新型コロナウイルス感染症による突然の休校を機に「GIGAスクール構想」の整備が大幅に前倒しになった。日本HPは6月30日、「GIGAスクール構想で自治体・教育委員会が考察すべきポイント~PC、ネットワーク、クラウド企業が集結!わかりやすくご紹介~」をテーマにウェビナー(Webセミナー)を開催。基調講演には、休校期間に保護者として学校対応を体験した教育ITライターの神谷加代氏を迎え、GIGAスクール構想に向けた整備のポイントについて、日本HPの松本英樹氏、日本マイクロソフトの仲西和彦氏、無線LANアクセスポイントを提供している日本ヒューレット・パッカードの斎藤翔太氏がPC、クラウド事業者、ネットワークとしての専門家の立場から講演した。当日は500人を超える教育関係者が視聴し、講演後の質疑も活発に行われた。
日本マイクロソフトではGIGAスクール構想を機に「GIGAスクール対応PC基本パッケージ」の提供を開始した。これはWindows10 Pro Educationとモダン管理、学習用ツール、学習支援ツール、無償の教員研修も合わせてWindowsPCと共に提供するものだ。仲西氏は、最新のWindowsのメリットや特徴について説明した。
日本マイクロソフトでは、文部科学省のGIGAスクール構想実現の支援に全力で取り組んでいます。今、火曜日の夕方という忙しい時間帯であり、かつ雨も降っているにも関わらず、500人が本ウェビナーを視聴しています。新型コロナウイルス感染症の影響により、ウェビナーに参加することが新しい日常の1つになっている、ということに驚いています。この新しい日常を学校にも広げていかなければなりません。
GIGAスクール構想は、単にPCを学校に入れるという話ではありません。新型コロナウイルス感染症のような非常事態にも学びを止めない環境にしよう、というものです。昨年末から今年度にかけて、国は計約4000億円もの補正予算を確保し、GIGAスクール構想による学びを止めない学校環境づくりに取り組んでいます。ここに日本マイクロソフトは何ができるのかと考え、提案を始めたのが「GIGAスクール対応PC基本パッケージ」です。
整備の目的の一つは、場所を選ばない新しい学びを可能にすることです。そのために必要なものが、学習の道具としてのPCです。日本マイクロソフトではPCメーカーやパートナーと連携して約20種類のPCを提案し、教育委員会や学校の理念や目的に応じた道具の選択肢を増やしています。
次に必要なものが、学習支援ツールです。これについては、Office365とMicrosoftTeams(以下、Teams)を提供しています。
黒板とプリントによる学びから、PCを新しい学びに活用する授業のための教員研修システムもセットで提供しているのが、「GIGAスクール対応PC基本パッケージ」です。
授業支援ツールであるTeamsはマイクロソフトが提供する新しい仕組みです。設計思想に特徴があり、やりたい作業を自然にできるように開発しています。3月から、各企業で在宅ワークが始まりましたが、多くの企業がTeamsをコラボレーションツールとして採用しています。
Microsoft FormsやWordで作成したものを、Teams上で配布・回収することができ、さらに、Teams上でファイルを直接開くことができます。ウインドウの切替えが不要な点は、競合ツールと大きく異なる点です。Teams上でそのまま再生できますので、子供が「マルチウィンドウ迷子」になることがありません。すぐに次の作業に取り掛かることができます。
オンライン朝の会やオンライン学習もTeams上で可能です。画面は、4分割から9分割まで子供の顔を表示できます。分割タイルについては今後、7×7に拡張していく予定で、そうなるとクラス全員の表示が可能になります。
GIGAスクール構想が4年計画から今年度中に前倒しされ、議論の中心が「いつ配備できるのか」になっています。
今年のうちにすべての台数を整備することが目指されており、さらに6月5日の文部科学省通知では「遅くとも8月までに、少なくとも小学校第6学年・中学校第3学年等の最終学年の児童生徒や経済的理由等でICT環境を準備できない家庭に対してICT環境が整備されることを目指す」「一刻も早く児童生徒のICT環境を整えることが必要」としています。
どれだけ短期間にPCを設置して活用できる状態にできるか、そのためにどうすれば良いのかについて配慮しなければなりません。
