新型コロナウイルス感染症拡大に伴う休校措置が長引き、オンラインでの授業や教材提供、教員の在宅勤務の拡大も求められている。新学期を迎えた各校の様々な工夫を紹介する。設置者としての取組、学校全体の取組、教員としての取組など様々で、短い時間の中、ここまでできるのかと感じる例が多い。授業を録画して配信したり、教材を配信してSNS等で指示したり、双方向のやりとりもできるようするなど、方法も活用しているツールも多様だ。複数の方法を使い分けている例もある。圧倒的に時間は不足しており学校規模や保護者の協力の有無、地域によりできることは変わってくるが、「これまで通り」の授業を見直す機会と考える学校や教員もいる。各校やそれぞれ教員の工夫とアイデアを共有したい。
小規模特認校である柏市立手賀東小学校(佐和伸明校長・千葉県)は休校期間中の子供たちの学習機会を保障するため、双方向のオンライン授業を始めた。3年生以上は4月15日から、1・2年生は4月23日からスタートしている。同校では家庭のWiFi環境やテレビ会議の接続確認を事前に保護者の協力を得て実施した。小規模特認校のため遠方通学が多く、送迎が必要な児童が多いことから、保護者の在宅率が高いのが同校の特色の1つだ。
接続実験も兼ねて最初に試したのは「オンライン朝の会」だ。11名の5・6年生全員が参加した。無事に画面上でお互いの顔を見ることができ、健康観察を行ったり、歌ったりしているうちに児童の緊張もほぐれ、いつもの笑顔になったという。久々に見ることができた子供の笑顔は、教員にとっても励みになる。
次の日は18名の3・4年生全員が同様に実施。オンライン朝の会で、手賀東小の3年生以上全員がZoomによるオンライン学習に参加できることが確認できた。
オンラインによる教科学習は4月16日から5・6年生で実施。6年生は国語の詩を順番に読み、感想を話し合うなど距離を感じない話し合いができた。5年生では算数のデジタル教材を活用。シミュレーションやアニメーションもZoomで配信できた。
オンライン授業は、書画カメラを使って行っている。書画カメラの向きを変えることで、教員の顔と、黒板代わりのミニホワイトボードを切り替えることができる。教員はほぼ同じ位置で授業ができるため、音声も安定しやすいという。
4月17日には、3~6年生で、オンラインによる朝自習と教科学習をスタート。オンライン授業中は、家庭で見守っている保護者が多かったようだ。
3年生以上のオンライン学習が軌道に乗ったことから、1、2年生のオンライン学習も開始する予定だ。柏市のネットワークの問題で画面の動きが悪くなる現象もあり、モバイルルータの貸与など改善策を検討しているところだ。
福岡雙葉中学校・高等学校(谷本昇校長)は3月の休校以降、授業支援アプリやオンラインツールを使いながら、生徒の健康確認や授業・ホームルームを実施している。
4月10日からは、YouTube上に学校公式チャンネルを開設して授業動画を一般公開した。チャンネル登録者数は1210人だ。生徒は自分のスマートフォンやタブレット等で視聴している。なお中学校1年生についてはiPadを準備中だ。
同校では、授業動画を一般公開している。これについて同校の甲斐恭平教諭は「すぐにオンライン授業を実施できない中学高校生の役に立つことができればと考えた」と話す。
授業動画に登場するのは同校の教員だ。
教員の出勤日(4月15日時点で3日に1回程度)にiPadで授業動画を撮影しており、編集も各自で実施。1日4コマを平日朝9時に毎日アップロードできるように配信を予約している。
時間割は、事前に生徒に配信。動画はいつでも何度でも視聴できるものの、長引く休校期間において生徒の生活リズムを整えるため、朝9時から受講、午後に課題に取り組み、一日の終わりに提出するという流れで作成した。
教科は主要教科や書写、保健体育、音楽、家庭科など全教科をアップ。
HRや校長先生のお話、保健室からのお知らせ、新担任のあいさつ、新入生向けにアプリの使い方や課題の提出の方法、生活の過ごし方などもアップしている。
GoogleMeetを使ってオンライン朝礼を行っているクラスもある。Zoomを使った朝礼も行っていたがセキュリティの脆弱性が指摘されたため、今は実施していない。
生徒は、YouTubeの授業を視聴した後、授業内に示された課題や感想、ふり返りをロイロノートで各授業担当へ提出している。これは、授業視聴確認にもなる。
