GIGAスクール構想の補助金では、「児童生徒1人1台のPCを円滑に活用できる環境」に必要なものを「ネットワーク整備」であるとし、「充電保管庫」は「安全かつ円滑に充電できる環境」として盛り込まれた。PC整備の前に充電保管庫を整備する必要がある、という自治体もあるだろう。「整備済の充電保管庫に整備したPCが設置できない」ことは避けたい。充電保管庫は各社から出されており、それぞれ特徴がある。大規模校で大量PCの保管・充電が必要な場合と小規模校の場合では必要とされる機能も異なる。選択のポイントをまとめた。
キーボード装着の有無やVAケースのような衝撃吸収ケースの有無によりPCのサイズや厚みが変わる。バッテリー部分が3センチ以上の厚みになる機種もあり、充電保管庫の収納可能内寸の確認が必要だ。
iPad専用保管庫も各種あるが「GIGAスクール構想」端末仕様書では「キーボード」が必須となっていることから、iPadもキーボードを付属した提案になっており、キーボードを装着したままiPadを充電できるタイプ(「Smart Connector」端子経由で給電できるもの)もある。「カバーやキーボードを装着したままiPadを充電する」場合も充電保管庫に収納できるかどうか確認したほうが良さそうだ。
キーボードを装着せずに充電する場合は、キーボードの保管場所も必要になる。
ケーブル差込口の場所はPCにより異なる。長手の場合の収納も注意が必要だ。
ACアダプターの大きさにも制限がある。OAタップのサイズによってはアダプター同士が干渉して想定した数がタップに収まらない場合がある。OAタップが装備されている場合は各社に確認しておきたい。
大規模校ほど整備すべきPCの数は増え、必要な充電保管庫の数も増える。建築基準法によると教室の床設計用の積載荷重は2300N平方メートル(約234キログラム)(Nは床のたわみを示す)。充電保管庫の重量とタブレットPCの重量を考えた設置場所の検討が望ましい。充電保管庫によっては40台収納すると200㎏を超える場合がある。
補助要件として「固着」が求められており、何らかの工事が必要になる。今後の学校統廃合やクラス数の変遷、そもそもの学習形態の変動の可能性を考えると「一切動かせない」設備は不便な点もありそうだ。望ましい学習環境としての工夫が求められているところだ。
3月に急遽開始した休校措置など突発的な事態が起こった際、1人1台PC環境にある学校では、様々な学習支援や健康調査等をICTで行うことができた。いざというときに家庭に持ち帰ることもできる、という環境はあったほうが良い。その際に必要になるのが「家庭でも充電できる環境」だ。「充電保管庫にセッティングしているケーブル」を簡単に取り外して持ち帰ることを想定した整備も考えられる。
コンセントの許容電力量を超えずに充電する必要がある。輪番方式の充電は、これを避けるためのもので、次のような種類があり、価格に反映する。大規模校の場合は電力工事を回避するために高機能が必要な場合もある。
▽タイマー輪番方式=給電を設定した時間に従って順番に行う。機能がシンプルで比較的安価。
▽監視輪番方式=各コンセント量に流れる電流を観測して80%程度まで急速充電し、次の充電を始める。高機能のため比較的高価。
いずれの場合も開始時間や停止時間を設定できるタイマーがあれば、開始時間を教室ごとに変更するなどの運用上の工夫ができそうだ。
「GIGAスクール構想」を踏まえ充電保管庫メーカーもこれらのことを踏まえて様々な提案をしている。
GIGAスクール構想仕様として42台収納の充電保管庫「ES-M42C/TR」を提案。仕切り板は取り外し可能。学校の電源設備に配慮し、ブレーカー付き輪番充電機能を装備。簡易輪番給電を採用し、「上段21台を4時間充電後、下段4時間充電、さらに上下段4時間充電し、補充充電後停止」する等、充電時間の設定や停止機能を変更できる。鍵は内筒交換タイプ。キャスター付きで固着する場合の専用固定金具を用意。重量65キログラム。収納部内寸W30・5×D362×H249ミリ。
少人数向けの12~22台タイプは重量36キログラム。
20台収納できる「C20i」は16インチまで対応。スマート充電機能(インテリ輪番)では2つのグループに分けて充電・管理。最も充電が必要なPCを判断して電源供給。全てのPCの電池残量が均等になるように充電する。8Aブレーカー付き。収納部内寸W36×D419×H330ミリ。製品保証期間本体10年・電気部5年。固定フック(地震対策・盗難防止用チェーンフック)あり。重量65・6キログラム。
