全国学力・学習状況調査のCBT化が一気に進みそうだ。「全国的な学力調査のCBT化検討ワーキンググループ」(以下、WG)は7月16日、最終まとめを公表した。本WGでは2020年5月から専門的・技術的観点より、全国学力・学習状況調査のCBT化を含む今後のあり方について検討してきた。毎年行う全国学力・学習状況の本体調査(悉皆調査)及び抽出により3年に1回程度行う経年調査それぞれについて、最適な方法を設計してCBT化を進める。
2021年度以降、CBT化による調査の試行・検証を行い、段階的に規模・内容を拡充させながら着実に実現する。2024年度の全国学力・学習状況調査に、CBTを順次導入する。なお今年度の全国学力・学習状況調査では一部の国立大学附属学校(小中学校100校程度)で端末を活用した回答方式を試行。次年度は対象学校数の拡大を予定。
悉皆調査である児童生徒質問紙調査は、2024度を目途にオンラインによる回答方式を全面導入。教科調査については中学校から先行して実施。2025年度以降、できるだけ速やかに導入する。
なお悉皆調査については、現在の全国同日一斉実施ではなく、一定期間内(複数日に分散)での実施に見直す。それに伴いIRT(項目反応理論)を採用し、調査の各回で比較可能な問題を複数用意する。
経年調査も、現行の調査設計(IRT)を基本とし、次回予定の2024年度からCBTを導入。一部、PBT(紙ベースの調査)も経過的に併用する。
本まとめでは、CBTをより効率的に実施するためのネットワーク環境の整備の推進を強く期待。それに伴い今年度秋頃より実証校100校程度で学校の端末等から国のCBTシステムまで円滑に接続できる環境や各端末の動作確認、不具合等の現場での対応等を検証し、負担をできる限り軽くできるように配慮。マニュアル等の作成やトラブルへの対処方法を学ぶ機会を設けるなどする。
CBT化に向けて、テスト理論やデータ分析に精通している人材を確保。国立教育政策研究所において2021年10月に新設予定の「教育データサイエンスセンター」の体制を強化する。
CBT化のメリットとして、速やかな結果返却とそれに伴う早期の指導改善等への活用がある。また、調査資材の印刷、配送・回収に係るコスト低減・準備期間の短縮も期待できる。ログ活用により、児童生徒のつまずきなどの多面的な分析も可能だ。
特別な配慮を必要とする児童生徒が全ての学級に在籍することを前提として、端末のアクセシビリティ機能(音声読み上げ、配色の変更、文字等の拡大・縮小等)も活用できるようにする。また、多様な特性を有する児童生徒に対応できるよう、出題・解答面で工夫。
記述式問題の自動採点技術については将来的な実装を見据えて継続的に研究。地方自治体が独自に実施する学力調査において、学びの保障オンライン学習システム(MEXCBT)を活用できる連携についても検討。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2021年8月2日号掲載