教員は、ロイロノート上に提出された生徒の課題や質問に対して返答する。同校では全教員がLTEのiPadを活用していることから、これらは自宅で行うこともできる。
自宅で学習している生徒は「動画を通じて先生の明るい姿を見ることができて元気が出る」と話している。
保護者向けの連絡は従来から、連絡網サービス「Sigfy」で行っている。メールでもLINEでも受け取ることができるサービスで、保護者は最大3つのメールアドレス、1つのLINEアカウントを登録できる。予約配信や未達連絡の一覧表示、開封確認が可能。保護者からの出欠連絡も受け取ることができる。
横浜市立緑園西小学校(立田順一校長)では、横浜市立学校で在宅勤務が可能になった4月13日からビジネスチャットツール「LINE WORKS」を導入して「仮想職員室」の運営を開始している。「出勤者」と「在宅勤務者」がリアルタイムで情報共有ができることが目的だ。これまでは職員への一斉メール配信等で対応していたが、メールは一方通行になりがちなことから、より利便性の高い仕組みを検討。無料版「LINE WORKS」の運用を始めた。
現在、非常勤講師、職員室業務アシスタントを含め、30名の教職員全員が参加。
活用して4日目(取材時4月16日)ではあるが、教職員への一斉連絡や個別の連絡のほか、カレンダー機能を使って「緊急受け入れ」や「校庭開放」の担当者を確認したり、掲示板機能を使って、在宅勤務時の計画書・報告書の書式や内容等を周知したりしている。
立田校長は「一般のLINEと異なり、原則として実名登録であること、管理職から既読者・未読者が一目で分かることで、大変役立っている。今後はアンケートなど他の機能も活用していきたい」と話す。
今年度の初任者や異動者にとっては、例年以上に新しい環境に慣れることが難しいなか、仮想空間ではあるものの「教職員の居場所づくり」としても機能し始めているという。
業務連絡だけではなく、「雑談」「息抜き」の投稿についても、一定の節度のもとで認めており、在宅勤務の様子や教材研究などを画像で投稿するなど、職員の相互理解に一役買っている。
2018年度よりChromebookを導入しており、現在中等部2年~高等部3年の生徒全員が活用している田園調布学園中等部高等部(清水豊校長・東京都)では、休校開始の3月初頭より学期末まで、学年で毎日、生徒に向けて朝礼を動画で配信。春休みは高校生を対象に、一部の教科で受験補習等の教材配信や、部活動の練習用動画の配信を始めた。生徒は家庭のWiFiで接続している。
今年度は、年度当初に休校中に生徒に向けてできることを全体で検討。Zoomの研修を行い、4月第2週から、各学年で様々な形で授業動画や課題配信、オンライン授業や遠隔授業を行っている。
Zoomによるクラスごとの朝礼ではオンラインで出欠確認や情報発信を行い、生徒の生活リズム作りに役立つようにしている。授業動画や課題の配信の様子は同校Facebookでも発信している。
オンラインの授業動画配信やオンライン朝礼はChromebookを持っている学年からスタート。学校で配布を予定した中等部2年生にはChromebookを各家庭に発送した。各家庭からログインできた生徒からは「2年生になったことが実感できた」「学校と繋がれて嬉しい」「大事に使います」と、早速コメントが届いたようだ。
第3週からは各教科完全実施で遠隔授業を始めた。
各教科で授業動画や、教科書や問題集の解説動画を撮影して、GoogleClassroomやYoutubeのチャンネルより配信をしている。ツールについては各教員が使いやすいものを選択して取り組んでいるが、リアルタイム配信の場合は、Zoomもしくは YoutubeLⅰve(生配信)で実施している教員が多いという。同校のICT教育推進室主任を務める情報科の村山達哉教諭は、「オンラインでの授業はリアクションや反応、ディスカッション活動が行える上、生徒は時間割に沿って授業を受けるため、いつもの学校のような規則正しい生活を送れて良いようだ」と話す。
教員は、在宅勤務でも校内でも同様に、GoogleChatで日々情報を共有。職員会議では「Zoom」、部署ごとの会議には「GoogleMeet」を使ってオンラインで行っている。
保護者には、かねてから使用している一斉配信メールと学内のWebページで情報を発信。教員によっては家庭との面談ツールとしてオンライン会議ツールの利用を検討しているようだ。
