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教育ICT

文部科学省2022年度概算要求~GIGAスクール構想を加速

2021年10月6日

文部科学省は2022年度概算要求を公表した。日本の未来を拓く4つの原動力「子供のための環境、デジタル、活力ある地方創り、グリーン」に取り組む。

■全小中学校に学習者用デジタル教科書

2021年度に約22億円の予算で全国の約4割の学校に配備された学習者用デジタル教科書(デジタル教材含む。以下、学習者用デジタル教科書)。次年度は57億円とさらに増額し、すべての小中学校に1教科分のデジタル教科書を配備できるようにする。

原則小学校高学年と中学校全学年だが、重点校等については他学年も可。特に効果が見込める特別な配慮が必要な児童生徒(特別支援学校小学部・中学部及び学級)にはすべて配備する。

複数教科の学習者用デジタル教科書を配備している実証研究も2021年度から引き続き継続。全国でアンケート調査も行う。将来的な活用のあり方についてデジタル教材や学力テストとの連携も図る。

同様に、学習者用デジタル教科書のクラウド配信等の設計に関する検証も継続。通信環境に加え、必要な機能の実装を進める。

新規で、学習者用デジタル教科書を活用した教員の指導力向上事業を実施(6千万円)。大学・教育委員会等6団体(全体統括は民間企業1)に委託する。

デジタル化を見越した教科書検定・採択・供給制度に関する見直しを進めるための調査・設計も実施(7100万円)

◇  ◇

学習者用デジタル教科書について、文科省予算に加えて設置者予算で全校配備している教育委員会もある。

一方で、学習者用デジタル教科書を教員の「提示用」として指導者用デジタル教科書のように活用している例も多いようだ。学習者用デジタル教科書は、1人ひとりの子供が自分のペースで学ぶためのもの。特別支援教育ではそのように活用しているはずだ。今後、教員研修等により、本来の目的である活用が広く進むことが期待されている。

学習者用デジタル教科書では、教科書会社により複数のビューアが存在し、ログイン方法やユーザ登録方法が微妙に異なることが使い勝手を阻害しているという指摘もある。これについては現在、文科省会議で検討中。早晩統一化が図られることが予想される。

■学テCBT化を試行 約5万人の児童生徒で

2021年度、約300校で実証を進めてきたCBTシステム(MEXCBT:メクビット)について、2022年度は、希望する全国の小中高等学校等で活用できるようになる見込み。

次年度は、これまでの検証結果を踏まえて利便性を向上。今後の全国学力学習状況調査等のCBT化等を見据え、機能改善等や大学等での活用検証も実施。

なお本事業は2025年度まで継続する(10億円)

20246年度からの全国学力・学習状況調査のCBT化に向け、自治体20程度・500校程度・児童生徒約5万人で試行。ネットワーク環境やサーバ負荷等、採点・集計、結果返却等について検証し、CBT化を着実に実現できるようにする(6億円)

さらに新規で、教育データの公開・管理、研究成果の集約・共有を一元的に行うプラットフォームの設計・開発及び運用を進め「公教育データ・プラットフォーム(仮称)」を構築する(教育データサイエンス推進事業・4億円)

国保有データ等を利活用した分析・研究(1千万円×4テーマ)も進める。

GIGAスクール運営 支援センター構築を補助

新規でGIGAスクール運営支援センターを整備(64億円)。これまでの「人」中心の支援から「組織」中心の支援体制とする。

家庭への持ち帰り時における故障等を始めとする運用支援も含め、各自治体が自立してICT活用を進めるための運営支援体制を構築。設置者の単独実施、連携実施いずれも可。補助割合1/2

ICT活用教育アドバイザーやGIGA StuDX推進チームにより助言・支援も継続・拡充。

■校務系・学習系ネットワークの連携を検証

学校ネットワークの今後の在り方に関する実証研究も継続・拡充。3地域で行っているSINETの初等中等教育段階への本格開放に向けた技術的な実証を継続(3200万円)

新規で、校務系・学習系ネットワークの連携に関する実証研究事業を実施(12500万円)2地域で、クラウド化やアクセス制限、認証などの技術的対策等に関する実証研究を行い、校務の効率化に資するネットワーク構成を整理する。

BYODを検証

高等学校等における多様なICT端末の活用に関する実証研究事業を新規で実施(4000万円)3地域(1地域あたり1)で多様な端末を校内ネットワークに接続する際のネットワーク構成とセキュリティ対策のモデル例や、多様な端末の使用に伴い発生する課題への対応方策・効果的な活用方策等について実証を進める。

