東海大学付属札幌高等学校(髙橋望校長・札幌市)は新校舎の建築をきっかけに、ICT環境を強化し、2019年度の新入生からiPadを1人1台で活用している。高校1年コミュニケーション英語では、「Power On」(東京書籍)に準拠した学習者用デジタル教材を導入。学習者用デジタル教材を活用している高等学校は、全国的にもまだ少ない。授業の様子を取材した。授業者は浅野遼教諭。
浅野教諭は、デジタル教材で1~2段落の新出単語を黒板に提示しながらクラス全体で確認。生徒は各自のiPadに単語のフラッシュカードを提示して、発音を聞きながらノートにスペルを練習し、書いて覚えている。30秒間で何個書けたかも確認した。
次に、本文を黒板に一文ずつ提示して音声を流し、熟語や現在完了形、受動態などの文法事項について、チョークで書き込み、既習事項の復習も兼ねて生徒とやりとりしながら解説していった。
生徒はiPadで本文の発音を聞いて意味を確認したり、新出単語や重要表現を隠して提示できるマスクモードにして、発音を聞きながらマスキングされた単語のスペルをノートに書いていった。イヤホンをして聞く生徒もおり、全員がそれぞれの方法で熱心に学習に取り組んでいた。
学習者用デジタル教材について生徒は、「発音を聞くことができる点がとても良く、自分で学びやすい。通学途中などでも取り組めるようにスマートフォンでも活用したい」と話した。
同校では伝統的に部活動が盛んで、全国大会出場の実績も多く、スポーツ推薦で大学に進学する生徒も多い。一方で、英語に苦手意識を持ったまま入学する生徒もいる。
そこで浅野教諭は「英語に苦手意識を持って入学してくる生徒にとって、高校1年次に英語の学び直しを授業中に可能なかぎり行うことで、苦手意識を克服し、英語に楽しく取り組む姿勢を醸成したい」と考え、iPad導入をきっかけに学習者用デジタル教材を導入。毎時間活用している。
その日の新出単語や熟語を、フラッシュカードを使って意味を確認しながらスペルを書く、本文を一部隠しながらスペルを書く、などライティングとリスニングの練習を毎時間行っている。これらの基本的な「学習方法」を授業中に示すことで、個別の学びの習慣化に結び付けたいと考えている。
「前期は毎時間、何度も本文を聞く、ネイティブの発音を聞きながらスペルを書くことを繰り返してきた。後期に入り、英語を読む・書く・理解する部分から生徒の苦手意識が減少していると感じている。生徒も、真面目に家庭学習に取り組んでいるようだ。授業で提示するものと自分で学ぶものが同じなので、家庭学習もしやすいのではないか」と語る。
このほか、まとめプリントは指導書添付のデータを編集して作成し、PDFにして生徒のiPadに配信。生徒は定期テスト前のふり返りに使っている。「Keynote」のアニメーションを追加するなど、様々な教材の工夫に挑戦している最中で、「生徒の実態やニーズに合わせてデジタル教材の様々な機能を活用し、今後も、英語を楽しく身近に感じる仕掛け作りを考えていきたい。1年生のうちに英語の基礎を固め、スピーキングやペアワークにつなげたい」と話す。
今年度から採用した教科書「Power On」については、「テーマが身近で読み物として面白い。自由度も高く、授業しやすくなった」と話した。
東海大学付属14校は初等中等教育機関でのICT活用を積極的に取り入れる方針で、本校でも生徒参加型の授業改善に向けて2019年度1年生から、生徒1人1台でiPadを活用している。
それに伴い、2018年度は教員用iPadと1クラス分のiPadを導入して準備を進めてきた。マグネットスクリーンと電子黒板機能付きプロジェクターや無線LANも同年内にほぼ全教室に配備。Apple TVでiPad画面を提示する活用から始めた。情報モラル教育については本校の情報科や生徒指導部で指導を行った。全教室に校内配信できる仕組みも構築。教室に学校長や教員の講話を配信するなどで活用している。
1人1台で活用するiPadは学習者用デジタル教材のアプリを予めセッティングして渡した。iPadは保護者負担で、入学時に新たな負担が増えることから、入学希望者数への影響を懸念していたが、悪い影響はまったくなかった。
本校から大学進学する際も4技能は重視される。昨年度からGTECも導入しており、12月の受検に向けて、iPadで自分の発音を録音して聞き比べるなど、4技能育成に役立つ活用を期待している。
教育家庭新聞 新春特別号 2020年1月1日号掲載