第47回全日本教育工学研究協議会全国大会・大阪大会が11月19・20日にオンラインで開催された。完全オンラインでの実施は今回が初。｢ICT活用を通した未来につなげる新しい学習スタイル｣をテーマに、学校情報化先進校の表彰、文部科学省の基調講演、JAET学校情報化認定事業｢先進地域｣のうち3自治体のパネル討議、大阪市内の小中高等学校のオンデマンドによる公開授業とオンラインによる研究協議、1人1台端末活用に対応した多数の研究発表が行われた。主催は日本教育工学協会(JAET)。
開催地である大阪府教育庁の柴浩司教育監は｢本年9月、府立高等学校の情報端末配備を完了し、3年間のアクションプランも示した。本大会の成果が一層の発展につながることを期待している｣とあいさつ。大阪市教育委員会の山本晋次教育長は、水の都として発展した大阪市の市章である水路の標識｢みおつくし(澪標)｣に例え｢大阪市のICT教育の取組の一端が本日、公開される。本大会が教育情報化のみおつくしとなることを期待している｣と述べた。
文部科学省・板倉寛氏(学びの先端技術活用推進室長・学校デジタル化プロジェクトリーダー)は｢配備されたICTの利活用を根付かせるためにも活用事例の共有は不可欠。情報発信・共有の積み重ねが全国的な推進や学びの保障につながる｣と述べ、続く基調講演で、文部科学省の支援の1つ｢StuDX Style｣について説明。｢8名の教員が地域別・OS別に担当し、担当地域の教育委員会と協働して取組の自走を支援している。事例は、初歩的なものから発展的なものまで広く収集、掲載している。同じツールでも設定や指導の工夫でできることが変わる。ICT活用の特性や強味を意識して学習に取り入れること、探究のプロセスをICTでさらに広げることが重要。3月に公表した『学校における先端技術活用ガイドブック第1版』も参照し、GIGA端末活用の先にある教育データの蓄積や可視化、活用のイメージをもってほしい｣と話した。
現在、16地域が｢学校情報化先進地域｣として認定されている。学校情報化先進地域として認定されるためには、所管学校の8割の｢優良校｣認定が必要だ。パネル討議では、学校情報化先進地域に認定された青森県六ヶ所村、滋賀県草津市、福岡県うきは市が登壇した。コーディネータは豊田充崇教授(和歌山大学)。
豊田教授は｢GIGA配備の活用が4月からスタートを切り、約半年で、自治体間の温度差が浮き彫りになりつつある｣と指摘。3地域は、GIGAスクール構想による端末活用開始の工夫や支援を報告した。
木村智氏(学務課指導グループ)は｢まずはやってみる、すると手応えは必ず出てくる。その旗振り役が教育委員会である｣と話す。
六ケ所村教育委員会(小学校4校・中学校4校)は2009年度に電子黒板、2014年度に実物投影機の配備を開始した。このときの堀田龍也教授(東北大学大学院)の講演が大きなきっかけとなり、2019年度に｢六ヶ所村学校教育情報化推進計画｣を策定。同年、先進地域に認定された。
2020年、小学校1~4年生に情報端末(iPad・一部LTE版)を配備して無線LAN環境を増強。2021年度に統合型校務支援システム、授業支援システムを導入しデジタルドリルシステムも更新。
文部科学省ICT活用教育アドバイザー事業にも応募。講師に菅原弘一氏(仙台市立錦ケ丘小学校・関連9面)を依頼して校長・教職員向けに講演を行い、情報活用能力を学習の基盤とした資質・能力の育成の重要性や学力との関係について周知を図った。様々な情報提供も受け、各種マニュアル(教育情報セキュリティポリシー、タブレット端末持ち帰りマニュアル等)も作成した。
現在、｢情報化推進会議｣は年3回、ICT例会は毎月実施している。
2021年度から各校で取り組んでいるのは、タイピングスキルの向上、情報活用能力の育成、クラウドを活用した授業改善など。次年度はWindowsPCの更新があり、MDMですべての端末を管理できる運用としたい。
