1890年創立の暁星学園暁星小学校(吉川直剛校長・東京都)は1899年に中学校を開校して一貫教育を実施している歴史ある男子校だ。小学校は2019年度から、中学校・高等学校では2020年度から校務支援システム「スクールマスター」を導入・活用して業務改善等に役立てており、小中連携を視野に新たな仕組み作りを模索中である。校務支援システム導入の経緯と選定のポイント、今後の予定について同校教務部員の村上達也教諭に聞いた。
同校では20年前から校務用PCや成績処理ソフトを活用していた。しかし校務用PCは共用の1台のみで、学級担任が表計算ソフトでまとめた成績や所見をUSBで校務用PCに集約し、印刷する、という方法であった。
そのため成績評価時には、各学年の教務部員が何本ものUSBを校務用PCに入力。ミスがないように配慮しながらコピー&ペーストを繰り返すという作業時間は膨大で、ソフトウェアのサポートが2014年に終了していたこともあり、新しい仕組みの導入の必要性を感じていたという。
小学校として、私立小学校向けの校務支援システム「スクールマスター」の導入と予算化を検討していたところ、中学校高等学校でも大学入試改革に向けたデータの蓄積を目的に、校務支援システム導入の検討を開始。そこで小中連携でデータを活用できるようにするため、同じ仕組みで業務の効率化を図る方向で合意形成し、スクールマスターの導入が決まった。
仮稼働と準備期間を経て2019年度から活用を開始した小学校では、移行もスムーズに進んだ。
長年、表計算ソフトで成績をまとめることに慣れていた教員は、スクールマスターがExcelのデータをそのまま転記することができる仕組みということもあり、操作性も簡単で、最初は質問もあったが一度覚えてしまえばすぐに活用できたという。
校務支援システムの導入により、過去の成績を画面上で一覧できるようになったため、児童の頑張りの推移がすぐにわかるようになった点も大きなメリットだ。保護者面談や個人面談の資料作り、指導要録の所見作成に役立っているという。
これまでは教員がそれぞれ通知表をコピーして保存・管理していたが、校務支援システムで一元化できるため管理も容易になり、書類作成のために参照する時間が大幅に削減した。
また、これまでデータの入力・印刷を担当していた各学年の教務部員は、通知表に関しては印刷するだけになり、業務時間が10分の1ほどになったという。
システム導入をきっかけに通知表の校長印と担任印も電子化。電子印は、校長と担任が確認することで押印することとした。
これにより通知表一枚一枚に押印する必要がなくなり、押印の失敗や、やり直しもゼロになり、時間的にも精神的にも負担が減った。
これまでは紙で記録・保存していた学校日誌も電子化。校務支援システムのデータと連動できるため、教頭の事務負担が大幅に削減した。日付や児童生徒の出欠情報、行事情報、記入者もこれまではすべて手書きで記入しており、作成に毎日1時間程度かかっていたが、導入後は5分程度に短縮することができた。
システム構築やデータ移行期間中は、スクールマスターのSEがリモートで対応した。電話サポートでは、思いついたことや疑問をすぐに伝えることができ、現状の仕組みで工夫して運用できること、新機能を追加すべきことを提示してくれるので、安心して相談することができたという。
変更箇所は文書化して確認してから作業に入るため、意思疎通もスムーズであった。
校務支援システムの便利さが理解できると、教員からは、こんなこともできるのではないか、という意見も多く出るようになっている。
今後は、通学に使っている路線情報や降車駅等で児童を検索できる機能、入学時と小学校2年時、4年時、卒業時の席次を一覧できる機能やアレルギー等既往症を一覧できる機能等も活用したいと考えている。
修了証も校務支援システムと連携してすぐに印刷することができるようにする予定だ。
また、中学校・高等学校では大学入試に向けてデータを整理・蓄積する準備を進めており、2020年度から本格的に導入・活用を開始する。
現在、2021年度の大学の推薦入試等で調査書等を活用できるように準備中だ。
今後も、活用を広げながらさらに便利で効果的な活用を考えていきたいと考えている。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2020年7月13日号掲載