喬木村教育委員会の長坂氏(教育CIO補佐・ICT支援員を兼任)は「長年、遠隔合同授業に取り組んできたが、オンライン授業は、これとは異なるスキルやマインドが必要であった」と報告。2017年度から遠隔合同授業に取り組んでいる喬木村では、アクティブラーニング室でボタンを1回押せば、喬木第二小と喬木第一小がつながる。どの位置からでも会話を拾える高性能マイクとスピーカーも設置。遠隔授業では音が途切れないことが何より重要だ。
「喬木村ならコロナ禍でもオンライン授業はすぐに対応できたでしょう」と言われたが、実際には、遠隔合同の機材・経験とオンライン授業の実施は、イコールではなく、目的が違うと必要な機材もマインドも異なることを実感した。
まず、これまで児童生徒がPCを持ち帰る活動をしていなかった。家庭のWiFi接続も未対応だった。
Web会議ツールに接続する経験もなく、いつでもどこでも、という発想がなかった。
そこで喬木村でも、オンライン授業の準備を段階的に始めた。
オンライン授業では、個人のいる場所から個人のPCで接続する。クラウド活用がベースにあり、普段の授業や生活の延長上にある。そこで、「自宅でオンライン受講するイメージ」を学校で体験。教室に配信されている校長の講話を、個人のPCで視聴したり、校内で2教室に分かれて接続して視聴したりした。
ファイル共有とテキスト入力でやり取りするオンラインコミュニケーションにも慣れが必要だ。そこで教員は、これまで紙に記入していた日報をデジタルで配信した。
各クラスの子供の検温結果も、クラウドで共有するなど教員同士の連絡に活用した。
子供に対しては、GoogleClassroom上の掲示板で連絡することから開始。子供はすぐに慣れ、「朝の会で歌いたい歌」を皆に質問したり、学級新聞に掲載したいアンケート調査を行ったりが始まった。楽しい体験や利便性を納得できる体験と、つながりを途切れさせない体制が授業活用の基盤になると実感している。
信州大学教育学部 森下孟・准教授
ネットワークの問題は目に見えにくいのが課題。問題が起こった原因を探ると、ネットワークケーブルの規格が古かったり断線していたり、集約型ネットワークでセキュリティ装置(UTM)により速度が半分以下になっていたり等様々な理由があった。UTMの適切な設定やケーブルの劣化等を確認する必要がある。
長野県教育委員会では次年度より、長野県ICT教育推進センター(仮称)を設置する。これまで4人体制であったが、義務教育担当、高等学校担当、管理担当、派遣教員を加え、計9人体制で進めると共に全国の有用な事例を県内で共有する。
■基調講演
東北大学大学院情報科学研究科・教授 堀田龍也 先生
■実践報告:長野県南信地区の取り組み
飯田市教育委員会・指導主事 牧友博 先生
伊那市立伊那西小学校・校長 川上明宏 先生
伊那市立高遠中学校・教諭 足助武彦 先生
南箕輪村立南部小学校・教諭 小松良介 先生
■実践報告:遠隔オンラインを始めるために
喬木村教育委員会・CIO補佐/ICT支援員 長坂亮介 先生
信州大学教育学部・准教授 森下孟先生
■パネルディスカッション
東北大学大学院情報科学研究科・教授 堀田龍也 先生
信州大学教育学部・名誉教授 東原義訓 先生
長野県教育委員会事務局学びの改革支援課・指導主事 松坂真吾 先生
2月15日までオンデマンド参加申込者に限定公開をしている。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2021年2月1日号掲載