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教育ICT

デジタル・シチズンシップと著作権教育 <5>「ICT教育に必要な情報モラル教育」

2020年2月3日
連載:35条改正&学校教育

“今”を捉えた情報モラルを身につける

社団法人コンピュータ 一般ソフトウェア著作権協会(ACCS) 専務理事・事務局長 久保田 裕

一般社団法人コンピュータ
ソフトウェア著作権協会(ACCS)
専務理事・事務局長
久保田 裕

これまで、著作権法35条の改正で教育現場はどう変わるかについて、現在および改正後のルールとその準備状況について解説してきた。価値デザイン社会、Society5・0時代に適合したICT教育の仕組みの構築や法整備が進みつつある現状において、忘れてはならないのは、ICT教育を受ける子供達自身が情報モラルをどう涵養していくかという点だ。

子供たちは家庭での経験もあってICT機器の操作については比較的容易に習得することができるだろう。しかし、他人の情報を適切に取り扱い管理し、自己の創作や情報発信を適切に行うためには著作権の知識だけでは不十分だ。

例えば、自分が友人を撮影した写真を友人に無断でインターネット上にアップロードすることは、自分が著作者だから著作権を侵害する行為ではない。その一方で、友人の肖像権を侵害する行為でもある。同じように、自分の日記を公表することは、著作権侵害には当たらないものの、書かれた内容によっては、他人のプライバシーを侵害するおそれもある。

そこで、著作権に加えて「情報モラル」を身につけることが重要なのだ。

情報モラルとは、情報社会で適正な活動を行うためのもとになる考え方や態度のこと。情報モラルに含まれる要素としては、①情報そのものを守るルールである著作権などの知的財産権、②名誉毀損罪や脅迫罪、業務妨害罪が定められている刑法や、不正アクセス禁止法など、情報社会で守るべきその他の法律、③個人情報やプライバシーの取り扱いについて、④ICT機器を安心安全に使うための情報セキュリティ、⑤必要な情報がどこにあるのかを見極め、情報の真偽・価値を判断し、正確な情報を入手する能力である情報リテラシー、⑥そしてネットを通じたコミュニケーションでの適切な振る舞い方やマナーである。

最も重要なことは、単にこれらの知識を「知っている」だけでは不十分で、これらの知識をもとにして、自分の行動がもたらす結果を想像し、その上で、「トラブルになりそうな情報発信は行わない」「トラブルを避ける振る舞いをする」というよう行動ができて、初めて情報モラルが身についたといえる。そして、情報モラルは自然に身につくものではなく、学校や家庭での教育が不可欠なのだ。

とはいえ情報モラル教育をどこから始めたら良いか悩ましいのもまた事実。私は、自分たちで守るべき「情報モラル10か条」をつくることを薦めている。

子供達に、自分たちが暮らす情報社会はどのようなものかを改めて捉え直してもらい、どうすれば適切に行動できるのかといった課題を抽出して10か条にまとめる作業をしてもらうことで、お仕着せでない行動規範を作り上げることができ、教育効果も高いと考える。

例えば、松本大学の江成先生は、学生が自ら情報モラル10か条をつくる講義を行うようになってもう8年になる。

10か条づくりには私も協力している。今年度も「環境社会学」の中で班ごとに情報モラル10か条を作り、最終的には講座としての10か条にまとめ上げた。

この8年間につくられた情報モラル10か条を見ると、利用する機器やサービスが日進月歩で変わる中で、「今」を捉えたものばかりだ。私たちが考える「抽象的な情報社会」をベースに議論していては今何をすべきかを見誤ってしまうだろう。

10か条を作るのが大変であれば5か条でもよい。
まずは作ってみることが重要なので、ぜひ挑戦して欲しい。実践に興味がある先生方はACCSに連絡してもらえたらと思う。

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2020年2月3日号掲載

デジタル・シチズンシップと著作権教育

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