公立小中学校に整備された1人1台の情報端末をどう活用していくか、自治体の教育委員会や校長等の管理職は、学校や学級間で格差が生じないよう、工夫改善を図る必要がある。学級や教員間の格差を生み出さず、学校全体で進めていくには、教育委員会と学校の距離感が近くなり、学校が抱えている課題を共有しながら解決していくことが求められる。技術的なサポートを中心とするICT支援員の役割も重要であるが、校長等の管理職と連携しながら推進を図るファシリテータの役割も極めて重要だ。
熊本県高森町(佐藤増夫教育長)は、学校情報化認定の先進地域として認定されており、国内でも有数のICT活用の先進地域である。その高森町では、「CIO補佐官会議」をオンラインで毎月開催している。各学校の研究主任(情報担当)が、CIO補佐官として校内の職員を支援。技術的な内容は、ICT支援員と協力。担当の古庄泰則審議員によれば、「この会議の目的は、成果を共有することではなく、実践での課題を洗い出す」ことだという。例えば、「コロナ禍での一斉休校時に情報端末の持ち帰りをどのように展開するか」といった緊急の課題にも、CIO補佐官がアイディアを出し合い、早々に対応している。
定期的に開催しているCIO補佐官会議は、オンラインで効率的かつ自主的に放課後の30分程度を使って進めている。現在、家庭への持ち帰りやSTEAM教育等をさらに深めていくよう、実践上の課題を洗い出している。CIO補佐官である石井佑介教諭は、「今年度高森町に転入した先生方の気持ちを考えながら進めている」と語る。
10月23日(土)に開催予定の研究発表大会も、現地での開催を中心として、実際の子供たちの学びの姿を見てほしい。高森町のCIO補佐官を活かした体制は、「1人の100歩ではなく、100人の1歩」を実現する推進体制といえる。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2021年8月2日号掲載