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教育ICT

1人1台端末で個別最適な学びを促す学習環境に 31人同時にオンライン英会話~守谷市立守谷中学校

2022年1月5日

茨城県守谷市教育委員会(小学校9校・中学校4校)はGIGAスクール構想により1人1台の情報端末を配備しており、早々に様々な活用を行っている。今年度10月からは全中学校(4校)で、マンツーマンの英会話を導入した。12月2日、守谷中学校(小池義寿校長)2年2組の授業を取材した。授業者は中井ひとみ教諭とALTのダンテ・ハスキー氏。

事前に全員で自己紹介のやりとり等を発音してウォーミングアップ

様々な国の英語に触れる

熱心に耳を傾け、笑顔で質問する講師と1対1で25分間会話する

中井教諭は、ビッグボイス、スマイル、エンジョイ、と生徒に声をかけ、オンライン英会話が始まった。

生徒は各自、イヤホンをつけて自分の端末の音声を確認し、DMM英会話サイトにログイン。画面にはこの日、自分の担当となる英語講師の写真とプロフィールが現れ、それぞれの講師がレッスンページに入室するのを待った。この数分間に、講師のプロフィールを確認している生徒もいる。

講師が入室すると、互いの自己紹介だ。「マニラ在住・29歳で普段はレストラン勤務」の講師は「ようこそ僕のクラスへ!」とイラスト付きメッセージボード画像をチャットに提示。音楽が好き、と伝えた生徒は講師に「どんなジャンルの音楽が好き?」と質問され、「ロック!」と回答。すると講師は、自分の知っているロックミュージシャンを伝える等、双方向のやりとりが続いていった。

事前にまとめた資料を提示して講師に説明。右のチャット欄でも画像や英語でテキストをやりとりできる

生徒は、画面の向こうで熱心に耳を傾けている講師に伝わるように語りかけ、講師の質問を懸命に聞き取ろうとしている。画面上のチャットに、質問内容を英語で書き込んで補足している講師もいる。困ったときには、手を挙げて教室内の教員を呼んだ。生徒の個別の質問には、授業者とALT2人で対応。ICT支援員も情報端末の活用をサポートした。

■アクティビティでオンライン英会話

自己紹介の後は、この日のテーマ「守谷市の紹介」だ。生徒は事前にまとめた守谷市の景色や施設等を写真を見せながら説明。それを聞いた講師は「どのレストランが一番好き?」「どんなメニューがあるの?」「蟹は日本では高価?」等、各自の紹介に沿った内容で質問した。

これは、教科書「NEW HORIZON」の「This is my town」のアクティビティとパフォーマンス評価としての位置づけだ。「NEW HORIZON」では、Unitの学習内容をもとに自己表現を行う「Stage Activity」が学年につき3つ用意されており、ここにオンライン英会話を取り入れた。

25分間の英会話を終えた後、生徒はGoogleフォームに振り返りを記入した。

■教科書の学びが会話に活きる

この日のオンライン英会話は3回目。ショッピングモールについて紹介した尾形春香さんは「ジャマイカのチーズケーキの種類が多くて驚いた。初回は伝えるのに緊張し、聞き取ることも難しかったが、だんだん聞き取れたり、答えられたりするようになり、もっと話せるようになりたい、と思うようになった」、守谷市の「四季の里公園」を紹介した小倉優彩さんは「おすすめの季節や好きな花を質問された。オンライン英会話は、学校で学んでいない表現方法も分かる。話す機会が増えて記憶に残る」と話す。また、守谷市のたこ焼き屋を紹介した齋藤理広さんは「フィリピンにもたこ焼きがあるそうで、たこ焼きが乗ったサラダの写真を見せてくれた。箸を使わないこともわかった。一生懸命聞いてくれるので、頑張って伝えようと思う。教科書で学んだ内容を会話に活かせる。自分の言葉で伝えられることが増え、成長を感じている」と手応えを語った。

