版印刷機を使っており、コピー機で元原稿を作り、少し離れた印刷室に移動、マスターを作成してから印刷する必要がありました。作業途中でマスターやインクが切れたり、紙詰まりしたりなど、印刷は手間と時間がかかるもの、というイメージでした。カラー印刷は高コストでほとんど使用していませんでした。現在は、クラス全員分の印刷も休み時間内に行うことができ、冊子の作成も両面印刷や丁合機能などで大幅に作業が軽減。印刷にかかる作業時間は3分の1程度になり、教職員の働き方改革にも繋がっています。スキャナーやFAXのほか、A3サイズのカラー印刷が気軽に使えるようになったことで、各種校外学習のしおり、自己紹介カード、教室や校内の掲示物、教員の会議・研修資料、各種調査シートや報告書などもカラー印刷をするなど、校内での利用シーンも増えました。
授業では、印刷したワークシートを配付して児童に書き込ませたり、iPadでネット検索して調べた画像等を印刷して貼り付けたりしています。算数では、デジタル教科書のカラー挿絵や図などを印刷して黒板に貼って説明したり、国語で長文を書く必要がある時は、印刷した資料を配って時間短縮を図り、子供達が考える時間を増やしたりしています。
スキャナー機能も、ADF機能で両面スキャンができるので、ページ資料のPDF化やデータ保管にとても便利です。
大容量インクで長期間使うことができ、インクがなくなる前に配送されるので消耗品管理の負担軽減を実感しています。 ストレスだった消耗品回収もなくなりました。また、以前は各校毎にプリンターの機種やネットワーク設定もバラバラでしたが、今はどの学校も同じプリンターとなり、町内で異動してもそのノウハウを共有できます。
消耗品や保守費用込みの月々の定額プランで、カラー印刷もモノクロ印刷も規定枚数まで同額で印刷できる。枚数は年度で管理できるため、月毎に印刷枚数にばらつきがあっても平準化。学校ごとの印刷枚数のばらつきも、教育委員会単位で平準化できる。消耗品は、交換時期を自動で検知して送付される。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2022年3月7日号掲載