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教育ICT

デジタル・シチズンシップと著作権教育 <4>「フォーラムでライセンス制度など検討」

2020年1月5日
連載:35条改正&学校教育
社団法人コンピュータ 一般ソフトウェア著作権協会(ACCS) 専務理事・事務局長 久保田 裕

一般社団法人コンピュータ
ソフトウェア著作権協会(ACCS)
専務理事・事務局長
久保田 裕

前回、改正著作権法35条の新たな補償金制度について現在検討が進められているところだと書いた。

具体的には、一般社団法人授業目的公衆送信補償金等管理協会(サートラス)、ならびに「著作物の教育利用に関する関係者フォーラム」で検討が進められている。

サートラスとは、文化庁文化庁長官の指定を受けて、著作権者および実演家、レコード製作者、放送事業者及び有線放送事業者の著作隣接権者のために、補償金を徴収し分配することによって、教育分野の著作物等の利用の円滑化を図るとともに、あわせて著作権及び著作隣接権の保護に関する事業等を実施し、文化の普及発展に寄与することを目的とする団体で、2019年1月に設立された。

著作物の教育利用に関する関係者フォーラムでは、サートラス加盟の権利者団体の関係者、教育機関関係団体の関係者および有識者をメンバーとして、改正著作権法第35条に係るガイドラインや、改正法に基づく制度の構築や環境整備のため、今後必要となる普及啓発活動の具体的内容について検討を行っている。

私も山口大学特命教授の立場でフォーラムに参加している。

改正著作権法35条は2021年5月18日までに施行されることになっているため、特に補償金制度の体系や仕組みづくり、補償金の対象となるかどうかが判断できるガイドラインの整備は急ピッチで進められているところだ。

改正著作権法35条が施行されても、インターネットでの教材の送信が全て自由に行えるわけでなはなく、依然として著作権者等の許諾が必要となる行為がある。

具体的には、「授業に伴う送信」に当たらない教員の研修会や保護者会、オープンキャンパスでの送信、Webサイトでの一般公開は、改正著作権法35条の要件を満たさない。

また、授業に伴う送信であっても、授業を担当する教員自らが作成した教材ではなく、他の教員が作成しアップロードした教材を共同利用する場合も、改正著作権法35条による複製や送信としての条件を満たさないという問題が発生する。

ICTを活用して効果的に教育を行おうとすると、改正法でも当てはまらない場面が出てくるのだ。

このようなICTを活用した授業に付随する著作物の利用行為についても、利用する著作物ごとに著作権者等に許諾を得ることなく、利用者が許諾を簡易に得ることができるライセンス制度が構築できないかについても、著作物の教育利用に関する関係者フォーラムで検討を進めているところだ。

なお、授業に伴うインターネットでの教材送信については、補償金を支払わず、個別に著作権者等から許諾を得て利用する方法を選択することも可能だ。

各学校において他人の著作物をどのようにどれくらい利用しているのかによっては、こちらの方法を選択することもあるだろう。

前記フォーラムでは、権利者とそれを利用する教育関係者との間で意見が衝突する場面もあるものの、ICT教育に著作物が適切に活用され、知の創造文化の発展に貢献すべきであるという点は双方に見解の相違はないと確信している。

残された時間は少なくなってきているが、両者のコンセンサスなく補償金制度がスタートしてしまうことだけは絶対に避けなければならない。

フォーラムでの検討状況については、私はこれまでも愛媛大学や弘前大学などで報告してきたが、今後とも積極的に情報発信していく所存だ。

皆さんにもぜひ注視していて欲しい。

教育家庭新聞 新春特別号 2020年1月1日号掲載

デジタル・シチズンシップと著作権教育

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