創価大学の通信教育部は1976年に設置。現在は経済学部、法学部、教育学部、文学部の4学部を擁し、約6700名の学生が学ぶ。学生の年齢層は20代から90代までと幅広く、50代と60代がボリュームゾーンだ。居住地も関東・東京を中心に全国に及び、海外在住の学生もいる。
2014年頃までは、郵送や集合授業といった従来型のアナログな学修環境での通信教育が行われていた。
その後、受講者の経済的および時間的な負担の軽減を目指し、学修環境のICT化を進めた。
当初の計画では、23年度にオンライン授業のライブ配信や、本人認証システムを実装した上でWeb試験の全面実施を目指していた。しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、計画を前倒し。一気に進めることとなった。
新型コロナ感染が拡大中の20年4月、導入しているLMS(=Learning Management System学習管理システム)運用会社と検討し、同年5月からシステム開発をスタート。現在、以前は会場で行っていた試験を、本人認証システムを備えたWeb試験に切り替えるとともに、授業が始まる前やレポート提出時も、本人認証の仕組みを実装させた。夏と秋に行っていた対面によるスクーリングは、Zoomで実施するようにし、完全オンライン化している。
同学では試験開始時の本人確認を「顔認証」、試験中の本人確認を「顔確認」と呼んでおり、この2つの仕組みを実装した。
学生は受験時、自分が使っているPC、タブレット、スマートフォン等のカメラで顔を撮影して外部のAPI(=Application Programming Interface)の顔認証システムに送信。事前に登録してある顔写真との一致率をAIが算出し、クリアして初めて試験を開始できる。
一致率の設定は、おおよそ90~95%だ。設定基準値より低い場合、学生は受験開始のボタンを押すことができない。
試験中も随時、「顔確認」によって本人確認を実施。「顔確認」の頻度はサーバの負荷を踏まえながら定期的に実施している。
課題は、Webベースで試験を実施しているため、学生側のIT環境に依存せざるをえない点だ。その対応として、サーバ上に定期的に学生の答案データをバックアップし、不具合があればバックアップされた答案を使用することにしている。さらに、学生側におけるバックアップ機能の追加を計画中だ。
学生へのサポート体制も強化している。マニュアルの配布やガイダンス映像の配信を行うとともに、PC操作に関するコールセンターを設置した。
小澤潤副部長(通信教育部)は、「本年度については、ほぼ問題なく運用できています。これで本格的オンライン化への基盤は整ったのではないかと思っています。幅広い年代の学生が在籍していることもあり、なかにはオンライン化への対応が苦手な学生や教職員もおりますが、コロナ禍という事態のなか、皆がやらなければいけないという意識に立って進めることができた意義は大きかったです」と話した。
(蓬田修一)
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2022年2月7日号掲載