敬愛大学(千葉県千葉市)経済学部経営学科の彌島康朗教授(ビジネス・キャリア教育)は、授業において独自開発したAIテキスト分析ツール「TIARA」を活用し、学生の気付きや成長の「見える化」に取り組んでいる。同学の「TIARA」活用について聞いた。
近年はアクティブラーニング型のキャリア教育においても、多様な手法や教材が提供されるようになってきた。しかし、学生は授業で何を学んだのか漠然としたままの状態で終わることも多いという。そこでTIARAを活用。活発な議論や立派な成果物だけでなく、取り組みにも光を当て、プロセスの可視化・共有を重視して、やりっ放しを回避している。
授業後は学生が授業での取組を振り返り、リフレクションシート(振り返りシート)に具体的な言動や気付きを記入。TIARAで分析している。
AIの活用で分析のブレが最小限に抑えられ、分析作業時間もこれまでに比べて30分の1程度にまで減少した。
分析は、時系列、学生の属性、受講期間、教材や講師の別を軸に行う。
最近はGPA(Grade Point Average 履修科目1単位あたりの成績平均)との比較や、アクティブラーニング受講率との比較も行っている。
分析によって明らかになった自他の取組や気付きを学生にフィードバックすることで、学生はこれまで以上に、具体的な振り返りができるようになってきた。
分析結果やその活用にとって大きな影響があるのは、分析手法のみならず、振り返りから得られる分析データの「質」だ。
そこで、リフレクションシートの質問形式や表現、記入欄の配置やスペースなどを試行錯誤。授業で取り組んだ事実とその結果との因果関係や、そこから得た気付きを引き出しやすくした。
個人のみの振り返りは独りよがりに、内向きになりがちだ。そのため、ほかの学生の振り返りも共有できるようにし、自身の振り返りの参考になるようにしている。
分析結果を学生にフィードバックすると、自分の取組が見てもらえていると安心するようだ。また、ほかの受講生の取組からも刺激と気付きを得られるようで、その後の取組姿勢に変化が生じることが少なくない。学生の意識や姿勢を変えることにおいて、教員の説教やアドバイスより影響力がある。
プロセスを振り返り、結果との因果関係を推察する過程で得た気付きを可視化して、意識することが大切。そうすることで、変化する環境においてもチャンスを見出し、前例にとらわれず試行錯誤し、可能性を追い、自ら成長し続ける姿勢が育まれる。TIARAの活用は、そのような人材の育成にとって大きな力となっている。今後は、TIARAの活用を通じて、不器用でアピールが苦手なために見落とされがちな中間層の学生も拾いあげていく。
(蓬田修一)
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2022年3月7日号掲載