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教育ICT

地方から海外大学へ~奨学金等も利用、情報収集は重要

2021年9月7日

海外の大学は入学時に測定される力が日本とは異なる–そう異口同音に答えた彼らの言葉が印象深い。コロナ禍である。海外大学進学・留学に逆風ともいえる中、アプリ活用・SNSを含めた情報収集・発信と行動力を武器に、これまでの海外留学の常識やイメージとは異なるアプローチでスタンフォード大学、ウェルズリー大学、ニューヨーク大学アブダビ校への合格を果たした3人の学生が、その経緯を報告。3人は、地理的・経済的困難を抱える海外大学受験生を無料でサポートする団体atelier basi(アトリエバシ)に第一期生として所属。今年はメンターとして受験生のサポートをしている。

海外大学を目指した理由

松本 杏奈
スタンフォード大学(徳島文理高等学校出身)
海外在住・留学経験なしで海外19校に出願、6校に合格。大学では機械工学を専攻。高校時代、国立情報学研究所グローバルサイエンスキャンパス、東京大学グローバルサイエンスキャンプほかに参加。そこで出会った仲間と高校生向け研究プログラムを立ち上げた。ツイッターフォロワー数4万6000。

■松本 高校2年の夏にアジアサイエンスキャンプに参加したところ、メンバー内でMIT(マサチューセッツ工科大学)など海外大学進学が自然に話題になる中、自分も努力すれば届くかもしれないと考えました。ここでは英文エッセイを大量に書く経験もしました。MITが芸術とITを融合して学ぶ大学であると知り、私もどちらも大好きで、両方できる大学があるんだ!と思いました。説明会を受けると、求められる学生像「イマジネーションが重要、リスクを顧みずに挑戦する」等に自分が適合している、と感じました。紙の試験が苦手で、力を発揮しにくいと感じており、授業では質問を大量にして、授業妨害と言われたこともあります。けれど海外では質問は大歓迎で、討論や行動力が重視されます。それならば私の力が発揮できる、と考えました。さらに継続して情報を収集し、スタンフォード大学で研究をしたい、と強く思うようになりました。

山野井咲耶
ニューヨーク大学アブダビ校(開智未来高等学校出身)
中学校3年でアイルランドに語学留学。高校時代、夏休み期間に計16か国を1人で周遊。国際ボランティアも経験し、受験ではその際感じたことをエッセイにまとめた。フィールドワークが大好き。受験をほぼスマートフォンで乗り切った。

■山野井 北関東の田舎の中高一貫校に通っており、私が初の海外大学進学です。出願はほぼすべてをスマートフォンで行い、それが難しい場合は親のPCを借りました。中学校3年の時、英語検定準1級に合格し、語学研修に行き、海外に興味を持ち、高校1年と2年の夏休みに11か国ペースで1人旅したことがきっかけです。UAEの人口の9割が外国人で、様々な文化が交錯している独特の雰囲気に触れ、この国で学びたいと感じました。帰国して「ドバイ 大学」と検索し、真っ先にヒットしたのがニューヨーク大学アブダビ校です。UAE政府から100%の出資を受けており、生徒の多くは返済不要の奨学金を受けています。奨学金には、授業料や寮費、生活費、医療費、日本への年間2往復分の航空券や年間約50万円のお小遣い、年間約50万円の大学内で自由に使えるお金、夏休み期間中のインターン・研究費約40万円が含まれます。さらにニューヨーク大学の世界中のキャンパスに2学期間留学ができ、日本の大学に進学するよりも金銭面を気にすることなく様々なことに挑戦できると考えました。

山邊  鈴
ウェルズリー大学(長崎県立諫早高等学校出身)
高校1年時、地域格差への問題意識から地元で学生団体を設立。高校2年時、インドに1年間留学。高校時代に投稿したnote記事「この割れ切った世界の片隅で」が注目を集め、現在も発信中。ツイッターフォロワー数約1万

■山邊 最初のきっかけは、中学校時代、県のプログラムでスイス・ジュネーブの国連を訪問したことです。

バランスの良い学力やひたむきな努力が求められる傾向が強い日本の大学は、合格が難しいと感じていました。そこで、自分が輝けること、例えば行動力や批判力、縁を活かす力など、得意なことを伸ばせる場所に行けばよい、自分を好きでいられる受験をしたいと考えました。

世界ランキングトップ校であれば奨学金が出るという財団の支援を受け(公財・柳井正財団)、今秋からボストンのウェルズリー大学に出発します。リベラルアーツ・カレッジの女子大学で、1クラス7~8人です。

マレーシアやヨーロッパには年間30~40万円程度の学費の大学もあり、そのような大学を選んで目指す仲間もいます。

合格のポイントは

情報収集は重要

■松本 スタンフォード大学から届いた合格理由には「つかめるチャンスをすべてつかんでいる、自分の経験を活かしてコミュニティに貢献している、研究プログラムを立ち上げて成果を出している」等が記載されていました。アジアサイエンスキャンプ終了後、すぐに東京大学グローバルサイエンスキャンパスに合格して参加。そこで出会った仲間と、高校生向け研究プログラム『海洋プラ問題を解決するのは君だ!~高校生×研究×社会問題解決プログラム~』を立ち上げ、国際会議にも参加しました。これは現在もNPO法人IHRPとして活動を継続しています。海外の大学は受験の際も在学中も、重視される力が日本とは異なると感じます。何をしたいと考え、これまで何をしてきたか、という点が評価されます。