春日井市では4月から、学校情報配信アプリ「EDUCOM C4th home & school」を導入して、家庭への情報提供に利用し始めたところだ。当初は今年度中に導入予定であったが、長引く休校により、前倒しした。
「EDUCOM C4th home&school」では、特定の学年、クラス、グループの保護者に対して、安全に情報の公開・配信を迅速に行うことができ、既読も確認できる。学校だよりなどのPDF発信もできる。教育委員会が全校に対して連絡をすることもできる。在宅教員との情報共有も可能だ。全校生徒の健康状態の把握では「EDUCOM C4th home & school」のアンケート機能を活用。保護者はスマホで入力・報告でき、集計は自動でできる。
春日井市立高森台中学校(水谷年孝校長・愛知県)では、4月に予定していたPTA総会についても、アプリを使って書面決議を行った。
学校HP上に各教科のオンライン教材や動画も掲載。春日井市では、市内全中学校で協力をして、中学校3年生を対象に4月分の5教科の教材を作成し、4月20日に公開した(左写真)。
高森台中学校では教員同士の連絡のため、無料のメッセージアプリ「Slak」も全教職員で活用を開始。ファイル共有ができるので、教職員同士の情報共有・相談・連絡に役立っている。
新学期の朝礼は「Google Meet」を使い、オンラインで実施。校長の講話や新任教員の紹介や学級担任発表の動画を配信した。
市では、GIGAスクール構想環境構築に伴い、GoogleforEducationを導入している。
上越教育大学付属中学校(山縣耕太郎校長・新潟県)の遠隔授業は「朝、8時45分にWeb会議システムに生徒全員がログイン」することから始まる。健康観察と連絡、情報交換などを学級ごとに行い、9時から11時50分までは学習で、教員に指示された課題に各自で取り組む。
生徒は、クラウド上の指定された課題や動画にアクセス。時間までに課題を提出する。
各自昼食をとった後は、13時に昼学活。ここでも学級ごとに健康観察を実施。
午後は音楽、美術、保健体育、技術・家庭などで、15時には終了。最後の学活でも健康観察や情報交換、明日の学習課題の連絡等を行っている。
同期と非同期を組み合わせることでネットワーク負荷がかからないようにしている。
関西学院千里国際中高等部(井藤眞由美校長・大阪府)では4月6日からGoogleClassroomでオンライン授業を開始している。「休校対応」ではなく、全教科全教員による時間割を作成した正規授業としての展開で、現在教員はすべて在宅勤務で実施している。
BYODで1人1台環境である高校生は自分のPCを活用。通常、学校所有のiPadやChromebookを活用している中学生は家庭所有のタブレットPC等で授業を受けている。家庭で所有していない生徒には学校からChromebookを貸し出した。
進路オリエンテーションなども遠隔で実施。進路希望調査もGooglefoamで集計している。
遠隔授業については昨年度末の実践で、ZoomやGoogleMeet、facetimeなど様々なツールを活用した。4月から5月6日まで全校で行う遠隔授業では教員や生徒の混乱を防ぐため、GoogleMeetに統一した。
出欠は「毎朝8時~8時半までに、学校より送られてきたGoogle Formのリンクからログインし、入力をする」ことで確認。8時半から40分までが朝のSHRでGoogle Classroomにログインして教員と連絡を取り合う。
同校では3月1日~10日の授業をオンラインで行っており、そのときの実践を共有し、4月の開始につなげた。
3月の休校期間では様々な授業が試みられた。体育では複数のエクササイズを紹介するファイルを共有。生徒が、各自の興味や好みに応じて選択して実施し、行ったことをGoogle formに記入して送信する。
情報ⅠではGoogleClassroom上で、「参照可」形式の確認テストを実施。配信時刻を予告し、制限時間までに提出。全員が予定通りテストを実施できた。テスト実施日までにQ&Aを受け付け、GoogleMeetで表計算について学んだ。
高校1年の保健では、授業で取り扱った内容及び関連しているトピックを1つ取り上げて研究スライドを作成。約6分間の発表を録画してGoogle Driveにアップロード。オンライン授業で生徒たちは、他の生徒の発表動画を視聴し、Google Formを使ってお互いに評価・コメントした。
中学校2年国語では「春らしい何かを探してそれを読み込んだ俳句を作成。自分の見つけた春の写真を送る」というもの。数多くの素晴らしい作品が集まった。
