岡崎版GIGAスクール構想を進めている岡崎市教育委員会(小学校47校・中学校20校)は8月25日、ネットワークとPC(iPad)配備を終えた全中学校及び小学校6年生でiPadを活用した授業を開始。岡崎市立新香山中学校(名倉嘉章校長・愛知県)では生徒1人ひとりに担任がiPadを手渡しし、Microsoftアカウントなどを設定。協働学習ツールを使うなど初めての授業を行った。岡崎市では、教職員と児童生徒全員に1人1台のiPadと、Microsoftアカウント、校内ネットワーク整備も進め、この日を迎えた。
カバー付きiPadにはあらかじめ1人ひとりの名前が記入されている。
鈴木奈穂子教諭は教室のディスプレイに、iPadの指紋認証システム「TouchID」設定方法の解説動画を提示しながら説明。生徒は各自、TouchIDを登録してからMicrosoftアカウントとパスワードを設定した。各自に手渡されたプリントにはこのほか、AppleID、まなびポケットとタブレットドリルのIDとパスワードが記載されている。各自の設定後、このプリントは自宅に持ち帰り、保護者の同意を得る。
全員の設定が終わったら、協働学習支援ツール「コラボノート」を使って「どんな活用をしたいか」をiPadで書き込んだ。
「リスニングの勉強ができる」「体育で上手な人の演技を撮影して繰り返し見ることができる」「わからない言葉の意味をすぐに調べられる」など、皆の書き込んだ内容がディスプレイにすぐに提示された。
授業後、生徒は「塾でタブレットを使ったドリルは行っていたが、インターネットに接続しておらず、カメラ機能もなかった。学校から貸与されたiPadはインターネットにつながるし、カメラやアプリを使うこともできる。いろんなことができると思う」「コロナでいろいろな活動ができなかったが、iPadでグループ活動をやってみたい」と話した。鈴木教諭は「子供の思考を深めるための手立てにうまく活用していきたい」と話した。
岡崎市の迅速な整備と運用の特長について教育委員会総務課の川本祐二係長に聞いた。
岡崎市は小学校1年生から中学校3年生に1人1台のiPadとタッチペン、キーボードを配備する。このうち小学校4年生以上は「Myタブレット」として個人に貸与。4年生は6年間、同じiPadを活用することになる。小学校1~3年生は1人1台分整備されるが、どのiPadを使っても良いという運用だ。
「Myタブレット」としてiPadを児童生徒に紐づけることで、自由な活用を促す。市内での転校であれば、4年生以上は転校先に自分のiPadを持っていくことができるようにし、管理負担の軽減を図った。市外からの転入の児童生徒に迅速にiPadを配備できる仕組みを検討・構築中だ。なお家庭での持ち帰りは当初は行わず、活用の蓄積に伴い、学校長判断で行う。
iPad配備予算は、自主財源に加え、GIGAスクール構想補助金とコロナ交付金等で対応。
夏季休業期間中に配備・設定を終了したのが、校内ネットワーク、小学校6~中学校3年生用約1万4800台のiPad、指導者用iPad約2500台(うち1000台は既存のiPad)とMicrosoftアカウントだ。8月には教員研修も行った。
小学校4・5年生用iPad約9700台は既に予算議決済。
小学校1~3年生用新規iPad約6850台は9月に予算計上を予定。12月末までに全小中学生1人1台環境を整える。なお2018年度に各校に配備済のiPad2000台は小学校1~3年生用として活用する。
MicrosoftTeamsの活用を想定。まなびポケット、タブレットドリル、コラボノートや各種無料アプリも活用する。
配備されたiPadには、各教科や発表・交流、プログラミング、MicrosoftOffice関連のフォルダを設定済。よく活用する可能性があるアプリをフォルダにまとめた。タブレットドリルは、学び直しの観点から、小学校版も中学校版も活用できるようにした。
川本係長は「新学習指導要領に対応した教科書の多くにQRコードが掲載されており、各自のiPadですぐに視聴できる。MicrosoftTeamsでは、教材の配付や回収、オンライン授業等が可能。教員のオンライン研修にも活用できる。まなびポケット内で活用できる協働学習用ツールのスクールタクトにも期待している。日常的にコメントを記入することによる学習効果やお互いの良さの発見など、1人1台活用ならではの効果が考えられる」と話す。
このほか、教員や子供の興味関心に合わせてインストールできるプログラミングやドリルなどの無料アプリを「セルフサービス」フォルダに100種類以上準備。iPadのストレージ容量は32GBのため、各自のストレージ使用容量を確認しながら活用することになる。その日の授業の終わりには、撮影した写真や映像、作品等各種データをクラウドにアップするなどの時間を設けて各自でストレージ管理することを想定。
クラウドはOffice365とiCloudを活用。iCloudはバックアップ用としての活用を考えている。
MicrosoftStreamを活用し、岡崎市イントラネット内のみでアクセスできる動画共有サイトを設置。
iPadの初期設定を含め、新規で活用する様々なアプリの利用方法を紙面で説明することは難しいと考え、情報モラルやセキュリティ等も含め、様々な動画を作成、アップしている。
生徒が各自のiPadで視聴できる教材も掲載する。
充電保管庫の配置には悩んだという。「日射や砂塵の影響がなく可能な限り生活動線を妨げない」「どの教室でも標準化された場所」として、中学校では全普通教室に40台分のiPad本体のみが入る充電保管庫を、教室入口前方に配置して金具で固着。40台収納でありながらコンパクトに収納できる。キーボードは別途収納。活用するときに有線接続する。
固着用金具については次年度以降、教室数の増減に対応できるよう、学校現場の教員でも設置場所を移動できるような金具を特注して対応した。
ネットワーク整備は67校中35校の1G対応は前年度までに終了。今年度は残りの学校の1G対応を実施。
無線APは画像転送機能対応「ACERA1150i」(フルノシステムズ)のAppleTVなしでもiPadを大型提示装置に提示できる新機能に着目して導入。NHKforSchoolや各種動画コンテンツもiPadでストリーミング再生でき、AP同士の干渉を防ぐ機能も搭載。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2020年9月7日号掲載