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教育ICT

1人1台PC活用 1年生でもここまでできる~兵庫県神戸市立本山南小学校

2021年2月1日

GIGAスクール構想で神戸市立本山南小学校(山﨑理樹校長・兵庫県)にも新しいPCが届き、LAN工事等も進んでいる。同校では市全体でスタートする児童1人1台PC活用に向け、2020年度から1年生算数の授業で「考える」授業づくりに取り組んでいる。11月に実施した研究授業では、各方面から「1年生でもここまでできるのか」という感想が届いた。同校の1人1台PC活用について山﨑校長と、研究授業を担当した結城京子教諭に聞いた。

子供が書き込んだ画面を大型提示装置で共有。映像データベースは提示することも各自のPCからアクセスすることもできる

子供が書き込んだ画面を大型提示装置で共有。映像データベースは提示することも各自のPCからアクセスすることもできる

映像データベースで試行錯誤

同校のICT環境は2020年、大きく更新した。まず7月、大型提示装置や実物投影機、WiFi環境が全普通教室に配備された。

また、神戸市から新型コロナ対策として学校運営費の追加配当があったことから、指導者用デジタル教科書(国語、社会、算数、理科)と、特別教室に65型の大型提示装置を配備。さらに2学期から、11PC活用を想定して、映像データベース(東京書籍)を各教科で活用できるようにした。

各種デジタル教材を充実させた理由について山﨑校長は、「提示環境が常設されたため、まずは指導者用デジタル教科書を導入。教員は、より分かりやすい説明ができるようになった。さらに11台のPCで考えを深め、互いにやりとりし、自分の学びをふり返って学習できるように、子供達が考える道具として映像データベースを導入した。個別最適化のPC活用はAIドリルに取り組めば良い、という一部のイメージを払拭したいという思いもあった」と話す。

児童のPCからもコンテンツにアクセスして考えたり話し合うことができる点が、映像データベース算数の特長だ。

1年生の算数を公開

各自のPCで「おはじき・ぶろっく」コンテンツを使い12から3を引く方法を考えた

各自のPCで「おはじき・ぶろっく」コンテンツを使い12から3を引く方法を考えた

これまでICTを十分に活用していたわけではない学校として、11台のPC活用モデルを全市に示すため、11月の近畿算数・数学教育研究兵庫大会で授業を公開。山﨑校長は神戸市の研修育成課の算数担当課長も兼任しており、算数の実践研修グループに結城教諭も所属していることから、1年生の算数で行った。公開授業の参観者からは「1年生でもここまでできるのか」という感想が多かったという。そのポイントについて授業者の結城教諭は「アルファベットやPC、キーボード入力も初めてという児童もいる中、PCを使うことは楽しい、もっとやりたいと思える活動を心掛けた。1年生は、様々なことに慣れる時間が必要。公開授業は5時間目に行うことから、『昼休み中にPC室からPCを持ってきて電源を入れ、ログインして授業開始を待つ』ことを週1回から始め、最終的にほぼ毎日行った」と話す。

ログインでつまずくと授業が成立しない。そこでパスワード入力は、キーボード上のひらがな表記を利用。1年生は、ログインできると大喜びで、盛り上がるという。

さらにPC操作を楽しく進めることができるように、映像データベースを活用。収録されている時計のコンテンツを使って、指定した時間を指で操作したり、おはじきやブロックのコンテンツで指定の数を並べたり、分けたりを何度も行った。解説映像については、わからないときに各自で視聴して良いこととした。練習問題は、何題挑戦したいか自分で数を選択して取り組める。

「算数の映像データベースは、児童が自分で動かして考えを整理できるシミュレーションや、定規やコンパスの使い方の動画などがあり、11台のPCがあればとても使いやすい。PCを使う授業に子供は大喜びで、意欲向上に確実につながった」という。

映像データベースは、各教科の学習の理解を促す「解説映像」を収録している。算数では、映像のほかに問題ドリルや自分で動かすことができるシミュレーション教材も数多く収録。数え棒やおはじき、ブロック、お金、時計など、従来の算数セットのようなツールのほか、グラフツールや立体など、シミュレーション教材が豊富だ。

8月の時点で11台のPCは配備されていないため、児童は、各自でPC室に行き、タブレットPCを教室に持ってきて電源を入れ、ログイン。ここまでを授業開始前に行い、授業終了後は、PC室に戻ってキーボードとマウスに接続して元通りにする、ということまで行ったという。

■各自のPCで試行錯誤

公開授業で児童は、算数の映像データベースの「おはじき・ぶろっく」を主に活用。

隣同士で考えを伝え合う際も、画面を見せながら話し合っており、伝えやすいようだ。これまで、おはじきやタイルを使うときは机の上に何を乗せて何をしまって、という指示が必要であったが、PC上の教材だと、ブロックやおはじきを紛失したり机下に落としたり片づけたりする作業が不要になる。前を見てほしいときは授業支援システムの機能で教員用PCから児童のPC画面をロックすることもでき、子供の画面を大型提示装置に映すこともできる。

結城教諭は「11台のPCで各自の試行錯誤がしやすく、楽しくできたようだ。試行錯誤が楽しい、と早期から経験できることは重要。映像データベースには全教科収録されており、体育で模範映像を見て演技をする、国語の話し合い活動の映像を見て学習を進めるなど、様々な学習展開ができそう」と話した。

■映像データベース小学校=国語・算数・理科・社会・英語・書写・家庭・体育・道徳・特活総合生活の映像教材を収録。算数では、問題やシミュレーション、解説映像を提供。教員が提示したり、児童が各自のPCで利用したりすることができる。

リモート学習にも対応できる
山﨑理樹校長

PC操作の習熟に慣れる時間は必要だが、それは算数セットの実物でも同様。PC上で授業ができれば今後、リモート学習が必要になった時にも対応できる。1人1台PCの活用は、子供が受け身にならず、学習を自ら組み立てることができるようにしたい。それには学習履歴の活用がポイント。学びの履歴を自分でふり返って評価、判断して自ら学ぶ力を育む授業づくりを先行して示すことができるように、3学期から取り組んでいく。大型提示装置で一斉提示する、子供達のPCで1人1人の考えを画面転送で共有するなど、これまでとは異なる使い分けを考えていきたい。

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2021年2月1日号掲載

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