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教育ICT

SINETで遠隔授業~京都府立鳥羽高等学校

2020年1月5日
SINETで遠隔実証実験

SINETで遠隔実証実験

昨年6月に公表された「柴山・学びの革新プラン 新時代の学びを支える先端技術活用推進方策(最終まとめ)」では、「先端技術の活用のための環境整備」推進施策の1つに、学術情報通信ネットワーク「SINET」の初等中等教育への開放が盛り込まれた。2019年度「学校ICT環境整備促進実証研究事業」(遠隔教育システム導入実証研究事業)には京都府も採択されており、12月13日、京都府立鳥羽高等学校と京都工芸繊維大学ショウジョウバエ遺伝資源研究部門の研究室を「SINET」を用いて接続。最先端の研究施設での実習を教室で体験する授業を公開した。

‘感動’が主体的な学びを支える

実験室の様子(左)とデジタルマイクロスコープの画面(右)を教室で共有

実験室の様子(左)とデジタルマイクロスコープの画面(右)を教室で共有

本授業に参加したのは、京都府立鳥羽高等学校普通科・グローバル科に所属する2年生のうち、理系で「生物」を選択している52名だ。

研究室には52名全員が入ることはできない。そこで10名が研究室で実験を行い、残り42名は高等学校の教室で、SINET経由による遠隔システムで実験を共有した。本授業の担当は西垣智之教諭(理科・情報担当)。

同校には生徒用タブレット端末(iPad)84台、教員用タブレット端末27台が配備されており、情報ハイウェイ経由でSINETに接続。さらに大学内のファイル共有システムに、SINET経由でタブレット端末からWiFiでアクセスできるようにしている。

電子黒板(右)に書き込みながら都丸氏(左)に質問した

電子黒板(右)に書き込みながら都丸氏(左)に質問した

教室には、遠隔授業のための電子黒板、ビデオ会議システム、無線AP、教室内を投影するカメラ、マイクスピーカー、講義用PCが設置されている。

この日の授業のテーマは「ショウジョウバエにおけるホメオティック突然変異等の観察」だ。まず、研究室の都丸雅敏氏がキイロショウジョウバエや系統センター、変異体について講義。講義資料は電子黒板に、都丸氏の講演はビデオ会議に投影して進めた。

キイロショウジョウバエは変異を意図的に起こしやすい。この変異体により遺伝子の仕組みを解明できるなど、最高のモデル生物と言われている。都丸氏は意図的に変異を起こした一例として、触覚の一部に脚の特徴が見られるキイロショウジョウバエについて説明。生徒はワークシートに講義内容をメモしている。

次に、研究室に行っている10名が実験室に移動。移動中はタブレット端末のキャリアLTE接続に切り替わるため、SINET経由の時と異なり、映像や音声が途切れがちだ。

大学のファイルサーバにSINET経由でアクセスし、複眼(上)や羽(下)を拡大して観察

大学のファイルサーバにSINET経由でアクセスし、複眼(上)や羽(下)を拡大して観察

生徒は白衣に着替え、実験室のデジタルマイクロスコープ(デジタル顕微鏡)を使って1人ひとりキイロショウジョウバエの雄雌の違いや変異の様子を観察し、画像を撮影・保存。ショウジョウバエは麻酔で動きが鈍くなっており、部分的に動く様子もわかる。その観察している様子や画像を、教室でも共有した。

観察が終わると、教室の生徒は、教室のWiFiからSINET経由で大学のファイル共有サーバにアクセスし、デジタルマイクロスコープで撮影した画像を各自のタブレット端末で観察した。手元のタブレットで拡大すると、鮮明な画像を観察できる。拡大すると、羽の細かいギザギザや色合い、体毛の太さの違い、変異した触覚の様子や雌雄の違いがよくわかる。複眼は鮮やかな赤で、拡大すると果物のようだ。

観察後は、質問したい写真を示して電子黒板上に書き込みながら都丸氏に質問した。キイロショウジョウバエの頭頂部にある突起について質問すると、都丸氏は「単眼」であると回答。複眼と単眼の役割の違いについてさらに質問すると、単眼は3つあり、明るさを感じるものであると写真画像に書き込みながら生徒に説明した。聞くだけ、見るだけではなく、書いた内容も共有できるため、理解が深まりやすいようだ。

■京都府教育委員会 瀧本徹総括指導主事

日頃、公開されていない研究室に入ることができ、デジタルマイクロスコープで観察することができるなど、SINET活用をきっかけに、生徒は未知の世界を体験することができた。
SINET経由でファイル共有システムにアクセスしたタブレット端末による観察では、鮮明で詳細な画像に強く興味を引かれる様子が見られた。

主体的な学びのためには「感動」を授業に取り入れることが必要だと考えている。今後も、本実証を通じて様々な感動の仕掛けを考えていきたい。


■京都工芸繊維大学 ショウジョウバエ遺伝資源研究部門∥1999年、日本唯一のショウジョウバエ遺伝資源研究施設として設立。世界最大規模のショウジョウバエ遺伝資源を保有。生命科学の基礎を国際的規模で担う。

教育家庭新聞 新春特別号 2020年1月1日号掲載

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