この間の授業について生徒から「うまくいった点」「改善してほしい点」などをフィードバック。課題提示の方法や開始時間の統一、全体の課題の量の調整など、改善点は4月からの授業に生かしている。「普段の授業より質問しやすい、自分のペースでできた」「時間を効率良く使うことができた。送られてきた課題を解いて写真を撮影して先生に送るのはとても簡単で取り組みやすかった」「週に2回くらいオンラインの授業があってもよい」という感想や、改めて対面して討議し合うことの良さに気付いたという感想もあった。
同校のWebでは3月末の実践事例を掲載しており、4月以降の事例も今後、掲載予定だ。様々な課題や生徒の声は、オンライン授業に取り組もうとしている教員の参考になる。
高槻中学校・高槻高等学校(工藤剛校長・大阪府)は4月から、時間割を決めたライブによるオンライン授業をスタートした。
Zoomを使ったオンライン授業は週4日間(1コマ40分・週12コマ)を実施する。
オンライン朝礼は毎朝10時15分から10分間。教員の出勤時間が制限されているため、ライブ朝礼は、教室から配信する場合と、教員が自宅から配信する場合がある。
教員は学校の各教室からライブでオンライン授業を行う。
ライブ授業はクラスにより10時半~12時50分3コマもしくは13時半~15時50分3コマのいずれかで、授業に参加していない時間帯は、学年で指定した学習動画の視聴やネットで配信した課題・演習に取り組む。
学校HP上に教材配布コーナーを設け、ダウンロードできるようにし、生徒は毎日確認している。オンライン授業中に困ったときのために学年別に連絡用携帯番号も用意した。
オンライン授業の時間割予定やID等は、GoogleClassroomやロイロノートで配信している。
準備は4月から開始した。
同校では9日に教員の勤務シフトを組みなおして週2日勤務とし、非常勤も含めて全教員の研修を実施。中学校1年生から高校3年生まで6学年分のオンライン授業のための時間割を編成した。
4月14日から中学2年~高校3年の5学年が、4月17日から中学校1年生が開始。中学校1年生は初日、オンライン学年集会も行った。
授業開始の前日にはオンラインHRを行い、オンライン授業を受ける練習を各担任が実施。ほぼ全員の生徒がオンライン参加することができた。中学校2年生はさらに「オンライン学年始業式」も行った。
同校の前田秀樹教頭は「ライブでオンライン授業をするのにZoomは便利。工夫すればアクティブ・ラーニングもできる。時間割を組んだのは生徒に規則正しい生活リズムを維持させるためだが、休校が延長されればオンライン授業のさらなる拡充を図る予定で、学校HPに『オンライン授業に関するアンケート』コーナーを設けて生徒の声を聞きつつ、教員が様々なアイデアを出して授業を進めている。これを機会にICTを活用した教育がより拡がりそうだ」と話した。
大阪府立芦間高等学校(亀元政志校長)では、教育SNS「Edmodo」の活用を開始した。連休明けも本来の学校教育活動がしばらく実施できない可能性に備え、連休明けを目途に、生徒の学習管理にEdmodoをフル活用する考えで準備中だ。4月16日現在、教職員を対象にEdmodoの校内研修を非同期型で実施し、オンライン上で業務をテレワーク者と出勤者が遠隔で協働し始めている。
Edmodo上に教職員だけのクローズドなグループを作成し、連絡の共有やZoom会議のID等を共有し、オンライン会議、作業の進捗状況の報告・共有、意見交換などを、出勤者・在宅勤務者で居場所に関係なく協働して業務を行っている。この業務経験自体が教員のスキルアップにつながり、連休明けのEdmodoフル活用に生かすことができる。
保護者連絡では、生徒アカウントに保護者を連携して、生徒の「Edmodo」経由で連絡できる。学校から一斉にメールで情報発信できる環境も合わせて利用している。
生徒は学年からの連絡事項の共有にEdmodoを活用している。今後の学習管理への活用に向けて、生徒にEdmodoがどのようなものかを体験させている段階だ。今後の学校再開への動きを注視しながら、Edmodo+Zoomでの遠隔授業・HR、生徒の体温報告等健康観察にEdmodo+GoogleFormsなど、Edmodoを基盤に様々なツールを連携させ、教育活動を止めない環境を準備していく。
