奈良県域の共同調達によるPC配備数では2万3217台と、県内で最も多い奈良市教育委員会は、コロナ補助金等でネットワークも増強する。
共同調達で2万3000台
Chromebookは8月末より各校に納品を開始し、9月には活用が始まる。5年間のリース料の総額は13億247万3700円だ。奈良県域GIGAスクール構想推進協議会・調整部会の会長も務める奈良市教育委員会の谷正友氏に、共同調達のメリットと奈良市の整備について聞いた。
奈良市の環境整備
奈良市(小学校43校・中学校21校)では、これまで5・4人につき1台程度のPCであった学校環境が、9月中には一気に1人1台環境になる。
9月以降、ChromebookでG Suiteを活用できる環境が奈良市全体に整うことで、近隣の他校との環境の違いを気にすることなく、授業実践に取り組むことができる。
これまで小学校で取り組んでいた学力向上システム「学びなら」事業は継続。さらに自動採点システムも活用する。現在、中学校向けの個別最適化システムを導入・選定する準備を進めている。経済産業省のEdtech補助金も活用してプログラミング教材やAIドリルなどを整備する予定だ。
PCはリース契約とした。保険をかけ、破損等の際に対応できるようにしている。
家庭向けWiFiルータは、レンタル・通信費・保険込みで整備。ソフトバンクと契約し、ボリュームディスカウントにより、一般価格の約5分の1程度で利用できる。
「使った分のみ通信費を払う」提案もあるが、「PCを家庭で使うほど費用がかさむ」仕組みは活用が妨げられると考えた。また、国の補助事業によるルータ整備の場合、保険や保守は対象外となるため、現在の契約を継続し、ルータ配備の補助金は充当しない予定。なお奈良県域の共同調達ではオプション提案でSIMが必要な場合に特別価格を提供することを予定しており、各自治体で9月以降、契約が始まりそうだ。
コロナ補助金でネットワークを強化
奈良市ではネットワークも強化する。GIGAスクール構想の補助金対象は校内だが、1人1台のPCが十分に稼動するためには、学校のインターネット接続を強化する必要がある。
奈良市では学校をいくつかのグループに分けて集約して接続している。これを、1人1Mbpsを目標にスピードを上げるためには、出口で20Gbps程度が必要で、月額料金が莫大になる。
ベストエフォート契約や各校がインターネットに直接接続するという案もあるが、奈良市規模の場合、オンライン授業を再開せざるを得ない状況になった際にベストエフォートだと速度を保障できない。帯域保障をして各校接続にすると割高になる可能性もある。
そこで、いくつか案を講じている。
まず、拠点間のメディアコンバータを変更して速度を向上。
さらに学校インターネットの出口をどこまで増強できるのか、複数事業者と検討して決める。奈良市の場合、地元のインターネットプロバイダーやケーブルテレビ、NTTを始めとする通信事業者、各携帯事業者など候補は複数ある。
本整備についてはGIGAスクール構想の補助金対象ではないが、コロナ交付金(新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金)を最大限充当して整備できるように準備中だ。
学校インターネットの増強は、1人1台環境を円滑に利用するための最も重要なポイントの1つであると考えている。
教員の校務環境については、外部接続専用ブラウザ「Soliton SecureBrowser」等の仕組みで校務系と校務情報系を論理的に分離。ブラウザを閉じればデータは残らないようにして安全を図った。教育における無線接続の802・1X認証も利用している。
奈良市では、これまでのPC整備に遅れがあったこともあり、機種選定は概ね順調に合意を得られた。課題として、全体として教員のICT活用経験が浅い面があり、今後はオンライン研修を充実していくなど活用体験を蓄積できる仕組みを準備していく。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2020年8月3日号掲載