教育現場のオンライン学習では、効果的な指導法や業務負担の軽減などが求められている。スイッチャー「ATEM Mini」を提供するブラックマジックデザインは、オンラインセミナーを7月4日・5日に開催。スイッチャー「ATEM Mini」はUSBでPCにつなげるだけで複数のビデオカメラ等の入力を瞬時に切り替え、動画を配信できるもので、切替がスムーズになることで授業をテンポ良く進めることができるものだ。本ツールを使ったオンライン授業やオンラインイベントの事例を各校の教員が報告した。
芸術文化を担う人材を育成している埼玉県立芸術総合高等学校では6月1日に行われた入学式に、体育館の入学式の様子を2台のカメラから、在校生のウェルカムムービーをiPhoneから教室の保護者に配信中継した。3つの映像はスイッチャー「ATEM Mini」で切り替えた。
iPhoneから流す際は、外部のカメラを直接表示するアプリ「QuickCamera」を使った。
6月に行われた生徒の作品発表会では、生徒が1人ずつステージに上がって、自分の作品について発表。スライドとムービーの映像は、PCから「ATEM Mini」を経由してステージのモニターに映し出した。
2年生の選択科目「メディアコミュニケーション」の授業ではニュース番組を制作。グリーンバックの前で話す生徒の映像をクロマキーでリアルタイム合成する際に、「ATEM Mini Pro」を活用。実際のニュースのように見せるため映像にあわせて、中継しているように語った。
西澤教諭は「スイッチャーを使うことで、編集時間が不要になる。生徒に任せると、教員が思ってもいなかった使い方を見せてくれる」と語った。
小林教諭は「教育で利用するにあたり“簡単”は重要なキーワード。動画配信のトラブルで学びを止めない環境を工夫している」と語る。
小林教諭はYouTubeチャンネル「どこがく通信講座」で「オンライン授業って何?」などの番組を配信している。当初はWebカメラを使用していたが2020年5月に「ATEM Mini」を購入。一眼レフカメラをつないで音声や画質が向上した。音声や画質の向上は生徒のやる気を刺激したようで、生徒主催のオンラインイベント「うちですごそう」を企画。プロジェクトメンバーがパーソナリティを務め、新入生が登校できない状態が続く中、過去の学校行事動画などを配信した。
休校中のオンライン授業では午前中が教科学習で、午後は学年や教科を超えた特別講座を実施。全17講座で、教員が得意とする内容を発信した。数学と物理の教員による力学の話や、Web会議による大学生とのディスカッションなどだ。
同校の高校生はBYODで、各自が所有しているPCを学校に持ち込んで授業を行う。その操作方法の説明に「ATEM Mini」を活用。1番は教員用、2番はPCを使う人への説明、3番はアプリでの操作方法を伝えるなど、スイッチを切り替えて説明した。
6月下旬に行われた学校説明会は、すべてオンラインで開催。校長室から「ATEM Mini」により、学校説明会のスライド画面に学校長をピクチャー・イン・ピクチャーで配信した。
名古屋商科大学では4学部、2研究科のすべての課程で同時双方向のオンライン授業を実施。2020年度も4月4日の授業開始日からオンライン授業を実施。定期試験もオンラインで行っている。
名商大は、参加者中心型の「ケースメソッド教育」と呼ばれる討論型授業が強みだ。そこで板書機能を重視して「ATEM Mini」を設置した小型スタジオを4月までに30室作成した。ミニスタジオの設置は1部屋50万円程度だ。
小型スタジオで教員はiPadで参加者の発言を書き込みながら、プレゼンテーション画面とiPadを「ATEM Mini」で切り替えることができる。
実際のオンライン授業では、最初に参加学生によるグループ討論をZoomで実施。討論が終わると全体のセッションを開始。ホワイトボードとiPadの画面を「ATEM Mini」を使って瞬時に切り替えながら進めている。小型スタジオは現在も周辺機材のアップデートを継続している。
定期試験ではPDFで問題を作成。それをGoogle Classroomに登録して予定公開状態にする。一斉公開された問題を、学生が手書きで解答し、それをスマートフォンで撮影。Google Classroomにログインしてアップロードしている。
「各学校が長年培ってきた強みをオンライン授業で表現することが大切」と栗本学長は語った。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2020年8月3日号掲載