36台収納できる「E36c+」は15インチまで対応。3系統を一定間隔で切り替える輪番充電。周期的に充電し、規定充電量未満時には一斉充電する。収納部内寸W32×D380×H260ミリ。製品保証期間は本体10年・電気部5年。固定フック(地震対策・盗難防止用チェーンフック)あり。重量56・2キログラム。
44台収納できる「C44i」はインテリジェント輪番方式。タイマーは開始時刻と実行時間・曜日を5パターンまで登録できる。60分に一度タップ毎の必要充電総量をスキャンし、効率的な時間配分を計算して充電。12Aブレーカー付き。充電時の発熱を放熱する設計。収納部内寸W32×D350×H235ミリ。製品保証期間は本体3年・電気部3年。重量87キログラム。
いずれも南京錠を別途用意する必要がある。
コストや納期などGIGAスクール構想に向けた要望に対応した新設計「TablerCart Ver8」を新発売。パーツ選定から製造工程まで見直したハイコストパフォーマンスモデルで最大48台のタブレットPCを保管・充電できる。
収納サイズはW27×D355×H280ミリ。仕切板の取り外しで収納台数を変更可。扉は鍵付き(前面・背面)。合計で1500W以内の使用電力に対応。重量70キログラム。保証期間1年間。OAタップ付属なし。オプションでタイマー付きタップなどを用意。放熱ファン低速タイプもオプションで用意。
40台バージョンでは、35ミリ以下のタブレットPCを収納できる。
新たにタブレット収納ケースも提供。11インチ以内程度のタブレットPC10台を収納できるケースで、最大4個のケースをタブレットPCごと「Ver8」に収納できる。
収納ケースは取っ手付きで教室移動の際に持ち運びやすい。
充電保管庫を各種提供。
同じ外観・サイズで収納数や施錠方法、収納内容など10種類のバリエーションを用意。トレイの仕切り板を取り外して棚をカスタマイズできる。トレイの高さもドライバーで調整可能。
24台収納の場合の内寸サイズはW37×D300×H256ミリ。48台収納の場合はW18ミリ×D300×H256ミリ。
スマートフォンならば72台まで収納可能。上段をスマートフォンに、下段をタブレットPC用にすることもできる。
施錠はシリンダー錠とIC錠を用意。重量は選択内容により、50・3~55・3キログラム。オプションで、排熱用ファンユニット、ON/OFFタイマー、ICカード、USBハブ(10台のiPad充電とデータ同期ができる。連結すれば最大40台まで管理可能)など。
iPadを収納しながら同期・充電できるタイプであれば短時間で一括管理ができる。PCを接続することで同期モード、充電モードを切り替える。20台収納サイズW37×D300×H256ミリ。40台収納サイズW18ミリ×D300×H256ミリ。重量は選択内容により、52・9~60・5キログラム。
小学生でも手軽に持ち運べるカラフルなプラスチックのバスケットが特徴。このバスケットと天面がスライド式で開閉する筐体で、機器の配布と回収時の充電保管庫周りの渋滞を防ぐ。大型バスケットはケース付きなど13インチのタブレットPCを5台収納できる。Carrier20はこのバスケットを4台(タブレットPC計20台)収納・充電。重量48・6キログラム。40台・60台収納タイプもある。バスケット収納可能サイズ:370 (W) x 234.2 (D) x 24.5 (H)ミリ
30台収納タイプ、40台収納タイプも別途発売を開始。
Carrier Cartシリーズは充電状態を外側のモニターで確認できる。過充電を防止し、バッテリーの寿命を長持ちさせる輪番充電機能がある。オプションのアンカーキットでカートごと床にロックできる。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2020年4月6日号掲載
シャープは、輪番タイマー搭載充電保管庫を発売した。すぐに充電できる「授業時間内充電」、決まった時間に充電する「放課後充電」、「長期休暇中充電」という学校ならではの充電機能を選択できる。即時充電の場合、30分から16時間まで15分単位で設定でき、保管庫内に収納した学習者用PCを2つのグループに分け、あらかじめ設定した時間通りに2系統を順番に充電する。
輪番タイマーは単体でも販売できる。