年末になると、各校の最終学年では卒業アルバム制作準備が加速する。卒業アルバムの写真選定では、子供が写真に映っている回数の公平性を確保することが求められる。これをAIの顔認識機能で効率化したのが、柏市立手賀西小学校だ。本取組は文部科学省「全国の学校における働き方改革事例集」で、事例の1つとして掲載されている。2020年度、6年生担任で卒業アルバム作成を担当し、本仕組みを導入した東條正興教諭に聞いた。
「6年生の担任にとって卒業アルバムの制作は重要です。通常は保護者と教員が、掲載候補の写真フォルダから選択し、プリントアウトして、それぞれの児童が何回写っているのかを名簿上に正の字でカウントして掲載写真を選びます。卒業対策委員は複数回の来校が必要で、教員も複数回チェックしなければなりません。これには膨大な時間と手間がかかっていました。しかしスマートフォンやPCでは顔認証の仕組みが一気に身近になっています。この仕組みを活かした卒業アルバム制作の方法があるのではないか、と考えて調べました」
このとき出会ったのが、顔認識AI搭載の卒業アルバム業務効率化システム「アルバムスクラム」(エグゼック)だ。
「候補写真が入ったフォルダをシステムにアップロードするだけで、それぞれの子供の掲載数が自動でカウントされ、誰が多く映っていて誰が少ないのかが一目瞭然でした。換算表もクラウドで共有し、分担や調整がしやすくなりました。また、予想以上にAIの顔認識機能が高性能で、以前は1年生の時の写真が誰なのかがわからないこともありましたが、見事に認識していました」
「『アルバムスクラム』は、オンラインでできる点もメリットでした。コロナ禍もあり、学校に集まることも難しい時期で、掲載すべき写真も通常より少ないなど例年と異なる条件が複数ありましたが、写真館、学校、卒業対策委員が共有してオンラインで都合の良い時間に作業するという時勢にあった運営につながりました。学校にとっても保護者にとっても業務負担軽減が実現でき、保護者からも『助かった』と言われました。初めての取組でしたが、係る業務が半減くらいの手間で進めることができたように思います」
児童の登場回数の公平性も、データがあるため、自信をもって担保できたという。
「何よりうれしいのは、夢中になってアルバムを見る子供たちの様子を見ることができたことです。1年生からの思い出が集まったアルバムを自分のものとして受け取れる、そんな写真を選ぶことができ、皆が満足できるアルバムが制作できたと感じています」
同校では今年度も「アルバムスクラム」の仕組みで卒業アルバム制作に取り組む予定で、個人情報保護に対する保護者の理解も得、既に制作業務に入っているという。
「アルバムスクラム」を導入している写真館は、昨年度末の時点で約100館。約300校が本システムを活用した。今年度は約250館が導入しており、昨年度以上に多くの学校で本仕組みが活用される見込みだ。
さらに昨年度のユーザニーズに対応して、バージョンアップ。これまで、出力したレイアウト原稿に手書きで行っていた校正の指示がオンラインでもできるようになった。写真やトリミングの変更指示、写真の配置変更・削除、コメント挿入ができる。コロナ禍で継続的に「密を避ける」状況が続く中、非接触・非対面で効率的なアルバム制作が可能だ。
TEL:03-6431-8071(平日11:00~18:30)
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2021年11月1日号掲載