Edmodoには、教員・児童生徒・保護者の3種類のアカウントがあり、いずれも無料で使うことができる。児童生徒アカウントの登録にメールアドレスは不要。100MBまでのファイル、リンクをアップロードでき、配信した小テストや課題は自動的に保存される。武井謙治教諭は「Edmodoを学校単位で導入している公立高校はまだ少ないと思う。校内にEdmodo認定トレーナーがいたことで、比較的短期間で実現できた」と語った。
東京都立目黒高等学校(清水智之校長)ではe-ラーニングシステム「駿台サテネット21」を導入しており、生徒は自宅など校外からPCやスマートフォンで視聴できる。
教科「情報」担当の中山享司教諭は、授業動画の配信を開始。YouTubeにアップしてClassiで配信している。4月8日にアップし、109回視聴された。
Classiでは、Webテスト機能や課題提出、生徒連絡に活用。4月からのClassiシステムトラブルにより、問合せが殺到しているところで、保護者や生徒に対しては東京都立目黒高等学校公式アカウントからツイッターで緊急連絡を行っている。
現在、同校では休校措置の長期化に伴い、安全な方法で双方向授業ができるようにMicrosoftTeamsの導入を検討・準備中だ。
東京都では業務の効率化のため情報ネットワーク「TAIMS〔東京都高度情報化推進システム〕」を構築しており、全庁の職員間の電子メールやインターネット、掲示板、スケジュール管理、事務システム、文書管理システムが活用できる。都立学校の全職員にもシンクライアント化されたTAIMS端末が配備されており、端末にはデータが残らない仕組みで校務を行っている。在宅勤務でも職員室とほぼ変わらない環境で仕事が可能だ。
TAIMS端末でSkypeも活用できることから、Skypeでオンライン教務部会等分掌会議や打ち合わせを実施。自宅から参加することもできる。
デスクトップ画面を共有できるので、メンバーは、画面を見て年間行事計画を話し合いながら修正したり作成したりしている。
3月14日にZoomを使ってオンライン卒業式を実施した。急ぎ用意したこともありウェビナー機能(Webセミナーモード)を把握しておらず若干のトラブルはあったものの、卒業式をオンラインで実施できたことでICTの新たな活用を職員間で共有するきっかけになったようだ。
京都産業大学附属中学校・高等学校(福家崇明校長)では2年前から運用しているG Suite for Education(以下、「G Suite」)を活用して、授業動画の配信や問題の配信、レポートや課題の提出、毎日の健康観察など双方向のやり取りを行っている。
中学校ではG Suiteの「Site」を利用した中学学習ポータルを活用。ここで動画配信やGoogleFormで教科ごとに質問を受け付ける他、「すらら」「まなBOX」にもリンクできる。
高等学校では「Classroom」で動画や課題の配信やテストを行い、「すらら」も併用。
初めてClassroomを利用する高校1年生向けには、学校HPに「GoogleClassroom入門」ページを設け、PCやスマートフォンによるログイン方法や使い方を動画で掲載。現在は家庭のデバイスを使ってアクセスしているが、1人1台購入しているChromebookが届き次第、切り替える。生徒用アカウントは、郵送で生徒宅に通知した。
教員同士の連絡や打ち合わせはG SuiteやOffice365などを活用。教科会議など複数で話し合う際、Google MeetやMicrosoftTeamsを使ってオンライン会議を実施している教科もある。
保護者や生徒への連絡は、メール配信システム「ウェブでお知らせ」を活用。互いにメールアドレスを知られることなく、双方向のやり取りが可能だ。「生徒用」「保護者用」が用意されているので、学校全体への一斉連絡のほか、学年主任から学年の保護者・生徒へ、担任からクラスの保護者・生徒へ、個別の保護者や生徒への配信もできる。
神奈川県立川崎北高等学校(柴田功校長)の教員は3チーム交代で在宅勤務を行っており、在宅勤務に向けたICT活用校内研修会を柴田校長が講師となって行った。30分間程度で、クラウドサービスを使ったアンケートフォームやQRコードの作成、カメラ機能での動画撮影、音声入力やスライド資料の作成などだ。
まずは有志の教員で、休校が継続している生徒たちに向けて動画メッセージを作成。新入生のために校舎案内や着任者紹介、授業ガイダンスなど少しずつ動画コンテンツを制作・追加している。今後、GoogleClassroom内で講義動画などを配信する予定だ。柴田校長は「多少トラブルがあってもテイク1だけで終わらせること、Chromebookだけて撮影できること、凝った編集は行わないことなど、動画配信を継続するためのノウハウがわかってきた感じがする。今ある機材で簡単にやれることをやっていきたい」と話す。
