1977年の学習指導要領の改訂は「ゆとり教育」と呼ばれ、良かったという人もいれば、学習量が減ったという指摘もある。良し悪しの論説ではなく、どんな点が良く、どんな点が良くなかったのかについて、データを用いて明確にすることが重要である。
例えば米国ジョージアステイト大学では、数学と国語において、対面授業とオンライン授業、一部オンライン授業での理解度を分析している。データによると、初等段階ではリーディングにおいて対面の方が明らかに良く、数学についても若干良い。年齢が上がると、オンラインの方が良いというデータを示した。
このような分析は、日本であまり見ない。
これが容易にできるのはID管理が行き届いている面が大きい。原則州単位であり、全米ではできていないようだが、5000万人単位でできる点が日本と異なる。日本国中でさっとデータを比較できる仕組みが必要なのではないか。
マイナンバーを始めとしてID管理は、日本に浸透していないが、例えばコロナ禍において学習の達成度や学習状態の把握のためには柔軟にデータを利用できるように整備していかなければならない。
教育現場からは、学術情報ネットワークSINET接続の要望が届いている。NIIでは来年4月からSINET6を提供予定で、それに加えて安全なデータ基盤を構築。教育データも含め、データを安全に管理・分析できる体制を支援する。
京都市立西京高等学校附属中学校では生徒1人1台端末を導入し、授業や家庭学習で活用している。
教育データの利活用と、授業と家庭学習のつながりがキーワードだ。
資質能力ベースで目標を見直し、協働的な学びを通して主体的対話的な学びを模索。中高通じて個別最適な学びと授業改善に取り組んでおり、可能なかぎり課題の紙提示をやめ、Moodle上で課題を提示している。
数学ではBookRollで課題を配信。問題は30~40問程度。1ページ1問にすることで、教員は、問題ごとの教材閲覧平均時間を確認でき、課題に取り組めていない生徒をリアルタイムに把握でき、夏休み中であっても不調な生徒に声がけができる。
課題の達成状況は、夏休み明けの問題作成に利用。
BookRollの平均解答時間からテスト問題の平均点を予測して出題でき、経験の浅い教員でも適切な問題を作成できる。
数学では毎週月曜日小テストを実施している。生徒はデジタルペンで問題をクリックし、数式問題などもペン入力で解答。テスト時間は7分間で、相互採点を3分間で行う。問題によってはストロークを分析。生徒自ら説明させることで理解を深めることができる。
教員は分析ツールで結果を閲覧。予測以下の生徒を抽出して補習している。
小テストの印刷配布・回収・保管・返却がデジタルに置換され、業務削減につながった。生徒も小テストを整理・保管でき、振り返って学び直しがしやすい。また、常に教員に見られている意識が生まれ、モチベーションにつながっている。
個別最適な学びにつながるまでは時間が必要。それまでは、業務改善や基礎学力向上に取り組んでいく。学びのデータは生徒と教員が共有することで、業務削減や学力向上につながる。
本校では数学科と英語科で、京都大学緒方研究室と連携して取り組んでいる。1人1台端末も配備済。
コミュニケーション英語に相当する問題演習(大学入試レベル)では、1時間目は長文教材に取り組み、2時間目に教員が解説している。この解説を、これまでは経験則で実施していた。そこでBookRollを活用。長文問題のテキストをアップし、生徒はわからないところに黄色いマーカー、重要であると考えたところに赤を引くようにした。
生徒がどこに黄色いマーカーを引いたのか、どの部分が多いのかについて事前に教員が確認でき、適切な解説を行うことができる。
辞書機能を統合しており、言葉の意味が分からない生徒は辞書を引くことができる。その履歴も残る。
端末を使うのが面倒という生徒でも辞書をオンラインで引くことができる点はメリットと感じている。
英語の「多読」は自立して学習を進める必要がある。本校ではオンラインで600冊読み放題の仕組みを導入しており、これを「何ページを何分で読む」等の目的を個人で設定できるツール「ゴールシステム」を利用して行った。読んだ速さ、調べた語句も自動で記録され、目標の達成度すぐにわかり次の目標をたてやすい。自分の学習ログを用いることで効果的な多読につながった
ゴールシステムを学習時間や単語学習などで定期的に活用するようにしている。
アクティブリーディング(英文を速く深く読む)の授業では、グループフォーメーション機能も利用。
これは、事前に成績情報を入力しておくことで教員のかわりにグループを作成するツール。グループ間での差を均質化することができる。
授業では、1時間目のテスト結果に基づいてグループを作成。グループごとに同じ英文を読んでいる。