中央大学は、(一財)オープンバッジ・ネットワークとともに、デジタル証明書「オープンバッジ」の共同実証実験を行っている(実施期間=2021年6月~22年5月)。
オープンバッジとは、簡単にいうと、個人が持っているスキルのデジタル証明書だ。スキルの証明がバッジのデザインで表現されている。
国際標準化団体IMS Global Learning Consortiumが設定した国際技術標準規格であり、近年、ビジネスの世界だけでなく、大学での能力や活動を証明するものとして、欧米で普及が進んでいる。
取得したオープンバッジは、電子履歴書、SNS、メールなどに貼ることで、持っているスキルを証明できる。
中央大学とともに実証実験を進めている(一財)オープンバッジ・ネットワークは、日本およびアジア地域において、信頼性の高いオープンバッジの流通を実現させるため、バッジ発行者の質保証を行っている団体だ。
これまでも、スキルをデジタルで証明する仕組みはあった。しかし、例えばAが発行するデジタル証明書は、A専用のサイトでしか内容証明できず、互換性がなかった。
一方、オープンバッジは、発行者に依存することなく、認証用サイトでスキルの内容が証明できるのがメリットの1つだ。
さらに、オープンバッジ取得者にとっては、異なる団体が発行したバッジでも、自分専用のウォレットにためて管理できるので、取得したオープンバッジを一覧できるなど使い勝手がよい。
今回の実証実験では、中央大学が開講している学部間共通科目の「AI・データサイエンス全学プログラム」と「ファカルティリンケージ・プログラム」において、カリキュラムを修了した学生にオープンバッジを発行する。
「AI・データサイエンス全学プログラム」は、2021年から開講しており、文科系、理科系を問わず、全学部生を対象として、AI・データサイエンス分野をリテラシーから応用基礎レベルまで系統的に学べる。
「ファカルティリンケージ・プログラム」は、各学部の授業科目を有機的にリンクさせ、新たな知的関心の領域に対応する教育の「場」を設定するプログラムとして、2003年から始まった。「環境・社会・ガバナンス」「ジャーナリズム」「国際協力」「スポーツ・健康科学」「地域・公共マネジメント」の5プログラムを開設している。
「これら2つのプログラムでは修了者に修了証を発行している。そこで実証実験で従来の紙の修了証に代えてオープンバッジを発行し、受領者の意見や利用状況などを調査して、オープンバッジの効果を検証していこうと考えています」(中央大学 全学連携教育機構事務室)
オープンバッジは「金」「銀」「銅」の3つを発行する予定だ。「実証実験期間中ですので、確定ではありませんが、それぞれ、次のようなイメージを考えています。『金』は学長または理事長が発行する証明書や表彰状など、『銀』は各機関(学部やセンター、機構等)で発行する修了証や表彰状、会員証など、『銅』は科目担当責任者などといった各種責任者が発行する努力賞や参加証などです」(同事務室)
オープンバッジの今後の有用性について、同事務室は「ビジネスマンの転職市場や大学生を中心とした新卒就職市場において、履歴書そのものがデジタル化される可能性が高い中、自身のスキルを示すためのオープンバッジは有効なツールとして機能する可能性が高いと見ています」と話した。
(蓬田修一)
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2021年11月1日号掲載