2021年5月に発足した一社・エビデンス駆動型教育研究協議会(EDE・代表理事=緒方広明・京都大学学術情報メディアセンター教授)は8月11日、キックオフイベントをオンラインで開催した。EDEではエビデンス駆動型教育を実現するため「LEAFシステム」等の開発や実証に取り組んでいる。京都大学でデータ駆動型教育を実現するための仕組みやツールの開発に取り組んでいる緒方広明教授はEDE発足の狙いを説明。「LEAFシステム」等を活用した各校は、その進捗や目的について報告した。
▼オンラインシンポ資料・動画=https://www.ederc.jp/events/kickoff-symposium
京都大学でデータ駆動型教育を実現するための仕組みやツールの開発に取り組んでいる緒方広明教授は、「学習者用デジタル教科書の導入をきっかけにデータ活用が可能になる。これにより、教育を抜本的に変えることができると考えている。これまでの教育・研究・政策作りの方法を変える目的でEDE協議会を発足した」と話す。
科学的な分析により継続的に教育改善を行うこと、研究者は教育現場と協働し、データから研究テーマを探し、それについて研究、成果を役立てること。エビデンスに基づいて失敗しない政策づくりをし、政策の評価により次の政策を考えることを実現したいと考えている。
LEAF(Learning Evidence and Analytics Framework)システムとは、学習プラットフォームMoodle、学習管理システム(LMS)、デジタル教材配信システムBookRoll、学習ログ分析ツールを活用した授業設計の総称だ。MicrosoftやGoogleアカウントを使ってログインすることもできる。
データを収集・分析するための教育クラウド情報基盤がデジタル教材配信システム「BookRoll」だ。電子教科書、問題集、授業で使う資料やプリント等のPDF、画像、音声ファイル(mp3、m4a、wav)を教員がBookRollに登録すると、学生はブラウザで教材閲覧ができ、かつその学習ログを記録、教員が確認できる。
元の教材や音声ファイルをダウンロードできないので、ファイルがSNSなどで出回るのを防ぐ。
現在、世界241か国で約2億人の小学生から大学生まで世界中で利用されている学習管理システム。ブラウザ上で利用でき、iPhoneやAndroidの無料アプリもある。
学生への一斉連絡、個別メッセージの送信、ファイル共有、BookRollを使った教材配信、小テスト配信・採点、出欠管理、グループ討議などができる。
日本国内では、国立大学の6割弱、私立大学の4割弱、公立大学の3割弱が利用しているという調査結果がある。
サーバは京都大学内に設置。教育委員会や学校は無料でアカウントやコースを作成でき、学校や自宅からアクセスできる。
緒方教授は将来的に、国全体で共通項目を匿名化してデータを共有、教科書の次の改訂等に活かすことができればと考えている。
分析ツールも提供。書き込まれたメモの数やわからない箇所のマーカーの数、閲覧平均時間、閲覧達成率をページごとに表示、可視化する。
EDEの参加者を募集中。小中高等学校の教員は無料。本会提供の情報システムを使って会員と共同研究を実施することも可能。▼申込=https;//www.ederc.jp