北陸学院小学校(茶谷信一校長・石川県)では、今年度から全学年に情報端末を配備し、算数の学習者用デジタル教科書(教材一体型)(東京書籍)の活用を始めている。5年1組算数の授業を取材した。授業者は立石喜美子教諭。北陸学院大学には「子ども教育学科」があり、幼稚園や保育園のほか、小学校や中学校、高等学校への就職実績もある。
「四角形はどんな形?」「正方形は?」
立石教諭は前時の既習事項「四角形」「三角形」などの特徴を指導者用デジタル教科書上で復習した後、この日の学習内容「平行四辺形の面積の求め方」を示した。
児童は、各自の端末で学習者用デジタル教科書「5年算数」にログイン。端末上で、平行四辺形をカットしてどのような形にすると面積を求めやすいかについて考えた。それぞれが様々な方法で図形をカットしており、立石教諭はそれを見ながら全体に考え方のヒントを示している。
その後は3人グループで互いの考えを説明し合い、各自の考えを改めて整理して学習者用デジタル教科書上に書き込み、スクリーンショットして、GoogleClassroom上に投稿した。中には、図形に加えて説明のテキストを打ち込んでいる児童もいる。
全員の画面を大型提示装置に提示。クラスは18人で、全員の画面を提示できる。
立石教諭が「この考え方と同じ人は?」と皆に聞きながら分類していくと、4種類に分かれた。
4種類の分け方について、立石教諭は、あらかじめ用意していたプリントを黒板に貼って整理。それぞれの分け方について何人かが説明することで「同じ切り方で考えていても、説明の方法が異なる」場合があることがわかった。
同校では学習者用デジタル教科書を2021年5月より活用を開始。なお指導者用デジタル教科書活用は2年目だ。
立石教諭は「個の学びを全体に広げていきたい。そこで自分の考えを伝える機会は必ず設けている」と話す。
指導者用デジタル教科書と学習者用デジタル教科書の使い分けについては「全体で共有して説明する際には指導者用デジタル教科書を、児童が個別で考えるときには学習者用デジタル教科書を使っている。学習者用デジタル教科書は、紙上でできない操作が端末上でできる点、一気に全体で共有できる点が良い。自分の考えを他の子や全体と『共有』するための時間が大きく短縮し、発表や話し合いに時間を確保できるようになった。また、自分の書き込みを『他の人に見られる前提』で分かりやすく表現しようとするなど、メタ認知にもつながっている。使ってみて初めてわかることもあるので、いろいろと試しているところ」と話した。
情報端末は3年生以上に貸与する形で活用を始めた。コロナ禍によるリモート授業の必要性により、今年度から保護者負担(2年間の積み立て)で配備。家庭で充電を行う運用で、5月より全学年で活用が始まっている。
休校時等での在宅状況の確認や連絡、コミュニケーションなど、すぐに活用が始まった。持ち帰り用の肩かけカバンも同時に配備している。
学習者用デジタル教科書の活用により「主体的・対話的で深い学び」が実現しやすくなっている。特にアニメーションが仕組まれている図には興味津々で取り組んでいる。考えを保存してそれをすぐに共有でき、対話の量が増えることで、新たな考えの創出に挑戦することもでき、深い学びにつながっていく。
教員のスキルやインターネット上の危険性と限界の認識、回線の不具合時の対応などについては、今後の課題。1人1台情報端末と学習者用デジタル教科書の良さを活かせるように取り組んでいきたい。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2022年2月7日号掲載