■山野井 高校時代に16か国以上1人で周遊し、国際ボランティアも体験しました。エッセイにはこれらの経験で感じたことを盛り込むことができました。

情報収集は重要です。

海外大進学コミュニティatelier basiでは、出願要件のエッセイ等の添削を受けることができます。ここで似た境遇の海外大受験生や先輩に出会うことができた点も大きいです。ロールモデルとして励みにしました。

米国大学の多くは大学独自の返済不要の奨学金を支給していますが、留学生には、多くの大学がneed-aware(奨学金の申請により入試が不利になる制度)の奨学金制度を採用しています。留学生にneed-blind (奨学金申請の有無が入試結果に影響しない制度)を採用しているのはハーバード大学やMIT、ニューヨーク大学アブダビ校など約5校です。目指していたニューヨーク大学アブダビ校はSATACTの他、IBAP、日本の共通テスト結果も提出することができました。私はSATが基準に満たなかったので共通テストの結果を提出しました。

自分のPCで世界が広がった

■松本 私も寝ずに情報収集をし、日本にも留学経験なしで進学した人がいる、なら自分にもできるだろうと考え、ではそこにたどりつくためにどうすれば良いのか、「海外留学 無料」で検索して納得するまで何ページも調べました。様々な経験談の記事も励みになりました。

アジアサイエンスキャンプ参加をきっかけに自分のPCを持ち、世界が一気に広がりました。東京大学グローバルサイエンスキャンパスや国立情報学研究所グローバルサイエンスキャンプ「情報科学の達人」の参加や研究プロジェクトの立ち上げはPCがあったからできました。PC1台あるだけで、自分の世界が変わる高校生がたくさんいるのではないかと思います。高校生にPCは必要だと強く思います。

今は、せっかく行くのだから主席で卒業したい、と考えています。

新型コロナウイルス感染症の影響は

■山野井 コロナ禍以前であれば、アブダビ市に招待され、面接や模擬授業の受講、市内観光ができたのですが、今年はオンラインで開催されました。海外大学の他に国内の総合型入試と一般入試にも出願したため、夜中にオンラインで受ける模擬授業は大変でした。

■松本 受験については助かった面もあります。atelier basiは、新型コロナウイルス感染症の影響でスタートしたと聞いており、エッセイの書き方等のサポートを手厚く受けることができました。大学説明会もリモートで参加できるようになり、地方と首都圏の機会格差が縮小したと感じています。

英語力の壁を突破する

■松本 DuolingEnglishTest(DET)も大変助かりました。練習テストも受けることができ、TOEFLと比較すると短時間ですむため、長時間集中することが苦手なので、とても助かりました。

SATは基準に達しており、英語力がついている実感はあるものの、TOEFLは何度受験しても必要なスコアに到達しませんでした。ところがDETでは1回でスコアを満たすことができました。TOEFLは、徳島県には受験会場がなく、オンラインで受験する場合、試験官により、やりやすさが異なります。DETは、PCと話す感覚で、緊張せずに受験できました。海外大学にスコアを送る際、通常は有料で時間も手間もかかるのですが、DETは複数大学に一括でスコア送付が無料ででき、以後はエッセイ等に注力できました。コロナの影響もあり、DETを出願要件に追加した大学が昨年から一気に増えたのです。

■山邊 私も最初はTOEFLに挑戦していましたが、希望大学のスコアまでは至らず、DETでは目標スコアに到達できました。TOEFLは理数や歴史など様々な知識も求められます。DETは英語力のみを測定するため、スコアを到達できたのではないかと思います。

DET1時間以内で終了する点も良かったです。TOEFLでもオンライン試験はありますが、2時間半集中できる静かな環境を自宅で確保することは難しいです。

■山野井 TOEFLではタイピングスキルも求められ、夜中に親のPCで練習して臨みましたが、目標スコアには至りませんでした。DET1回の受験費用が5000円程度で、大変助かりました。

英語学習アプリDuolingo

Duolingo」は、全世界にユーザ5億人以上がいる無料語学学習アプリ。ゲーム感覚で学べるもので、日本では2020年度末時点で約3000校の導入がある。共同創業者のルイス・フォン・アーン氏(カーネギーメロン大学教授)は、教育の不公平性に問題意識を持ち、語学は仕事を得るために最も効果的な方法の1つであると考えて本製品を開発。

44%は英語から他言語を学び、46%が他言語から英語を学んでいる。

■追加費用なしで志望校に結果を送付

オンラインで受験できる英語テストDET(Duolingo EnglishTest)も提供。受験目的の過半数が大学・大学院出願だ。追加費用なしで志望校にスコアを送付できる。米国を中心に約3000大学・学校に採用。

所要時間1時間・受験料45ドル・返却期間2日間。結果は2年間有効。無料の練習テストや公式ガイドも提供。

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2021年9月6日号掲載

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