中央大学は、警視庁サイバーセキュリティ対策本部、LINE、メルカリと「サイバーセキュリティ人材の育成に関する産官学連携についての協定」を2019年12月に締結した。
政府が提唱するSociety5・0の実現のためには、AIやITの技術だけではなく、それを扱う人材のリテラシー向上が不可欠だ。警視庁も、サイバーセキュリティの知識・技能を有した人材の育成は急務としている。
今回の協定によって、産学官それぞれの強みを活かしながら、サイバーセキュリティの脅威への対処能力を備えた人材を育成していく。
「『官』の強みである犯罪捜査及び犯罪情勢に関する知見、『学』の強みである学術研究に関する知見、『産』の強みである情報通信技術やリテラシー教育に関する知見を、それぞれ持ち寄ることで、人材育成に対する相乗効果を発揮させ、サイバーセキュリティの脅威への対処能力の向上を目指します」(中央大学広報室)
今回の協定相手であるメルカリは、青少年や教育関係者向けに、ネット取引や個人間商取引、お金の管理などに関する講演活動を継続して行っている。
ネットによる個人間商取引に関するネットリテラシー教育プログラムも開発し、学校の副教材として活用されている。
また、LINEは、青少年の情報リテラシー・情報モラルの向上などを目的とした啓発活動に力を入れ、これまで全国で約1万回の講演活動を行っている。
「メルカリは、ネット取引や個人間商取引に取り組んでおり、LINEはネットリテラシー啓発活動に注力しています。両社とも本学の志向に合致しており、また、三者ともに青少年が教育・サービスの主な対象という共通点があります。今回の連携によって、人材育成に対する相乗効果を発揮させていきたいと考えています」
まずは新入生に向けて、リテラシー教育を行っていく。
「新入生は、大学入学を機に生活環境が大きく変わります。ひとり暮らしを始めたり、アルバイトを行う学生もいます。2022年度からは、成人年齢が引き下げられるという社会的な変化もあります。まずは、こうした生活を取り巻く大きな環境の変化という背景も踏まえて、SNSやフェイクニュースなどに対するリテラシー教育を行っていく予定です」
ほかにも、大学生向けリテラシー教育ハンドブック作りへの学生参画、関連講座の実施、ゲストスピーカーの派遣などを計画している。
2019年4月、「情報の仕組みと情報の法学の融合」をテーマに、国際情報学部を新設した。文系学部でありながら、基礎的な「情報の仕組み」を学びつつ、中央大学の強みである法律学を基礎とした「情報の法学」も学べるのが特色だ。
2023年には、法学部を都心(東京都文京区)に移転する計画で、法科大学院との連携による教育体制をより一層充実させていく。
今後は、今回の協定携を踏まえ、国際情報学部だけでなく、全学規模でAI・通信技術やデータサイエンスを扱うリテラシーを備えた人材育成に取り組んでいく考えだ。
(蓬田修一)
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2020年4月6日号掲載