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教育ICT

小学校プログラミング教育 最初の一歩は”楽しい”が重要~渋谷区立長谷戸小学校

2020年2月4日
イモムシ型ロボット「コード・A・ピラー ツイスト」でプログラミング

イモムシ型ロボット「コード・A・ピラー ツイスト」でプログラミング

2019年度学校情報化優良校であり、東京都教職員研修センター教育課題研究「プログラミング教育」研究協力校に指定されている渋谷区立長谷戸小学校(佐藤公信校長・東京都)は、ScratchやMakeCodeほかのビジュアルプログラミングや教育用小型PCmicro:bitなどを活用してプログラミング教育に取り組んでいる。1月22日、STEAM教育の一貫で、3年生はイモムシ型ロボット「コード・A・ピラー ツイスト」(マテル・インターナショナル)を活用したプログラミング授業を行った。

渋谷区立長谷戸小学校

皆が「ピラーくん」を応援成功するとガッツポーズも

皆が「ピラーくん」を応援成功するとガッツポーズも

電子黒板前のクロスを取り払うと、11台の「ピラーくん」が現れた。「わーい!」「かわいい」と児童は声を上げる。同校ではイモムシ型ロボット「コード・A・ピラー ツイスト」を「ピラーくん」と親しみをこめて呼んでいる。

同校ではSTEAM教育を「もの作りやロボット教材、プログラミング学習等を通して、試行錯誤しながら主体的に課題解決に向かう学習」と考えて取り組んでいる。望月伸司副校長は、この日の授業の流れを児童に説明。これも「見通しをもって主体的な活動ができる」ようにするためだ。

まず、ロボット「ピラーくん」の機能をペアで調べ、ワークシートに整理してから、ロボットを使ったオリジナルの遊びを考え、制作。最後に皆に発表する。

ロボットを各ペアに渡すと、児童は大事そうに抱えて自席に戻った。「かわいい」からこそ大事に扱わなければ、という気持ちが自然にわくようだ。「自分たちで調べていろいろ発見してね。教えてほしい?」と望月副校長が言うと「教えないで!」「自分で調べるほうが楽しい」と答えている。

ロボットの身体には5つのダイヤルがあり、ダイヤルでそれぞれ4つの動きを選択できる。「前」「右」「左」のダイヤルは共通だが、もう1つは「葉」「月」などのイラストが描かれている。児童は早速、さまざまなボタンの機能を確認。ワークシートにメモしていった。体育館には10台のピラーくんが動きまわっている。児童はお互いのピラーくん同士がぶつからないように配慮している。

発表の際には「足跡マークでは動物の鳴き声がします」「葉っぱマークでは葉っぱを食べ、ゲップをします」「背中に消しゴムを乗せて運ぶことができます」「音符マークでは楽しそうに歌います」などの発見を報告。「ぼくたちもそれを発見した!」「へえ、そうなんだ」と、互いの発表を興味津々で聞いている。

次は「オリジナルの遊びつくり」だ。望月副校長は「PCに命令すること」がプログラミングであると児童に思い出させ、ピラーくんにダイヤルで動きの指令を出すことも「プログラミング」であると説明。「ピラーくんをプログラミングして新しい遊びを考えよう」と課題を言い換えた。

ペンを持って円を描画

ペンを持って円を描画

ピラーくんにペンを持たせて模造紙に絵を描かせているペアは、ペンの向きを調整してきれいな円を描くことに成功。

ブロックで作った大きなショベルをブルドーザーのようにピラーくんの頭部に装着し、おもちゃを片付ける「ピラー掃除機」つくりに挑戦しているペアもいる。

「もっと難しくしたい、難しいほうがおもしろい」と、NHKの名作動画「ピタゴラスイッチ」のようなからくり装置づくりに挑戦しているペアも多い。試しに動かしてみると、微妙な段差に引っかかって動かなくなったり、ブロック装備がピラーくんから外れてしまったり。その都度、話し合いながら動きを調整したり、当初の構想を修正したりした。

発表の際は、各ペアの装置の周囲に集まって実演に注目。皆がのぞきこむので、ピラーくんが見えなくなるほどだ。うまく動かなかった際にはアドバイスも自然に飛び交う。成功したペアも成功しなかったペアも、「次はこうしたい」と新たな取組を考えていた。

望月副校長が「楽しかったね!この授業の前後で、パワーアップできたところは?」と、ふり返りを促すと、児童は「最初は、新しい遊びなんて作れるかな、と心配だったけど、楽しかった。自信がついた」「うまくいかないときもいろいろ考えて、調整することができた」「楽しいことを思いつく発想力がパワーアップした」と、それぞれが手応えを感じていた。

授業後、望月副校長は「プログラミングの最初の一歩では、楽しさや創造性、主体性を刺激する取組としたかった」と語った。

クラス1台でも活用できる

静岡大学教育学部の塩田真吾准教授はマテル・インターナショナルと共同研究を行っている。この日の授業を見学した大学院研究室の髙瀬和也氏は「コード・A・ピラーを用いた授業は論理的思考力の育成に重きを置いたものが多いが、今日は創造性や主体性をより意識した授業内容になっていた。子供の予想外のアイデアに感心した。3年生にとって可愛い教材は久々で、新鮮だったのでは」と話した。この日はペアで「コード・A・ピラー ツイスト」を活用していたが「グループに1台や、クラスに1台でも授業は可能。課題を与え、カードを使って考え、その通りの動きになるか実機で試す授業はじっくり考えてから試すこともでき、台数が少なくても実践できる。1台5000円程度とプログラミング教材として安価な点も特長だ」と話した。

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2020年2月3日号掲載

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