在宅勤務と出勤の教職員が一斉に打ち合わせできるように、GoogleMeetの活用も開始。出勤している教職員はChromebookから、在宅勤務の教職員は個人のスマートフォン等から参加できる。
現在オンライン授業等の準備を進めている福岡女学院中学校・高等学校(藤義幸校長)の落合道夫教諭は高校2年物理の授業で、教育用SNS「Edmodo」とZoomによる遠隔授業を開始している。
「Edmodo」では、提出期限の設定や提出状況の管理、「コメント」での再提出依頼などができる。1人ひとりの作品投稿を全員で共有でき、各作品にコメントすることもできるので、生徒同士のコミュニケーションづくりに役立っている。小テストの作成・提出・自動採点・管理も行える。Office365上で作成した動画や資料の投稿も可能だ。
落合教諭は「個人の裁量で開始できる」ものとしてEdmodoを開始したが他の教員にも広がりつつあるという。「授業の予習・振り返り、諸連絡にはEdmodoはとても有効。特に、4月始めでクラスづくりが大切な時期に、Edmodoで生徒同士のコミュニケーションを図ることができた。Zoomを使って対面の機会も提供しながら両者を相補的に使うことで現在うまく行っている」と話した。
女子聖学院中学校・高等学校(山口博校長・東京都)は4月13日からオンライン授業を開始した。準備期間は4月9~11日。中学生は1日に4~5教科、高校生は5~6教科の時間割があらかじめ曜日別に決められている。
生徒は毎朝9時前に送信されるメールを確認し、Google Classroomを利用してその日の課題に取り組む。オンライン授業は原則、主要5教科で9時~12時に実施。録画された授業動画を視聴して課題に取り組むなどだ。午前中に終わらなかった課題は午後に取り組み、当日、17半までに提出する。
週初めには「体操」の課題も配信。毎朝、山口校長やチャプレン、ネイティブの教員による礼拝動画も配信。担任との「オンライン面談」も開始している。
生徒に実施したオンライン授業に関するアンケート調査では、6割の生徒が「開始時間を決めて始められている」と回答。4割の生徒は「少し遅れても午前中しっかり取り組めている」と回答している。
2月28日にオンライン授業実施の方針を学校で決め、Zoomを使った授業の準備を開始。「午前中は健康観察と朝読書、3コマ授業」を月~金で実施した。
授業は、各授業を担当する教員の部屋(Zoomのブレイクアウトルーム)に児童が入る、という方式で、顔を見ながら話し合いがしやすい。
1コマ45分間で、活動時間を必ず設け、課題提出やふり返りも行っている。
新学習指導要領に対応した教科書にはQRコードが豊富なため、動画視聴やシミュレーション視聴などの課題も示しやすい。提出が3回なかった児童は、保護者に連絡ツールで知らせている。
2014年度からiPadを年次進行で整備しており、全学年が所持済。不足分はChromebook20台を確保して貸与。4月27日からは「keiaiチャンネル」として授業も配信している。日々の取組は、ブログで公表している。
1人1台のChromebook活用をスタートしたばかり。Zoomの活用は休校になってから決め、オンラインでHRを実施。第一目標を「心理的なストレスを柔らげること」として取り組んだ。
毎朝、時間を決めてZoomでオンラインHRを実施。9時から30~40分程度とし、全体で連絡事項の後はブレイクアウトルームに移動。課題を設定してグループごとに話し合う。
おすすめの本、漫画、休日の過ごし方、大切にしているものを紹介し合う、チャット機能を使ったジェスチャーゲーム、家にあるもので47都道府県探しなど、つながる楽しさを実感できる時間とした。クラスで楽しむ時間、共に笑える時間があるからこそ、学習に向かう気持ちになれると報告した。
3月26日に教員用iPadを更新し、ログイン設定を確認。「G Suite」の児童アカウントを準備し、Zoomの使い方を確認。学校のPC教室に即席スタジオを作った。
家庭でインターネットに接続できる端末を調査。XPからAndroidと様々であったことから、ChromeOS上で動くものを考えた。