導入スケジュールの長短を最も左右するものが、PCのキッティング(必要なアプリの設定)です。Windowsはキッティングに時間がかかる、というイメージを持つ方もいるかと思いますが、それは数年前の話です。Windowsも時代と共に日々進化しています。
かつてのようにイメージを1台1台マスターからコピーする方法ではなく、クラウドで一括設定を行っています。これがモダン・デスクトップ・デプロイメント(IntunとAAD《=AzureActive Directory》によるモダン管理)です。
これは、基本パッケージを短時間で導入するための仕組みです。モダン管理では、箱からPCを取り出して電源を入れ、Intuneで設定済のUSBキーを挿入するだけで、1台につき数分程度で初期設定を完了し、アプリケーションのインストールが始まります。
USBを挿入するだけですので、誰でも簡単にできる仕組みです。
各教育委員会では、今回の管理設定方法がクラウド方式のモダン管理になっているのかどうかについて、パートナー等にぜひ確認することをお願いします。この方法で設定しない場合、管理・設定期間が長期化し、コストも上がります。
30年以上前からOSを提供していることもあり、現在のWindowsに対する誤解もあると感じています。数年前の常識は今の常識とは異なりますし、クラウド時代になり、進化のスピードはさらに速まっています。
最も大きな誤解が「Windowsアップデートに時間がかかる」という点です。
2015年に登場したWindows10ですが、更新が自動で始まり数時間使えないということも起こった数年前とは異なり、ファイルサイズが小さくなり、2020年度バージョンからは更新時間も10分程度になりました。さらにInTuneで更新のスケジュール設定をすることで夜間や休日に完了することもできます。
「64GBではWindows更新の際にストレージ不足で止まるのではないか」という疑問についても解決しています。現在、Windows10では、アップデートに必要な領域を予め確保しており、容量不足が原因で更新が途中で止まることはありません。
ハードディスクは新製品ほど大きい、というのがこれまでの常識でしたが、SSDとクラウドストレージの登場により、このトレンドが変わり、ストレージの容量も下がっています。こういった変化に適応するために前述の領域確保を行うように進化しました
「Windowsはセキュリティソフトを別途入れる必要がある」というイメージも誤解です。
OS標準付属のWindowsDefenderはアンチウイルスソフトとして業界トップクラスです。同じような防御機能を重ねて導入する必要はありません。
「GIGAスクール構想の標準仕様書ではスペック(CPU)不足」と考える方もいるようですが、スタンドアロンのPCに多くのアプリケーションをインストールする、というかつてのイメージをお持ちだからではないでしょうか。CPUも数年前と比較してパフォーマンスが圧倒的に向上しています。文部科学省の標準仕様書にはWindowsPCのCPUについて、「Intel Celeron2016年以降のもの」と記載されています。2016年以降のCPUであれば大丈夫です。
日本マイクロソフトとして、WindowsPCのメリットについてもお伝えしたいと思います。
ふりがなや縦書き入力が同時にできることで国語など縦書きを大切にしたい教科にもストレスなく対応できます。
UDデジタル教科書体をフォントに標準搭載しているのもWindowsだけです。特別支援教育のニーズに応えて開発されたフォントで、これを採用しているデジタル教科書もあり、見やすさには定評がある新しいフォントです。
プライバシー情報に対する考え方についても大きく違います。
マイクロソフトのプライバシーステートメントには、「個人のデータを収集したり使用したりしない」「個人データを販売したりレンタルはしない」「商業目的で共有しない」と明記しています。これはとても重要なことです。
これまでのイメージとは異なる仕組みを多く提供しているのは、クラウド時代に適した学びにシステムとして対応しているためです。今日できないことも、来月には可能になる、ということが今、起こっています。「GIGAスクール対応PC基本パッケージ」等の問合せやご相談については随時対応しています。▼問合せ(教育機関)TEL0120・933・308(9時~17時半/月~金曜日・土日祝日除く)メール GIGAMS@microsoft.com
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2020年7月13日号掲載