町田市教育委員会は2017年度から4か年計画で小中学校のICT環境整備を進めており、ChromebookとLTE回線を導入してクラウド型教育プラットフォーム「G Suite for Education」(以下、G Suite)を活用している。町田発未来型教育モデル校に指定されている町田第五小学校は2019年11月20日、全学年で授業を公開した。同校では個別最適化学習や対話的な学び、STEAM教育、プログラミング教育などに近隣校と協力して取り組んでいる。五十嵐俊子校長は、「Chromebookと G Suiteは、児童主体の学習に躍進する大きなきっかけになった。1年生も、4年生にChromebookの使い方を教えてもらい、全学年で新時代の学びに挑戦している」と話した。
4年生は国語「秋の風景」で、皆が今考えていることを同時に共有し、それに刺激されながら考えを深めていく対話的な学びに取り組んだ。
前時までに児童は、秋を感じる言葉を集めて俳句を作成し、短冊にまとめている。短冊の文章は撮影して、その感想を「Google スプレッドシート」に記述しており、他の児童の俳句を見合って評価し合った。
評価は次の4項目「秋を感じられた」「イメージがもてる」「気に入った」「オリジナリティがある」を4段階で選択。その結果がリアルタイムに円グラフ化される。さらに「五感を感じることができるか」も評価し、棒グラフ化。良いと思ったところやアドバイスについては、テキストで記入していた。キーボード入力に慣れている様子が分かる。
評価を記入された生徒はほぼ同時に、自分の俳句に対するグラフやアドバイスを確認できる。自分の評価がある程度蓄積してから、ふり返りを記入している。「『ごちそうだ』という表現はオリジナリティがあるといわれた、『たくさんあるよ』という表現は改善したほうが良いという感想が多かったので『もりだくさん』という表現に変えたい」「五感が『目』に偏ってしまったので、冬の俳句づくりでは『耳』や『手』の感覚も表現したい」など、次の学びにつながるふり返りを記入。沈黙の中で深く考えている様子が見られた。
■Google スプレッドシート∥表計算ソフト。リアルタイムで複数人による同時編集が可能。誰がシートのどの部分を編集しているのかを表示する機能がある。変更履歴も自動保存される。
1年生は生活・国語の教科横断で、ChromebookやiPadminiを活用。
校外で様々な「秋の景色」を見つけ、iPadminiで撮影した児童は、各自でChromebookを使って作成した「あきクイズ」「はなクイズ」「かしの木山クイズ」「木の実いっぱいクイズ」などをグループ内で発表し合った。
出題したら、ヒントも示す。ヒントにはそれぞれの児童の観察眼や感性が反映されている。「ススキに似ています」「さわやかさを感じます」「スイカのような実をつけます」「6~9月にかけて2㌢㍍くらいの青い花をつけます」「べんは3まいです」「とりは食べますが人は食べません」「帽子をかぶっていることが多いです」など様々だ。
正解は、撮影した写真で示す。写真を先に提示して「これは何でしょう」と三択クイズにしている児童もいた。
ふり返りでは、友達の発表の「よかったポイント」などを付箋に記入。児童は「ヒントがわかりやすくてよかった」「難しいクイズだったけど、たのしかった」などと書き込んでおり、お互いのクイズを楽しんでいる様子が見られた。
5年生「算数」は正多角形のプログラミング。「繰り返しのブロック」を使って正多角形を描けること、360÷頂点の数で「回す角度」がわかることを発見して、様々な正多角形の描画に挑戦。複数の正多角形を同時に描画することに成功した児童のプログラミングを皆で共有した。
分科会では同校の教員がクラウド学習について報告した。
「G Suite は、協働編集できる点が一番の特徴。どんどん内容が更新され、お互いの考えを見ながら刺激を受けて、多様性への理解や尊敬の念など、他者意識が生まれる様子が見られる。協働作業は、対話的で深い学びを実現しやすい」、「過去のやりとりをふり返りやすいので、メタ認知能力の育成につながる」、「そのまま真似をする子はおらず、常に自分の考えが見られることを意識しながらまとめ、新しい言葉を生み出していく様子が見られる。当初、一行書くのに時間がかかっていた児童も、1か月続けることで、自分の考えを書くことができるようになった」などと報告。Chromebookについては「起動が速く、20秒程度で目的のことが始められる」と話した。
教育家庭新聞 新春特別号 2020年1月1日号掲載