兄弟姉妹で時間が重ならないように配慮。2週間程度で保護者からの問合せは激減したものの、連絡等でミスがあると、保護者も不安になる。保護者負担を和らげるアナウンスやミスが生じにくいようにシンプルな方法を考えることが重要だ。ZoomだけではなくYouTubeで視聴できるなど、複数の方法を設定しておくほうがよい。
苦労はあったが子供の笑顔を見ると救われる。
これはチーム戦。思い切って捨てていくものもあっていいのではないか。
さとえ学園小学校は休校中も毎日6時間、オンライン授業を行っている。GoogleClassroomを使って課題を配信・提出を実施。朝の会はオンラインで行う。保護者の評判が良かったのは、オンライン授業参加の際には制服を着用すること。生活リズムが生まれたようだ。
当初は休憩時間を10分間としたが、5月以降は時間割を変更。長い休み時間を設定する、終わりの学活は相談タイムとする、オンライン保健室でカウンセリングを行う、雑談タイムの設定などに取り組む予定。
紋別市教育委員会では児童生徒や大人を含めた運動不足解消に向け、北海道コンサドーレ札幌から紋別市に派遣中の小山内貴哉コーチによる、自宅でできる運動の動画を公開した。今回の動画は「目をつぶったまま30秒間片足で立つ」というもの。シンプルな運動も実際に取り組む姿を見ることで挑戦したい気持ちになる。双方向でオンラインHRなどを行っている学校なら、室内でできる運動を全員一斉に行うこともできそうだ。
東京都は4月、東京都緊急対策(第四弾)と令和2年度4月補正予算(案)を公表。都立学校は今年11月を目途に、都内区市町村立学校は今年度中にオンライン学習ができる環境と通信基盤を整備する。オンライン学習支援ソフトの活用、ソフト導入に対する支援員の配置、モバイルルーターの通信費等に対する都独自の補助を実施。TOKYO MXの協力のもと、学校の朝の会と帰りの会や、家庭でできる体操、国語や算数の学習コーナー、新型コロナウイルス感染症予防対策などのテレビ番組も放映。
都内自治体に対するWeb会議システムの利用も支援する。
長野県教育員会は4月17日、「新型コロナウイルス感染症に対応するための今後の施策の方向性」において、「学校を閉じても学びは止めない」方針を明らかにした。
休業期間中の学習の遅れを取り戻すための計画と、より効果的な授業を行うことができる環境整備に取り組む。
『長野県学びポータルサイト』(仮称)を構築し、教材、授業動画、主体的な学びへの動機づけ資料、家庭でできる運動動画等を一括配信。
今回の教訓を踏まえ、GIGAスクール構想の環境を早期実現し、すべての学校でオンライン授業を実施するための環境整備に着手する。
児童生徒1人1台PCの整備を進め、子供が家庭に持ち帰ってオンライン授業を受ける環境を整備。無線LAN環境のない家庭に対してはモバイルルーターを貸し出す。児童生徒の障がいに対応した入出力支援装置も整備。県教委は、県の企画振興部と連携した「スマートエデュケーションPJチーム」において、ICT機器導入にあたる課題等に関する相談支援を行う。情報通信環境が未整備で不安を抱える家庭に対する操作方法なども説明。
教員のICT活用習熟度も向上。「生徒の出欠や健康観察等ができる程度のビデオ会議システムの活用」「授業支援アプリケーションの活用」「ビデオ会議システムと授業支援アプリケーションを使った双方向のオンライン授業」の習熟に向けて、機器の設定や操作方法を説明した動画、情報セキュリティ・情報リテラシーに関する動画を『長野県学びポータルサイト』(仮称)で公開する。
奈良市教育委員会は休校期間中もオンラインで児童生徒とコミュニケーションが展開できるように、ビジネスコミュニケーションサービス「LINC Biz」を採用した。これによりチャットとビデオ会議が可能になり、オンライン上で教職員と児童・生徒がコミュニケーションできる。
市立小中高等学校全65校・804学級・約2万4000人の児童・生徒は、各自が所有する端末から奈良市提供の専用サイトにログイン。学校や教職員から連絡事項を受け取れるほか、教職員に対し相談や質問を行うことができる。ビデオ会議を通じ、実際の授業と同様に質疑応答もできるオンライン授業の実施や健康状態のヒアリングも予定。「LINC Biz」はシャープの子会社「AIoTクラウド」が提供・支援。
奈良市ではタブレットPCのうち約2000台を家庭学習用に貸出す準備を進めている(詳細1面)。奈良市の仲川げん市長は「数に限りがあるため全校一斉に双方向型の授業は物理的に難しく、まずは授業動画の配信からスタートしたい。小学生は顔見知りの先生が登場する事で安心感や学習意欲が高まる事を期待している」としている。
