清泉女子大学(東京・品川区)文学部地球市民学科の安斎徹教授ゼミでは今年6月から、クラウドサービス「AIブレストスパーク」を活用し、クリエイティブ人材の育成に取り組んでいる。
同学は、キリスト教ヒューマニズムを建学の精神とし、1950年(昭和25年)、四年制女子大学として創立。地球市民学科は、グローバルな視野と発想で、地球社会に貢献できる人材を育成している。
安斎ゼミで活用されているAIブレストスパークは、人間の創造領域において、AI技術を応用して、「発想」を支援して企画プロセスの効率化を図るクラウドサービスだ。ひらめきを支援したり、発想を刺激したりすることで、アイデアを出しやすくすることができる。個人でもチームでも活用でき、社会課題と関連した言葉を結びつけられる。無料で提供しているスマートフォンバージョンもあり、「すきま時間」を「発想タイム」にすることも可能だ。
博報堂の独自発想支援メソッドをもとに、国内大手システムインテグレーターであるTISが共同開発。これまで企業に活用される事例は多かったが、大学での活用は今回が初。
安斎教授がAIブレストスパークを知ったきっかけは、昨年7月、日本経済新聞の記事「企画の発想 AIで支援」を読み、TISにコンタクトしたことが始まりだ。導入した理由については、「クリエイティビティを効率的に育成できる可能性に興味を持ちました。クリエイティブであることは、正解のないVUCA時代(Volatility=変動性、Uncertainty=不確実性、Complexity=複雑性、Ambiguity=曖昧性)を生き抜く重要なスキルになると確信しています」と語る。
学生にAIを使いこなす経験をさせたいという思いもある。
「AI時代の到来は避けられません。そんな中、AIをやみくもに恐れるのではなく、AIを使いこなせる人材の育成が大学の責務です」
現在は、新型コロナウイルスの影響のため、オンライン授業で、AIブレストスパークを使い、SDGs(持続可能な開発目標)に関する論文コンテストなどに取り組んでいる。
「ゼミ生は、質の高い教育、ジェンダー平等の実現、働きがいと経済成長、持続可能なまちづくりなどのテーマに関心があります。そうした様々な社会的課題に対するイノベーティブな解決策を考える際に、AIブレストスパークを使うことで、学生の企画力や発想力が飛躍的に伸びることを期待しています」
開発元であるTISイノベーション事業部ディレクター長谷川剛史氏も「若い人の発想力でAIブレストスパークの新たな活用法を開拓してくれることを期待しています」と話す。
安斎教授は大学教員になる前は、長年にわたって企業で働き、企画、営業、海外勤務、秘書など幅広い業務を経験してきた。こうした経験をもとに、閉塞感漂う社会や企業に、少しでも風穴を開けられるような、元気と勇気のある人材の育成が、自身に課せられたミッションだと考えている。
「AIブレストスパークでゼミ活動を行った卒業生には、『社会や企業を変える人』となって、縦横無尽に活躍してもらいたい」と話す。
今後は、(一財)学生サポートセンター主催のビジネスプラン・コンテストにも挑戦する予定だ。また、博報堂および博報堂DYメディアパートナーズの女性マーケットプランナーらが立ち上げたプロジェクト「博報堂キャリジョ研」と連携して、女性のキャリアに関する調査研究を行う計画もある。このほかサステナブルなファッションブランド「エコアルフ」との連携なども実現していく考えだ。
(蓬田修一)
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2020年8月3日号掲載