東京通信大学は2022年4月から「データサイエンス・社会調査コース」を新設する。
ITを活用した調査や分析で得られた情報をエビデンスにして、企業・組織の戦略や製品・サービスのマーケティングに寄与できる人材を育成していく。
同学はオンライン完結型の大学で、スマートフォンやPCの講義だけで卒業できる。設置している学部は「情報マネジメント学部」と「人間福祉学部」の2学部。
講義は約15分単位で構成され、仕事やプライベートで忙しい社会人でも学びやすい。在籍学生数は10代から80代まで、4000名を超える(2021年5月現在)。20~40代が最も多く、フルタイムで働く社会人が8割以上を占める。
新設される「データサイエンス・社会調査コース」は、情報マネジメント学部に設置される。
同コースでは、ITの専門知識やスキルに加え、社会とともに変貌する企業経営や市場の仕組み、様々な集団の意識や行動を把握する社会調査や市場リサーチ、AIも活用したビッグデータの分析手法などを学習する。「今、企業が最も必要としているのはDXを推進できる人材です。デジタルツールを単に効率追求のために活用するのではなく、ITをベースにこれまでにない新しい製品やサービス、ビジネスモデルを展開し、社会にイノベーションを起こすことが求められているのです。それには、ITに関する知識やプログラミング技術、経営の知識だけでなく、社会調査や市場リサーチ、AIを活用したビッグデータの分析など、調査・分析で得られた情報を戦略策定やマーケティングに活かすことができる専門的なスキルが必須です」(東京通信大学 入学相談室)
特徴的な科目は、デザイン思考概論、ソーシャルネットワーク論、社会情報処理、質的調査、ビジネスデータ分析、社会統計学、社会調査演習、データサイエンス演習、人工知能概論、オープンデータ基礎論、計量テキスト分析など。
学生はこれらの専門教育科目だけでなく「情報システム」「プログラミング」や「経営」などの分野も幅広く学習し、知識を深めることができる。
オンライン大学の特長は、時間、場所、費用面の制約を取り除き、学びたい人が学べる環境を作れる点にある。
しかしその一方で、通学制大学より退学率が高いことが一般的にいわれている。
受講する場所や時間に捉われないということは、学生自身で学習のための自己管理、時間管理をし、学習計画を立てる必要がある。
特に社会人は、本業と大学の勉強をうまく両立させなければ、学習のための管理が負担となってしまうこともある。
そのような中、東京通信大学は約9割(89・4%、21年4月時点)の学習継続率を維持している。その理由について、同大学入学相談室では次のように話す。
「本学では、入学時に細やかなオリエンテーションを実施し、学期ごとの授業計画例をコース別に示しています。それに加えて、アカデミック・アドバイザーと呼ばれる教員が、学生が目標に到達するための指導を行っています」
学生の学習データが活用できるのも、オンライン大学のメリットだ。
同学入学相談室は「蓄積した学習履歴を分析・研究し、さらにAIなどの技術と結び付けることで、学生1人ひとりの学習能力や学習スタイルに合わせたオーダーメイドの学習環境を実現していくことも、オンライン大学の将来として、十分可能だと考えています」と、オンライン大学の可能性について語る。なお、同大学人間福祉学部でも、22年4月から「総合人間コース」を新たに設置する予定だ。
(蓬田修一)
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2021年9月6日号掲載