先端技術及び教育データ利活用に関する実証・検証(14000万円)は継続。学校現場で活用し得る最新の技術動向(画像分析等)を把握・整理する教育データ利活用について小学校、中学校、高等学校等7か所で実証する。

■教員研修を充実

各種研修の仕組みを充実。新規で教員の研修履歴管理システムを構築(112万円)。教員1人ひとりに即した、「個別最適な学び」を保証するための3つの仕組み(学習コンテンツの質保証を行う仕組み、学習コンテンツを集約し適切に整理・提供するプラットフォームのような仕組み、個別のテーマを体系的に学んだことを証明する仕組み)を提供。研修動画の内容・質の保証、Learning Analytics(学習分析)と研修受講履歴管理システムとの互換性について、全国的な質保証に向けた体系的な教員個別の学びに関する証明等の調査研究を行う。

同時に外部人材獲得のため、研修動画プログラムの開発や教員の働き方に合わせた研修充実のための短時間動画プログラムも開発。将来的に機能の一部とする。慢性的な教員不足の解消手段の1つとしても期待。

新任校長のためのオンライン集合ハイブリッド研修も開発(2千万円)。講義形式のライブ配信を4月に実施。年度末には新任校長フォーラムで実際に研修を行った教委の発表を、ライブ配信する。教委が受託する研修は6月、9月、12月の3回を予定。

■特別支援教育をICTで支援

ICTを活用した障害のある児童生徒等に対する指導の充実を拡充(14200万円)

高等学校段階の病気療養中等の生徒に対するICTを活用した遠隔教育の調査研究事業、ICTを活用した職業教育の指導法開発、ICTを活用した自立活動の調査研究を実施。

新規で教科書デジタルデータと関連するデジタル教材を開発・活用。

■高等学校改革推進へ

新規で、新時代に対応した高等学校改革推進事業を3点行う(8億円)

「普通科改革支援事業」として、2022年度から設置が可能となる学際領域学科及び地域社会学科の設置を予定している学校の取組を推進。50(1校あたり880万円)を予定。

「創造的教育方法実践プログラム」として、遠隔・オンライン教育等を活用した新たな教育方法を用いたカリキュラム開発等のモデル事業を30か所(1校あたり1100万円)で実施。

「高校コーディネーター全国プラットフォーム構築事業」として、新学科における学びや教科等横断的な学びを実現するための「コーディネーター」育成と活用を支援。コーディネーターが持続的効果的に活躍できるようにする。1団体に委託(2千万円)

■専門高校を支援

産業界と一体となった専門高校の職業人材育成のため「マイスター・ハイスクール」を指定。

マイスター・ハイスクールCEOを企業等から採用し学校の管理職としてマネジメント。企業等の技術者・研究者等を教員として採用する。

企業等での授業・実習を多数実施し、専攻科設置や高専化、大学連携等の一貫教育課程導入等の抜本的な改革を図るため、新規15箇所(継続12箇所)3年間指定する(1300万円)

新規で、スマート専門高校等、最新のデジタル化に対応した産業教育施設・設備を活用した実践モデルを創出。デジタル教材や指導の手引きを開発してアーカイブ化を図る(3年・1か所・9800万円)

■国立高等専門学校を最先端環境に高度化

国立高等専門学校(高専)60周年を迎えるにあたり、Society50を先導できるよう高度化・国際化。

高専発!Society50型未来技術人財」育成事業では、これまでの介護・医工、防災・防疫等に加え、農水、エネルギー・環境分野の拠点整備を拡大。設計から製品化までデジタルで完結するものづくり教育への対応と起業家教育、情報セキュリティ、航空技術者、海洋に係る人材を育成する。

特に高度な設備を拠点校に導入してデジタル技術などを最大限に活用。

機能の高度化に資する先端設備の整備を進める。

■高等学校の多様性 対応に関する調査

全日制・定時制・通信制課程において、「高校生のための学びの基礎診断」等を活用した高等学校教育におけるPDCAサイクルを確立するための調査研究を実施(1か所・年間600万円・1)

多様な高等学校制度で多様な生徒に応じて卒業後の進路を見据えた学習プログラムモデルを検討。多様な学習ニーズに応じてICTを効果的に活用した指導・評価方法等を実証(6か所・年間450万円・原則3)

広域通信制高校のサテライト施設等の質担保のための都道府県間プラットフォームを構築・運営(2か所・年間700万円/1200万円・1)

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2021年10月4日号掲載

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