■回を追うごとに質問が具体的に

授業者の中井教諭は「生徒に合わせた内容を各講師が提供しており、教えることに慣れていると感じる。生徒には、自分の気持ちを自分の言葉で伝えることを意識するように伝えている。プレゼンテーションの資料作成や質問を考える時間は、毎時間冒頭に10分程度設けた。事前に、クラス内で説明内容をプレゼンテーションし、質問し合った」と話す。

ALTのハスキー氏はマンツーマンの英会話について「様々な国の人の英語に接することができ、初対面の人と双方向のやりとりができる貴重な機会。回を追うごとに生徒の質問が具体的になっている。オンラインレッスン中にリアルタイムで個別に対応でき、実践的なコミュニケーション能力を身に付けることができると感じる」と話した。

DMM英会話には世界120か国・1万名以上の多国籍な講師が在籍し、24時間レッスンが可能。講師の合格率は約5%と質の高さを誇っている。現在、私学を中心に高等学校や大学で導入されている。

個別最適な学びに対応した環境に

小池義寿校長

守谷市では将来国際社会で活躍できる人材育成を目指しており、中学校にはALTが複数配置されている。また、情報端末は2015年度から3人につき1台で配備しており、スムーズに1人1台活用につながっている。

オンライン英会話は25分間で、その間は集中して発話でき、かつ相手の質問に柔軟に対応するという濃密な時間を提供できる点が大きなメリット。伝わったとき、聞き取れたとき、自然なやりとりができたときの喜びは大きい。個別最適な学びに対応した環境配備がさらに進んだと感じている。

英語学習の最高の形を提供
守谷市教育委員会 町田香教育長

町田香教育長

守谷市教育委員会の町田香教育長に、守谷市の英語教育とオンライン英会話導入の経緯及び成果、今後の予定について聞いた。

■オンライン英会話 導入の理由

英語の「話す・聞く」力は極めて重要と考え、守谷市では、2001年度より市内全小中学校にALT1名、2020年度には大規模校と中学校には2名を配置。2011年度には小学校1年生から英語の授業を開始している。また、英語のみで過ごすEnglishDayを週1回設定しており、放課後にALTとフリートークするEnglishサロンやEnglishフォーラム、Englishキャンプに取り組んでいる。

コロナ禍で、児童生徒が登校できなかった期間には、ALTによるオンライン授業も行った。さらに新しい取組として、守谷市と合同会社DMM.comと包括連携協力に関する協定を締結。これを踏まえ、経済産業省「EdTech導入補助金」により、全小中学校でDMM英会話に取り組んだところ、子供のモチベーションが一層向上。保護者からは「ぜひ次年度も継続してほしい」という強い要望があり、今年度予算化した。

■今年度の取組と今後の予定

今年度は中学校2年生で10月より10回の英会話講座を授業に組み込んだ形で実施。1校に数人のALTが常駐していたとしても、全員が英語を使ったやりとりすることには限界があるが、オンライン英会話により、通常の授業時間内で同時に3131通りのやりとりが可能になった。回を重ねるごとに生徒のモチベーションも明らかに向上し、会話量も増えたことから、次年度は中学校全学年で行う予定。英語学習の最高の形を子供たちに提供したいと考えている。

■通信速度は各校1Gbps

現在、本市ではインターネットブレイクアウトで各校が直接、DMM英会話サイトにログインしている。

双方向のやりとりで必要な速度を1端末あたり35Mbpsとすると、35人同時にログインした場合は計算上、100175Mbps必要になる。本市では現在、各校につき1Gbpsで接続しており、双方向のオンライン英会話も問題なく接続している。来年度は情報端末活用がさらに進むことを考え、2Gbpsに増強する予定である。

端末持ち帰りについては次年度、セキュリティの仕組みを強化した後に取り組む。

DMM英会話では学校・教育委員会向けに無料トライアルレッスンを提供している。要問合せ。

 

教育家庭新聞 新春特別号 2022年1月1日号掲載

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