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教育ICT

タブレットドリルで頑張りたい生徒に頑張れる環境を提供~豊中市立第七中学校・大阪府

2021年8月31日

豊中市と東京書籍が産学連携

豊中市教育委員会は2020年11月、ICTを活用した「学び」の実現に関する連携協定を東京書籍と締結。同社の「タブレットドリル」「問題データベース」と学習データの利活用について共同研究を開始し、今年度はモデル校(小学校1校、中学校1校)で取り組んでいる。モデル校で市の学力向上研究校でもある豊中市立第七中学校(田中彰治校長)2年社会の授業を取材した。GIGA端末として豊中市はLTE版のiPadを配備しており、同校では2020年12月から全学年で使い始めている。

問題データベース・タブレットドリル等で家庭学習の定着図る

日本の人口密度についてプリントに記入し、傾向を考えた

教室前方には65インチの大型提示装置を天吊りで設置しており、教員用端末(Windows)の内容を提示できる環境だ。生徒用端末(iPad)に課題等を配信することができる。

小鶴祐彬教諭は授業の冒頭、前時の復習として、問題データベースのドリルプリント「世界の人口分布と変化」を3分程度で実施。生徒は各自で答え合わせを行った。この日は「日本の人口比率について考える」内容で、人口密度1平方キロメートルあたり600人以上の都道府県には赤、200人未満には青を塗り、それにより気づいたことをグループで話し合った。三大都市圏や政令指定都市に人口が集中していることが一目でわかることを全員で確認。さらに日本の人口問題について、NHKforSchoolのビデオを全員で視聴。各自が聞き取った内容をプリントにメモ書きし、少子高齢化の問題についてグループで共有し、まとめのプリントに各自で取り組んだ。

いずれも問題データベースを基礎として作成したプリントだ。

小鶴教諭は、生徒が、学んだ内容がどのように出題されるのかを理解し、「問題を解く」ことに慣れるため、毎時間の復習や授業途中の確認、最後のまとめに小テスト形式のプリント学習を取り入れている。

生徒は主に自宅でタブレットドリルに取り組んでいる

「授業で理解できたと思っても問題が解けない、という生徒の声が多い。頑張りたいがその方法がわからない生徒に、頑張れる環境、頑張った成果が点数として表れる仕組みを構築したいと考えた。問題データベースの導入により、『授業→プリント→テスト』という流れを一貫性を持って構築でき、効果的なプリント作成がしやすくなった。家庭学習の定着に向け、自由に持ち帰ることができるフォローアッププリントも提供しており、テスト前の自習時間等でプリントに前向きに取り組む生徒の姿が1年生の頃よりも増えた。タブレットドリルについては、iPadLTE版で家庭環境に左右されずにどこでも活用できるため、生徒は自由に自宅で取り組んでいる。学びに向かう力が付き始めていると感じる」と話す。

学びに向かう力を育む環境に

田中彰治校長

田中彰治校長

本校は、習い事や学習塾に通っている生徒が少なく、家庭学習の確立が課題であった。iPadでデジタル教材に家庭でも取り組める、プリント教材を持ち帰って学習できるという環境が、生徒の家庭学習に向かう意欲の向上につながっている。日頃からスマートフォンを使い慣れており、デジタル教材にはすぐに慣れた。特に今年入学した1年生は、小学校時代に既に活用していることから、取組も早かった。

委員長会(学級委員の自治組織)では、テスト対策プリントを作成している。これまでは手書きで作成していたが、今はiPadを使って作成しており、さらに意欲が増したようだ。クイズを作成できるアプリでレクリエーションを企画する、メンバー表をiPad上でまとめて提出するなど、デジタル活用力の育成につながっている。

「タブレットドリルmanager」は、学習者別や教科別等様々な観点から可視化・分析できる

タブレットドリルmanagerにより、各生徒の取組の様子も一覧できる。端末とドリル教材を渡しただけで取組が進まない層がこれまでよりも明確にわかり、この層にどのように働きかけるかを課題と考えている。

端末の破損は約半年で数台程度。学校には予備機が2台配備されており、教育センターもすぐに交換に対応してくれている。

端末とデジタル教材、その成果を一覧できる仕組みを活かし、学力向上に今後も取り組んでいく。

頑張った成果を実感できる仕組みに
学力向上担当・子ども支援コーディネータ 原田優樹教諭

府予算加配の子ども支援コーディネータ(学力向上担当)として、基礎学力の定着を目的に、問題データベースやタブレットドリル、iPadの活用方法を検討している。今年から、下足室の前に紙プリントを印刷して子供が自由に持ち帰りできる環境を整えた。テスト前は、同じ内容のプリントを何枚も持ち帰る生徒が多い。問題に取り組み、テストで成果があるように、定期テストと連携した内容を教科担当に依頼している。

タブレットドリルには毎日の体調チェックをする項目があり、その日の様子を確認できる。

英単語学習などで学習アプリQuizletも活用。QRコードを示してタブレットで読み込んでいる。今後は、子供同士の意見をiPad上で共有する活用も始めたい。8月の校内研修では好事例を共有していきたい。

家庭学習の定着図る
児童生徒支援・進路指導主事 家木路幸教諭

府予算加配の児童生徒支援・進路指導主事として学力定着や学力保障に取り組んでいる。タブレットドリルはすぐに答え合わせができ、自分で解説も確認できる。間違った問題は繰り返し出題されるので、自ら学ぶ力の育成に役立つと考えている。タブレットドリルmanagerを確認すると、家庭で一生懸命取り組んでいる生徒が一定数いることがわかる。夏休みに入るので、家庭学習の支援と定着に役立てたい。計画段階だが、定期的に問題をiPadに配信して提出期限を決めて取り組むことを考えている。3年数学で5月連休時に試行したところ、8割の生徒が提出した。

問題データベースの難易度は習熟度に応じて3種類ある。生徒の実態に応じたフォローアップ問題やチャレンジ問題など、個別最適な学びに役立つ問題を提供できればと考えている。

高校入試では、中学校で頑張ったこと、高校で頑張りたいことについてまとめる必要がある。この下書きをiPadで始め、推敲しやすくなった。体育のダンスの授業では、自分の動きを撮影して自己評価していた。様々な活用について夏休みに整理し、学校全体に発信したい。

豊中市教育委員会
教育センター情報科学係 森真理子主幹

20212月に市内全校のGIGA端末配備が終了した。約34200台のiPad(LTE)を効果的に活用できるよう、研究者や民間の協力を得てICT活用を進めたいと考え、東京書籍と連携協定を行った。

問題作成の元となる「問題データベース」、iPadで活用できる「タブレットドリル」とその取組状況を可視化できる管理ツール「タブレットドリルmanager」で、子供の学習ログを活かした学力向上に取り組む。ようやく本格的な活用が始まったところ。今年度はモデル校2校で検証しながら仕組みを構築し、好事例を他校に展開したい。モデル校も、希望があれば増やす。

別事業で学力向上にも取り組んでいる。学力を向上するためには、地域に応じた支援が必要。その仕組み作りに問題データベースやiPadを活かす。

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2021年8月2日号掲載

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