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教育ICT

多様な通信環境を検証

2021年4月5日

1人1台のPCが円滑にネットワークにアクセスするためにはどのような接続方法が適当なのか。文部科学省は新時代の学びにおける先端技術導入実証研究事業「多様な通信環境に関する実証」成果報告会を3月11日、オンラインで開催した。事業推進委員は漆谷重雄委員長(国立情報学研究所副所長)、稲垣忠教授(東北学院大学)、高橋邦夫氏(合同会社KUコンサルティング代表)、西田光昭氏(柏市教育委員会アドバイザー)、林山耕寿氏(シスコシステムズ合同会社)。

フィールド実証で速さを計測

本実証では、1人1台PC環境を円滑に進めるための必要帯域や主な通信モデルのコストを計算。

また、事例が少ない接続条件について実証を行って実測した。実証フィールドは仙台市教育委員会、埼玉県吉川町教育委員会、東京学芸大学附属世田谷小学校、大阪府教育委員会。

■必要帯域を計算

本実証では、端末1台あたりの通信帯域を理論値で計算。それによるとYouTubeで動画視聴する等のストリーミング配信では2Mbps程度、デジタル教科書等のダウンロード配信では5・33Mbpsとなった。例えば、1クラス40人・10クラス10校の自治体の場合、ストリーミング通信で960Mbps、ダウンロード通信では426・67Mbpsが必要となる計算だ。

■主な通信モデルを検討

接続方式にはいくつかの選択肢がある。本実証ではインターネット接続(ISP=プロバイダ/SINET)、ネットワーク構成(学校直接接続/集約接続/ローカルブレイクアウト接続)を検討した。

ネットワーク構成については以下の方法がある。▼学校からインターネットに直接接続 ▼学校から情報センター等に集約し、インターネットに接続 ▼学校から情報センターに集約し、さらに都道府県の情報ハイウェイ等経由でインターネット接続 ▼センター集約かつインターネット通信のみISP/に接続

またISPによるインターネット接続の通信方式にはベストエフォート、帯域保障があり、帯域も1Gbps、10Gbps、100Gpsという選択肢があり、それぞれ初期費用や月額費用等は異なる。なおSINETについては現在自治体からの接続方式を検討中。

■コストを計算

1自治体1クラス20人・10クラス5校の場合や単独校で直接接続する場合、SINETよりもISPを利用する方が安価となる傾向。

1自治体1クラス40人・10クラス10校で自治体集約型接続の場合、ISPよりもSINETを利用した方が安価となる傾向にある。

■フィールド実証でSINET等を計測

机上検討を補完するため、事例が少ないSINET接続、10Gbpsベストエフォート回線、ローカルブレイクアウトなどを検証した。

埼玉県吉川市

市立旭小学校(児童数171人)でローカルブレイクアウトとSINET接続を検証。既存環境でも100Mbps以上の実効帯域はあるが、GIGAスクール端末配備によりひっ迫する可能性がある。

ローカルブレイクアウトでは300~400Mbpsで接続できた。ローカルブレイクアウトにより一定の増速効果が期待できる。

SINETを用いてプログラミングに関する公開授業を大学と実施した際は、クラス単位で数十Mbps・数千セッションのトラフィックが発生。一端末あたり約3・5Mbpsの通信と約120のNATセッションがピーク時に使用された。SINET接続により一定の増速効果が期待できる。

宮城県仙台市

小学校約1100人、中学校約210人。既存環境(※)では、学校~データセンターのVPNにボトルネックがあった(※校内ネットワーク区間1Gbps、外部ネットワーク区間はA社100/200Mbps B社10Mbps/120Mbps A社アナログ1Mbps/12Mbps、インターネット区間400/200Mbps)。

SINET接続(校内、外部、インターネット区間いずれも最大1Gbps)では増速せず、校内ネットワーク区間にボトルネックが見られ、学校単位での速度は改善しなかったが市全体のネットワークの増速効果は期待できる。

モバイル通信でSINET接続した場合も校内のボトルネックは解消しなかった。

インターネット経由のWeb会議よりもSINET加入機関でのVPN接続(SINET L2VPN経由)のWeb会議のほうが遅延が小さかった。

東京学芸大学付属世田谷小学校

10Gbps光回線接続を計測。児童数376人。

最大1GbpsのISP接続で、350Mbps程度の速度で通信できた。10GbpsのISP接続の場合は1・6Gbpsの速度で通信できた。

大阪府立A高等学校

SINET接続によるインターネットブレイクアウトを計測。生徒数役870人。校内ネットワーク、外部ネットワーク区間、インターネット区間それぞれ最大1Gbpsで、SINET接続の速度を測定。500Mbps程度で通信できた。SD―WAN等を用いてローカルブレイクアウト構成にすることで、SINETの高速・低遅延を利用しつつ、センター集約によるトラフィック集中を回避しやすい。

■ガイドブックを公開

後日、本実証の成果をまとめた「学習系ネットワークにおける通信環境最適化ガイドブック」を文部科学省Webに公開する予定。

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2021年4月5日号掲載

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