4月14日からは実際の学校や家庭で実証実験を開始。まずは指導主事がデモ授業を配信し、現場教員も行う予定。
教員の在宅勤務も実施。
新型コロナウイルス対策を契機とした社会経済活動を維持するための環境整備を進めるため「ちばしチェンジ宣言!」を発表。教育分野では、オンライン教材「ドリルパーク」を導入してどのような状況でも学べる環境を保障。児童生徒に1人1IDを付与して学習履歴を保存。将来的には習熟度別の指導を可能にする。
保護者との連絡もデジタル化を検討している。
教育委員会と学校間の会議も4月からSkype活用を試行。事業者とのやりとりも可能な限り遠隔で実施できるようにする。
4月8日から5月6日まで学校・園を休校とした寝屋川市では臨時休業中においても学習に遅れがでないよう、小学1年生~小学3年生には、市教育委員会作成の授業動画を配信。小学4年生~中学3年生にはIDを発行して民間事業者の授業動画を提供する。
長野県喬木村では、NPO法人eboardと授業動画のデータ提供について協定を締結し、休校期間中、インターネット環境がない家庭でも自宅でeboardの学習教材を利用できるようにした。eboardは、授業動画とデジタル問題集でインターネット環境があればどこでも学べるオンライン学習教材。これを村内のケーブルテレビ「いちごチャンネル」で放送する他、児童・生徒用のタブレットPCに動画を保存し家庭に持ち帰って学習することができる。
堺市教育委員会では4月15日から、新小1~新中3の児童生徒を対象に、インターネットで視聴できる授業動画の配信を開始した。動画は教科書の内容に基づいた文字やイラスト、図等を示しながら、教育委員会事務局職員が解説のナレーションを吹き込んだもの。動画1本の時間は10分程度を予定。視聴できる環境にない児童生徒については、個々の状況に応じた対応を予定。
福岡市教育委員会は、2020年2月4日から開始した福岡市の教育専用クラウド「福岡 TSUNAGARU Cloud(つながるクラウド)」を利用し、休校中の家庭学習の進め方や学習動画の配信を3月4日から開始した。
5月開始予定であった「福岡市こども SNS 相談2020」も当初の予定より早め、4月13日から開始。休校期間の心のケアにあたる。
4月13日から福岡市立学校として初のオンライン学習を実施。初日は始業式・着任式・HRを経て、オンライン授業を行った。学校から学習プラットフォームを用いて生徒へ課題を配信し、ビデオ会議システムでHRや課題の解説等を行う。生徒は自宅で課題を受け取り、解説を受け、質問をすることができる。今後、国語・数学・英語1日3時間を実施予定。
学習支援特別テレビ番組「くまもっとまなびたいム」を4月20日からスタート。教育センター職員や学校教員、ALT、博物館学芸員が出演して低学年向け、中学年向け、高学年向け、中学生向けコンテンツを発信している。
休校中の心のケア対応として、SNSを使った相談「ほっとらいん」も4月17日から開始。これは、市立小中高・特別支援学校生対象のLINE相談で、大学生サポーターもしくは専門心理カウンセラーに個別相談したり、友達登録している全員に質問したりすることができる。
熊本市で配備しているタブレットPCを活用したオンライン授業や遠隔授業も推進。Zoomやロイロノートを使った健康観察や課題の説明、課題の共有、課題の提出、発表などを行う方法などをWebで紹介している。
各校では学校配備のタブレットPCを家庭に貸与し、オンライン授業を開始。PCは全員分はないため、高学年のみとしている学校や、家庭で視聴できる環境があるかどうかを事前に聞いて貸与するなど工夫して進めている。
小学校4~6年生児童にタブレットPC及びケーブル、充電アダプタを貸し出し。8時50分までにロイロノートとタブレットPCを使った健康観察を行う。9時35分からは学習時間で、時間を決めてその日のうちに課題を提出。その後、質問時間としている。
タブレットPCを使ったオンライン授業を4月20日から5・6年生で開始。
家庭でオンライン授業が難しい生徒に学校用タブレットを貸与。4月15日にオンライン授業の試験運用として健康観察を実施。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2020年5月11日号掲載